’25年6月から’26年5月までの一年間に刊行された文芸作品から、エクラ読者に読んでほしいと本音でおすすめできる本を選んだ「第9回文芸エクラ大賞」。今回は「斎藤美奈子賞」「恋愛小説賞」「ミステリー小説賞」の受賞作品を紹介。
《斎藤美奈子賞》デビュー作にして注目作!
『ギアをあげて、風を鳴らして』
悩める親たちもリアルな、少女ふたりの物語
平石さなぎ 集英社 ¥1,870
小4の癒知は宗教団体の「降り子」。幼いころから決められた暮らしをしていたが、転校生のクミと出会い変わっていく。「新興宗教の核心にストレートに迫り、真実味が感じられた。タイトルの意味がわかるラストもすがすがしい」(斎藤)。
《恋愛小説賞》大人の恋を見直す
『タイム・アフター・タイム』
東京と長崎を舞台にふたりに流れた時間を描く
吉田修一 幻冬舎 ¥2,420
「痛みを伴う過去があったから今がある。人生への肯定感に拍手!」(山本)。建設会社勤務の尾崎と高校の同級生・久遠は偶然同じプロジェクトを手がけることになるが……。初恋同士だったふたりがかつて起こしたできごとと今を重ねた長編小説。
《ミステリー小説賞》なぜ?が止まらない
『百年の時効』
スリルも読後の感動も圧倒的な警察小説
伏尾美紀 幻冬舎 ¥2,310
佃島で起きた殺人事件が未解決のまま50年。令和になって容疑者が変死体で発見され、先輩たちが長年記録した資料を託された女性刑事が動き出す。「伏線が効果的で最後まで緊張感がとぎれない。刑事側だけでなく犯人側の心情の深掘りも見事」(細貝)。
文芸エクラ大賞とは?
私たちは人生のさまざまなことを本から学び、本を身近な存在に感じてきた世代。エクラでは、そんな読者の皆さんに心からおすすめしたい一冊を届け、改めて読書の喜びと、本がもつ力を感じていただきたいという思いから、’18年に「文芸エクラ大賞」を創設。
選考対象は、’25年6月から’26年5月までの一年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者の心に切実に響き、「今こそ読んでほしい」と本音でおすすめできる本。エクラ書評班が厳選した、絶対に読んでほしい「大賞」をはじめ、ほかにも注目作や、書店の目利きによるイチ押しの本もご紹介。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!
▼4人の選者
文芸評論家 斎藤美奈子
エクラ本誌で「オトナの文藝部」を連載中。本や新聞、雑誌などで活躍。文学や社会への鋭い批評が支持されている。
書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。
書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。
書評担当編集 K野
女性誌で書評&作家インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。
撮影/大木慎太郎 スタイリスト/洲脇佑美 取材・原文/山本圭子 ※エクラ2026年9月号掲載