【感性を磨く、金沢旅】豊かで、心地いいインプットができる土地

「大人の旅に必要なもの、それは風情、人情、そしておいしいもの。金沢にはそれがすべてつまっています」とは金沢屈指の老舗バー『倫敦屋酒場(ロンドンヤバー)』の主人の言葉。観光旅行とはひと味違う、心と感性を刺激する、成熟した大人だから楽しめるとっておきの金沢へ、今。

魯山人の足跡をたどる

すべては自然が教えてくれる。生きた美が息づく奥深い土地
何歳(いくつ)になっても感性は磨けるだろうか――そんな問いの糸口になりそうなのが三十代後半に陶芸を始めた北大路魯山人の生き方だ。美しい暮らしの細部まで苦心した魯山人の心は、ステイホームが長く続き日常を見つめ直すきっかけになった今また、私たちに響く。

魯山人が魯山人になる前。まだ福田大観と名乗り刻字看板屋だったころ、加賀の地に一年足らず滞在し、感性を磨き、才能を開花させた。その才を見出したのは、金沢最後の文人と呼ばれる細野燕台(えんたい)だ。

「燕台さんは10代の若者だった私にも、お香とお抹茶でもてなしてくれる、そんな風雅なかたでした」と語るのは現代陶芸を展開してきた中村錦平さん。金沢市尾張町に居を構えていた燕台は、魯山人に金沢の伝統文化を伝え、旦那衆や陶芸家と引き合わせる。

錦平さんの父・中村梅山の「梅山窯」でも魯山人は制作したという。「彼は窯道具の筒型鉢を逆さにし、その外底に粘土板を押し当て肌と形を移しとる。四方鉢へ纏(まと)めてゆく。プロたちが見つけられなかった同時代的表情。父が大樋焼飴釉(おおひやきあめゆう)で焼き上げた」と錦平さん。

“使うアート”のおもしろさや可能性を教えてくれたのも魯山人の作品だったという。私たちも魯山人の足跡をたどることで、日常に生きる美をアップデートしてみたい。

『あらや滔々庵』の特別室「御陣の間」は、 魯山人が好んで逗留した部屋を移築したも の。漆が施された柱と朱壁は、鉛色の空の 日が多い土地ならではの心を美しく整える 配慮か――想像力をかき立てられる

『あらや滔々庵(とうとうあん)』の特別室「御陣(おちん)の間」は、魯山人が好んで逗留した部屋を移築したもの。漆が施された柱と朱壁は、鉛色の空の日が多い土地ならではの心を美しく整える 配慮か――想像力をかき立てられる

魯山人作『染付福字平向付』にノドグロの焼き物とカラスミをのせて。この“福”の文字はバカラ社グラスデザインなどにも取り入れられる人気の意匠。『あらや滔々庵』の特別コースで出されるひと皿から

魯山人作『染付福字平向付』にノドグロの焼き物とカラスミをのせて。この“福の文字はバカラ社グラスデザインなどにも取り入れられる人気の意匠。『あらや滔々庵』の特別コースで出されるひと皿から

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