50代に多い「めまい」のタイプは?専門医が教える「めまい」が起きたらすべきこと

目が回ってベッドから起きられない、足もとのふらつきで立っていられない……何が起きているの!? と心配になるめまい。延べ20万人以上のめまい患者をみてきた名医が、その原因と対策を解説。めまいを治すリハビリも必見!
教えてくれたのは
新井基洋さん

新井基洋さん

’64年生まれ。横浜市立みなと赤十字病院平衡神経科部長。めまいを治すリハビリに詳しく、’20年から3期連続で「Best Doctors」に選出される。めまい関連の著書多数。

あなたが感じたのはどのめまい?

ぐるぐると自分や周囲が回るようなめまい

自分自身が回っているように感じたり、周囲の景色が自分のまわりを回っているようだったり……。実際には動いていないのに動いていると錯覚する感覚の異常。こうした回転性のめまいは耳が原因の急性的なめまいが多いが、メニエール病や片頭痛関連のことも。

ぐるぐると自分や周囲が回るようなめまい

ゆらゆらとよろめくようなめまい

体が左右に振れたり前後に揺れたりして、まっすぐに歩くことがむずかしく、人や物などにぶつかることも。さらに加齢による筋力不足が加わると、ふらつきが大きくなる。慢性的なめまいに多く、特に夕方以降に症状が現れやすい。内耳の不調のほか、まれに脳に異常がある場合も。

ゆらゆらとよろめくようなめまい

ふわふわと浮いているようなめまい

実際には浮いていないが、浮いているようなめまい。足もとがおぼつかず体がふわふわと浮くような感覚に陥る。急なめまいを発症したあとに、3カ月以上にわたってふわふわ感が持続する、慢性化しためまいに多い症状。

ふわふわと浮いているようなめまい

50代に多いのはどんな「めまい?」

アラフィーは耳に原因が!その背景はストレス過多

何の前触れもなくやってくるめまい。脳に何か異常が?と不安になるけれど、「脳が原因なのは全体の数パーセント。8割が耳です」と新井さん。

「めまいは体の平衡感覚に異常を来した状態のこと。私たちがまっすぐ立ったり歩いたりできるのは、体の平衡感覚を保つ器官の働きです。脳の中の小脳、脳幹、耳にある内耳がそうした役割を担っていて、この中のどこかに異常が起きるとめまいが現れます。なかでもアラフィーに多いめまいは、内耳に原因があるタイプです。めまいは女性に多い病気で、男性の2.5倍もの有訴率。特に50代に多く、背景としてこの世代の女性が“背負うもの”が多すぎることが考えられます。仕事や家庭での役割から、子供の巣立ちや親の介護といった生活の変化まで、ストレスが重なりやすい。ストレスはめまいを重くするリスクファクターなのです」

重くなるとうつにも発展。正しく知って適切なケアを

でもなにかと忙しいエクラ世代、めまいがあってもごまかしつつやりすごしている人も多いよう。

「めまい自体は命にかかわることは少ないですが、軽視は禁物です。慢性化すると不安から外出に恐怖を覚えるようになったり、悲観的な気持ちが続くうちに不眠やうつになるかたも。それが将来的に寝たきりにつながってしまう可能性もあるのです。めまいはまずその原因を知ることが大事。症状が出たらひとまずかかりつけの内科を受診し、心配であれば脳のCTやMRIを撮ってもらっても。そこで脳に異常がないとわかればおそらく耳が原因なので耳鼻科へ、となります。めまいはメジャーなもの以外にも種類があり、要因が複雑な場合も多い。症状がひどかったり慢性化しているようであれば、めまい専門の外来も選択肢のひとつです。めまいに伴う不安やうつなどの精神的な症状の治療も受けられます。これだけ科学や医療が発達しても、めまいが起きるのを予測するのはむずかしい。でも、だからといって生活が制限されてしまうのはもったいない。適切な治療を受けることと並行して、自分でのケアもぜひ実践してほしいと思います」

めまいが起きたときの状況別・対処方法

めまいが起きたら……

*寝ているときに起きたら>>頭を高くしてしばらく休む

*寝ているときに起きたら>>頭を高くしてしばらく休む

寝返りを打ったり起き上がろうとして頭を動かすと、めまいが起きやすい。その際は、クッションを重ねるなどして上半身に傾斜をつけ、頭を高くして休む。「頭を高くしないで横になっていると、かえってひどくなる場合も。数分程度で治まるので、それまでは無理に起き上がろうとしないでください」。

*ムカムカや吐き気があったら>>顔を横に向けて吐き気が治まるのを待つ

*ムカムカや吐き気があったら>>顔を横に向けて吐き気が治まるのを待つ

嘔吐した際に吐しゃ物が気管に入らないように、めまいが治まるまで横向きに寝て安静に。「耳に原因があるめまいなら、多くの場合は一方の耳を下にして寝るとめまいと吐き気が楽になることが多いです。それでよくなればOKですが、人によっては反対側を下にしたほうがよくなることも。両方試してみて、改善しなければ受診を」。

*立っているときに起きたら>>転倒を防ぐためその場で座る

*立っているときに起きたら>>転倒を防ぐためその場で座る

めまいそのもので失神することはほとんどないが、転倒した際に床や家具で頭を打って失神、というケースはある。「歩けないようならまずはその場で座ります。移動できて、横になれる場所がある場合は、上記を参照に横になって休んでも」。

*電車などで座っているときに起きたら>>頭を壁につけて目をつむる

*電車などで座っているときに起きたら>>頭を壁につけて目をつむる

電車内で立っている場合はまず座り、席を確保できたら目をつむって頭を壁に預けて休んで。「姿勢は上半身に傾斜をつけるのがポイント(上記参照)。目を閉じることで視覚情報が遮断され、外部からの刺激が減ることでめまいが治まりやすいです」。

50代に多い3タイプのめまいの“原因”と“対策”

アラフィーが特に注意したい3つのタイプのめまいを徹底解説。自分のタイプに合わせた対策&ケアで、めまいに怯えない毎日に!

一時的なめまいが多く治りやすい《良性発作性頭位めまい症》

こんな症状

□頭を動かすときにぐるぐる・ふわふわのめまいが起きやすい
□めまいは数十秒~数分で治まることが多い
□吐き気や嘔吐を伴うことがある

悪化や慢性化のおそれも!耳石を戻す動きで治る

めまいの中で最も多いのがこの病気。頭の位置を動かすことがきっかけで起こる場合が多い。

「寝返りを打つ、寝た状態から起き上がる、布団干しや目薬をさすなど、頭を動かした際に起きためまいならほぼ間違いなくこれ。めまいの発作は数十秒から長くて数分で治まり、吐き気や嘔吐が出る場合もあり、時に慢性化することがあります。耳鳴りや難聴は伴わず、『良性』とつくとおり、命にかかわることはありません」

めまいが起きる原因は、内耳にある「耳石」がはがれ落ち、三半規管に入り込んでしまうこと。

「内耳にある耳石器には、ごく小さな粒状の耳石が付着しています(下図参照)。若いころは耳石の表面は比較的なめらかですが、40代以降は加齢に伴ってだんだんとひびが入り、50歳以降ははがれ落ちやすくなります。頭を動かすことではがれた耳石が三半規管に多数入り込み、めまいを感じるのです。耳石がはがれる原因は加齢のほかに、手術後や病気などで長く寝たきり状態が続く、毎日同じ向きで寝ているなども。ヘディングを多用するサッカー選手にも見られることがあります。三半規管に耳石が入ることが原因なので、耳石をもとの場所に戻せば症状は改善します」

【内耳の「耳石」が動いてめまいが起きる】

【内耳の「耳石」が動いてめまいが起きる】

内耳の中にある耳石器の内側には耳石膜という膜があり、そこに1〜5ミクロンほどの耳石が1万粒以上付着している。耳石は体の傾きによる加速度を感じて平衡を保つ働きをしている。三半規管に入り込む耳石が数粒単位であればめまいは起きないが、100粒以上の塊になると誤った信号が脳に送られて、めまいが現れる。

【耳石の位置をもとに戻す「イプリ法」】

❶右を下にして寝るとめまいを感じるときは、脚を伸ばして下を向いて座り

右を下にして寝るとめまいを感じるときは、脚を伸ばして下を向いて座り

❷クッションや枕を首の下にして入れ、あごを上向きにした状態で右45度に顔を向け30秒数える。

クッションや枕を首の下にして入れ、あごを上向きにした状態で右45度に顔を向け30秒数える。

❸次に左45度に顔を向け30秒数える。

次に左45度に顔を向け30秒数える。

❹そのまま左に寝返りを打って顔を真下に向け、起き上がって❶の姿勢に戻って座る。
「効果を感じなければ、反対側から同じことをやってみます。両方やってみて改善しない場合は、医師の診察を受けるのがおすすめです」。

日常で気をつけること・セルフケアは?

治らなかったり再発した場合はそのまま放置せず受診を
「一度はがれた耳石は再び付着し直すことはなく、そのための日常のケアは特にありませんが、ストレスをためないことは大事。また、イプリ法は1回で8割、4回やると9割のかたがよくなりますが、一度治っても再発するかたは5人に1人程度います。その場合は放置しないで診察を受けましょう」

回転性の激しいめまいに耳鳴り・難聴も《メニエール病》

こんな症状

□回転性の激しいめまいとともに難聴や耳鳴りが起きる
□発作は20分~数時間続き、繰り返す
□悪化すると聴力や平衡機能の低下も

QOLを下げる激しい症状は生活改善と投薬で治す

QOLを下げる激しい症状は生活改善と投薬で治す
めまいの代名詞にもなっていたメニエール病だが、実際はめまい患者の5〜10%ほどと少数派。

「回転性のめまいとともに耳鳴りや難聴が起き、激しいときには吐き気や嘔吐、冷や汗など日常生活に支障を来すような激しい症状も伴います。発作は20分以上から数時間と個人差があり、それが繰り返されるのが厄介なところ。繰り返すたびに聴力や平衡感覚も低下していきます。メニエール病は、内耳にある『内リンパ液』が過剰になってむくみができることで発症しますが、むくむ原因のひとつはストレスと考えられています。治療は生活改善と投薬の二本柱が基本です」

日常で気をつけること・セルフケアは?

水をたくさん飲んでストレスホルモンを下げる

水をたくさん飲んでストレスホルモンを下げる
「ストレスが一因なので、まずはストレスをため込みすぎないことを心がけたいですね。水分をたくさんとると利尿作用を阻止するホルモンが出て、これがストレスホルモンの濃度を下げる効果があることがわかっています。意識的に多くの水を飲むようにしましょう」

激しい頭痛とセットでめまいが出現《片頭痛性めまい》

こんな症状

□片頭痛の最中に、同時にめまいが起こることもある
□めまいの種類は多様で個人差がある
□閉経とともに治まる場合もある

片頭痛に伴う症状のひとつにめまいが現れる 
女性に多い片頭痛もめまいと関係が。 「片頭痛を発症するのは月経が始まった翌年くらいが多く、私の患者さんをみているとそこから平均して15年後くらいにめまいが起きはじめるケースが多いようです。激しい頭痛とともに光や音などの刺激に敏感になり、そうした中のひとつとしてめまいが現れます。閉経後は片頭痛が軽くなる場合が多いですが、めまいだけ残ってしまうという人も。片頭痛の予防薬はこのタイプのめまいにも効くので、思い当たる人は検討してみても」

日常で気をつけること・セルフケアは?

片頭痛の要因となる食べ物はできるだけ避ける

片頭痛の要因となる食べ物はできるだけ避ける
「片頭痛の症状の重さとめまいは比例するため、片頭痛の要因とされるチョコレートや赤ワインに含まれるポリフェノール、チーズに含まれるチラミンは避けるのがベスト。夏など気温が高いと血管が拡張して片頭痛が起きやすいので、特に注意して」

どのタイプにも効くめまいの「リハビリ」

めまいに負けない体は、リハビリによって自分でつくることができる。「小脳は体のバランスをつかさどっています。例えばめまいの原因が内耳にあっても、小脳のバランス機能を高めればそれを補える可能性が高まります。『めまいのリハビリ』は、目や頭、首を繰り返し動かすことで小脳を鍛えられる動きになっています。やっていると頭がクラッとすることがあるのですが、そこで止めないで! この『クラッ』は改善のサインです。ぜひこのリハビリを毎日の習慣にして、めまいを克服してほしいと思います」。

*頭を上下に振る

*頭を上下に振る

1.体の正面に右腕を伸ばし、親指を左に向ける。親指の爪を見続けながら、頭を上に30度上げる。

2.次に頭を下に30度下げる。目線は親指の爪から動かさず、腕は動かさずにキープすることがポイント。1、2を5回ずつ、一日3回行う。

2.次に頭を下に30度下げる。目線は親指の爪から動かさず、腕は動かさずにキープすることがポイント。1、2を5回ずつ、一日3回行う。

*頭を左右に振る

1.体の正面に右腕を伸ばし、親指を立てる。親指を見続けながら、頭を右に30度回す。

1.体の正面に右腕を伸ばし、親指を立てる。親指を見続けながら、頭を右に30度回す。

2.次に頭を左に30度回す。目線は親指から動かさず、クラッとしてもやめない。1、2を5回ずつ、一日3回行う。

2.次に頭を左に30度回す。目線は親指から動かさず、クラッとしてもやめない。1、2を5回ずつ、一日3回行う。

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