20世紀初頭、現代の航空機の基礎を作った飛行家アルベルト・サントス=デュモン。その名を冠した「サントス」ウォッチは、ルイ・カルティエが彼のために創作した、先駆者どうしの友情の証しだった。オリジナルモデルのコンセプトを受け継ぐ「サントス デュモン」ウォッチの、新作を紐解く。
カルティエのサントス デュモン
「サントス デュモン」ウォッチが誕生したのは2019年。20世紀初頭のパリを舞台に活躍した飛行家アルベルト・サントス=デュモンにちなんで名づけられた、「サントス」ウォッチをルーツにもつ。
それは1904年にルイ・カルティエが、彼のために創った世界初の腕時計。おしゃれで知られたサントス=デュモンは、大きな襟の白いシャツとスーツに帽子という洗練されたスタイルの、社交界の名士だった。その胸ポケットには、紳士の証しでもある懐中時計が。しかしある夜ディナーをともにした友人ルイ・カルティエに、彼は「飛行中、時間を確かめるたびに懐中時計をポケットから取り出すのでは、操縦もおぼつかない」と打ち明けた。それを聞いたルイ・カルティエは、腕につけることを前提としたモダンウォッチを開発し、彼に贈った。
そのモデルは、懐中時計とジュエリーウォッチが中心だった時計製造の世界に革命を起こし、1911年の腕時計「サントス ドゥ カルティエ」発売につながった。サントス=デュモンが受け取った伝説的な腕時計へのオマージュとして生まれたのが、「サントス デュモン」ウォッチだ。オリジナルの特徴である、タイムレスなフォルムを忠実に踏襲。それをベースに、どこかに新しい挑戦を加えるのが特徴だ。まるで彼自身の生き方に倣ったかのように。
’26年の新作にも、それが見られる。しなやかなブレスレットは、ディテールにこだわった彼流のエレガンスを、最先端の技術で実現したもの。ともに時代に先駆けた、サントス=デュモンとルイ・カルティエ。ふたりのパイオニアが抱いた革新の夢が、時を超えてこの時計に生きている。
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愛機のひとつ、複葉機「14 Bis」に乗るサントス=デュモン。22の飛行マシンを発明・製造しながら特許をとらず、アイデアを無償で公開していた彼は、まさにオープンソースの先駆け。現代に通じるセンスをもった、モダンな男性の象徴だった
希代のダンディ、A.サントス=デュモンの洒脱さとパイオニア精神を凝縮して
新作のブレスレット部分は、1920年代にカルティエがスペシャルオーダーで開発した、初期のメタルブレスレットにインスピレーションを得て、繊細な肌ざわりに仕上げられた。マニュファクチュールで機械加工と成形を施した合計394本のリンクを組み合わせて、心地よい装着感を実現。手巻きメカニカルムーブメントのキャリバー430 MCを搭載している。
「サントス デュモン」ウォッチ(43.5×31.4mm/YG、サテン仕上げシルバーサンレイ ダイアル、リュウズにサファイア カボション、手巻き、インターチェンジャブル メタルブレスレット)¥8,184,000/カルティエ カスタマー サービスセンター(カルティエ)
photography:Masanori Akao(whiteSTOUT) styling:Yukari Komaki text:Hiroko Naruse ※略号は次のとおり。YG=イエローゴールド。 ※エクラ2026年11月号掲載