糖質は心の問題にも関係あり!?「機能性低血糖症」とは【アラウンド50からの血糖コントロール】

誰もがやってしまいがちな、イライラしたときや気分が沈みがちなときには何かを食べる!というクセ。これが糖質ばかりでその量が過剰になると、危険なスパイラルに陥る場合があるので要注意!
教えてくださったかた
ひめのともみ クリニック院長 姫野友美先生

ひめのともみ クリニック院長 姫野友美先生

心療内科医、医学博士。東京医科歯科大学医学部卒業。病院勤務を経て、’05年に自身のクリニックを開設。院長として診療を行うかたわら、テレビ東京『主治医が見つかる診療所』などのテレビ番組や雑誌でもコメンテーターとして活躍中。

血糖値の急上昇からの急降下がメンタルにも影響

パニック障害や抑うつを訴えて来院する人を診察してみると、血糖の問題を抱えている人が案外多いと話すのは、心療内科医の姫野友美先生。心の問題と血糖は無縁な気もするが、いったいどんな関係性が?

「糖尿病を患っていない人でも、糖質過多の食事をとったあとには血糖値が大きく跳ね上がることがあります。これを『食後高血糖』といい、体の老化を加速させる作用があるのでアンチエイジングの大敵でもあります。そうして血糖値が上がると膵臓がインスリンを分泌して血糖値を下げようとしますが、インスリンがあまりにも過剰に分泌されると、血糖値が急激に下がって、低血糖状態になってしまいます。これを『機能性低血糖症』と呼んでいて、低血糖状態になると脳が緊急事態に陥り、血糖値を上げるためのホルモンを分泌させます。これが心に悪影響を及ぼすのです」

血糖値を上げるためのホルモンがなぜ悪影響を?

「そこで分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンは、交感神経を緊張させます。これは外的ストレスを受けたときに体を興奮状態にするホルモンでもあるので、怒りやイライラ、不安といった精神状態になりやすいんですね。その状態から抜け出そうと甘いものなどの糖質に手をのばすことを繰り返しているうち、血糖値が上がってインスリン過剰分泌でまた血糖値が下がりすぎて……、というスパイラルに陥ってしまうことにもなるのです」

糖尿病の発症前であれば、食事の内容改善で回復可能

食べてストレス解消というのは、かなり危険な行為だったのか……。

「昨年春、ステイホームが叫ばれたときに心配していたんですが、やはり秋口になってうつ傾向やパニック障害を訴える人が増えました。家にいて、つい食べすぎてしまうのに運動不足。そして、外出できないから、ストレスもたまる。そういうときに手っ取り早く食べられるテイクアウトの料理やお菓子類には、糖質が多いことも影響しています。糖質をとると一瞬、幸せホルモンが出るのもクセになる理由です」

では、過剰なインスリン分泌を防ぐにはどうしたら?

「やはり食生活の見直しですね。血糖値をゆるやかに上げることで、インスリンの分泌もゆるやかになります。クリニックでは、糖質を抑え、タンパク質や脂質、そして野菜を多くとる指導をしています。血糖値の上がりにくい食べ順、長時間の空腹を避けることも大切ですね。糖の代謝にかかわるビタミンB群やビタミンD、不足しがちな鉄や亜鉛などをサプリで補うのもよいでしょう。食後すぐの運動も効果的なので、“箸を置いたらすぐ歩く”を実践してください」

それを心がければ、体は正常に?

「はい、重要なのは高血糖の原因が生活習慣にあり、糖尿病にいたっていない段階ならば健康体に戻れるということ。『食後高血糖』を甘く見ず、『機能性低血糖症』にならないように心がけてくださいね」

食後高血糖からの急降下で低血糖症に!

食後高血糖からの急降下で低血糖症に!

糖質過多の食事によって急激に血糖値が上がり、追いかけるようにインスリンが過剰分泌されて血糖値が大きく降下するのが問題。インスリンの効き自体が悪いわけではないので、食事の改善によって正常な状態に戻ることは可能だ。

疲れたから甘いもので糖分補給……、の危険なワナ!

疲れたから甘いもので糖分補給……、の危険なワナ

糖質を口にしたときに一瞬分泌されるセロトニンの効果を求めて、繰り返し食べるクセがつくと、いずれ高血糖に。「肉体労働中でもなければ、体(脳)はしょっちゅう糖質補給するほどのエネルギー不足には陥っていません。間食では糖質を避けたほうがよく、卵や豆乳、小魚など、セロトニンの材料のアミノ酸になる食材を積極的にとりましょう」。

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