【対談】精神科医 名越康文さん×モデル 浜島直子さん《後編》イライラするのは悪ですか?

最近イライラしやすくなった、と感じるアラフィー女性が続出。モデルの浜島直子さんもそんなお悩みを持つ一人。精神科医の名越康文さんと、コロナ禍の出来事も交えてネガティブな感情の対処法について対談!
モデル 浜島直子さん

モデル 浜島直子さん

はまじま なおこ●’76年、北海道生まれ。“はまじ”の愛称で親しまれる人気モデル。テレビ出演やラジオパーソナリティなど多方面で活躍。夫アベカズヒロ氏とのユニット「阿部はまじ」として絵本『ねぶしろ』など。近著は初の随筆集『蝶の粉』(ミルブックス)。
精神科医 名越康文さん

精神科医 名越康文さん

なこし やすふみ●’60年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など多方面に活躍。著書に『自分を支える心の技法』(小学館新書)など多数。

今必要じゃないことをあきらめる、手放すは正解

浜島 そもそも、怒る、イライラするって、悪なんですか?

名越 怒りはいい悪いではなく、人間なら普通にあるもの。でも本当は怒らないほうがいいんです。怒ってあたりまえでしょう、というのはちょっと自虐的かもしれない。お互い許し合おう、という気持ちのほうが楽にはなれる気がします。怒りは権力闘争で、結果的に自分も疲れてしまうから。

浜島 そういえばステイホームのあと、スーパーで子供が走ったら、どんな教育しとんねん!とものすごい勢いで怒るおじさんがいて。

名越 コロナ禍で自分に制限をかけた人ほど、正しくなければ、という“べき”化が強まって、感情が鬱滞することもある。

浜島 更年期とコロナ禍が重なって不安やストレスが増えた女性も。

名越 でも、実際に人に怒りをぶつける人は少なくて、自分の中でイライラと戦っているいい人のほうがずっと多い気がしますね。

浜島 私はちょっとイライラしているときは、あきらめようと思うんです。ネガティブな感じだとまた疲れてしまうから、距離を保って見なかったふりをするような。それは間違えてないですか?

名越 冷静に考えると、今すぐ必要なことじゃないからあきらめよう、はいい。本当は手をつけたいのに抑圧するとストレスに。今の浜島さんは、ライフスタイルの転換期じゃないかな。これからの人生の目的がまだ絞れてないか、今ひとつ勇気が出ないか、踊り場の時期のような気がします。

浜島直子さん×名越康文さん

「コロナ禍で自分に制限をかけた人ほど、“べき”化が強まって感情が鬱滞(うったい)することも」
─名越先生

「友だちと会ったり、大きな声を出したりといった“発散”する場所がないんですよね」
─浜島さん

浜島 実は、執筆中のエッセーが、なかなか進まなくて。そんな状況で、本を出しませんか?という新たなオファーをいただいたのですが、私には書けないよ……と。

名越 それがじわじわストレスになっている可能性も。進みたいけど一歩が出ない、モジモジ状態。

浜島 エクラ世代も踊り場期かも。何をしていいかわからない、やりたいことがあるのに一歩が踏み出せないという人は多そう。その迷いがイライラの裏側に……。

名越 あるでしょうね。人生100年時代になって、50歳でも今まで考えたことのない「自己実現」という課題が出てきて、変な焦りに。

浜島 では、最初の一歩を踏み出したいとき、どうやって背中を押したらいいのでしょうか。

名越 いい年なんだから、という言葉を忘れる。ネガティブなことをいう人から離れる。やる気という柔らかい若葉を大切に温室に入れて守ること。

浜島 SNSで不要なイライラを抱えてしまう人もいるようです。

名越 デメリットもメリットもマックスにありますから。いやな気分になるなら遠ざかる勇気をもつ。

浜島 マウントをとったりとられたりも、主導権争いの一種かも。

名越 戦いから降りたほうが賢い。建設的でなければ向き合わないことも大事ですね。

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