〈えっ、こんなことで? 更年期からの骨折Vol.2〉「ちょっとしたことで骨折」を防ぐ方法と、骨折したときの治療法【小田ユイコのいつもどこかが調子悪い#4】

腰椎、肋骨、足や手などに起こりやすい、更年期からの「ちょっとしたことで骨折」。腰椎や肋骨など、外科的治療が難しい部分が多く、コルセットなどで耐え忍ぶケースが多いよう。どうすれば「ちょっとしたことで骨折」を予防できるのか。また骨折してしまった場合、コルセットしか治療法はないのか。産婦人科医で、骨粗しょう症の予防と治療に熱心に取り組む善方裕美先生にお話をうかがいました。
善方裕美先生

善方裕美先生

よしかた産婦人科院長。横浜市立大学産婦人科客員准教授。医学博士。日本産婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、マンモグラフィ読影認定医。約30年にわたって多くの悩める更年期女性と向き合い、更年期障害についてカウンセリング、HRT(ホルモン補充療法)、漢方薬、食事、運動、代替医療など多方面のアプローチで治療をおこなう。著書に『女医が教える閉経の教科書』(秀和システム)、『だって更年期なんだも~ん治療編』(主婦の友社)ほか。
小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』『BAILA』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。

日差しを積極的に浴びながらウォーキングを

Vol.1で知った「ちょっとしたことで骨折」の予防の重要性。「1回目の骨折」を防ぐためには、何に気をつけたらいいのでしょうか。


「Vol.1でもお話した通り、ビタミンD不足は『ちょっとしたことで骨折』のひとつの大きなトリガー。ビタミンDはその多くが日光に当たることで体内で合成されるので、太陽を浴びながらのウォーキング、『おひさまウォーキング』がおすすめです」。


日光(UVB)を浴びることで皮膚で合成されるビタミンD。シミなどが気になる顔は日焼け止めを塗るとしても、手の甲や腕などを露出し、30分ほど『おひさまウォーキング』しましょう。

ビタミンDのサプリメントを利用するのも手

「でも、読者の皆さんは美意識が高いので、日々の日焼け止め対策に余念がないはず。日差しを積極的に浴びることに抵抗がある場合は、ビタミンDのサプリメントを利用するのもおすすめです。


ビタミンDが含まれる食材、サケ、マグロ、サバなどの魚や卵黄、キノコ類などをぜひ食事に取り入れてほしいですが、それだけでは1日に必要なビタミンD量15~20μgには足りません。『おひさまウォーキング』やサプリメントの利用が必要になります」。


ビタミンD以外にも、骨の材料となるカルシウムは1日約700mgが必要量の目安。牛乳、小魚、豆腐などの大豆製品を適宜摂るようにしましょう。また、ビタミンKも骨をつくるのに重要な栄養素で、1日約250~300μgが必要量の目安。納豆や緑黄色野菜に含まれています。


ブロッコリー、ニンジン、カボチャ、小松菜、トマト、ピーマンなどの緑黄色野菜を朝、昼、晩、片手で1杯ずつくらいの量を摂ることをおすすめします」。

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1日1粒で25μgのビタミンDを摂取できる。ネイチャーメイド スーパービタミンD 90粒入り ¥1,050/大塚製薬
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1日1粒でビタミンD3 20μg、葉酸400μg、カルシウム200mgを摂取できる。ビタミンD3 葉酸&Ca 30粒 ¥1,620/森下仁丹

骨のリモデリングに欠かせない荷重運動。骨細胞に「骨をつくれ」の指令を出させる!

「『ちょっとしたことで骨折』を防ぐために、もうひとつ重要なのが運動。骨に適度な負荷がかかることで、骨の細胞の90%を占める「骨細胞」がコントロール物質を分泌。骨のリモデリングが始まります」。


ずっとデスクワークで同じ姿勢、ソファでゴロゴロしながらドラマを見続け、日々の買い物もネットショッピングという生活では、骨はスカスカになっていくばかりということ?


「そうなんです。カラダを動かさなければ、骨は弱くなります。面白いことに、骨の細胞は周囲の筋肉にも手(樹状突起)を伸ばし、筋肉に負荷がかかっているかどうかチェックしているんです。


おすすめの運動は、上で紹介した『おひさまウォーキング』のほか、スクワットやかかと落とし、ジャンプ、なわとびなど。いずれも負荷が骨にかかりやすい運動です」。


かかと落としとは、椅子の背もたれなどにつかまった状態でつま先立ちになり、かかとをストンと落とす運動。気づいたときに1回10~20回行い、1日3~5セット行いましょう。

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背骨に適度な負荷がかかるスクワットは、骨密度アップに効果的な運動。下半身の筋肉が鍛えられることで分泌されるホルモンの一部も骨の形成をバックアップ。

骨粗しょう症の疑いがあれば、投薬による治療も

骨密度検査で骨粗しょう症の疑いと診断されたら、医師の指導のもと投薬による治療も。


「更年期世代以降、骨がスカスカになるいちばんの原因は、女性ホルモン・エストロゲンの減少です。ホルモン補充療法もひとつの選択肢ですが、閉経後なら最近ではSERM(サーム:選択的エストロゲン受容体モジュレーター)と呼ばれるエストロゲン様作用治療薬が注目されています。骨の代謝にはエストロゲン様作用をする一方、乳房や子宮のエストロゲン受容体には反対の作用をするため、胸の張り、不正出血などが起こらず、乳がん、子宮がんのリスクを減らしてくれます」。


SERMの具体的な薬の名前はバゼドキシフェン、ラロキシフェンなど。破骨細胞の暴走を抑制し、骨吸収をおさえる働きをします。

また、活性型ビタミンD製剤は単なるサプリメントではなく、腸管からのカルシウム吸収をアップする骨粗しょう症治療薬として処方されます。中でも、エルデカルシトールは本来の効果に加えて、筋力のバランスをよくする、骨のリモデリングを改善する効用もあります。更年期の骨活にはSERMプラス活性型ビタミンDの服用がベストチョイスでしょう。


「更年期世代よりもう少し年齢が上がっていったら、一般的な骨粗しょう症治療薬、デノスマブやビスフォスフォネートなどを処方します。


『ちょっとしたことで骨折』をしてしまった場合は、整形外科での治療になりますが、骨粗しょう症が原因だった場合、テリパラチドなど骨粗しょう症治療剤の投薬も。テリパラチドは副甲状腺ホルモン製剤で、骨芽細胞に働きかけ、骨形成を促します」。

50代以降のQOLを左右する骨。「ちょっとしたことで骨折」を寄せつけない骨活を!

女性ホルモンと密接な関係にある骨密度。更年期以降は、意識して骨密度を保つ心がけがマストなんですね。

「はい。骨折を避けるためはもちろん、脳や筋肉増強を支える、全身の『オステオネットワーク』を守るためでもあります。

人生100年時代、更年期は中間地点。自分のカラダと心を知り、慈しみ、いたわり、次のステージに進むための大切な期間です。これまで骨折がなかったラッキーな方も、ぜひこれを読んでいただいたのを機会に、骨密度検査をしたり、食事への気配りや運動の実践などの『骨活』を。骨に意識を向け大切にすることが、自分を慈しみ、いたわってあげることにつながりますよ」。

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