「お金がくれたのは安心と、自由への解放だった」お笑い芸人 パトリック・ハーランさん的“50代からのお金の使い道”

経済通のお笑い芸人“パックン”ことパトリック・ハーランさん。お金との付き合い方をしっかり考え、実践してきたパックンのマネーヒストリーと、50代からの“幸せになるため”のお金の使い道について伺いました。

お金がくれたのは安心と、 自由への解放だった

お笑い芸人 パトリック・ハーランさん

お笑い芸人 パトリック・ハーランさん

’70年生まれ。ハーバード大学比較宗教学部卒業。’97年より吉田眞さんとお笑いコンビ「パックンマックン」で活動し、注目を集める。現在はバラエティや報道番組出演のほか、東京科学大学で非常勤講師も。著書に『無理なく貯めて賢く増やす パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)など。

貧乏生活でついた“節約筋”が いつでも僕を助けてくれた

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「まずいっておきますが、僕はファイナンシャルプランナーでもアナリストでもない。お金のことばっかり考えているお笑い芸人です!」

そう屈託なくいって笑わせる「パックン」ことパトリック・ハーランさん。アメリカの名門中の名門、ハーバード大学を卒業後、来日し、お笑い芸人としてブレイク。現在はバラエティや情報番組で活躍するほか、若いころから実践してきた貯蓄と投資の知識を、著書やテレビの経済番組などでわかりやすく伝える経済通としても知られている。

パックンのマネーヒストリー

7歳
両親が別居、その後離婚。母・姉・パックン・犬一匹の生活に。母の失業もあり、生活が不安定に。

10歳
新聞配達のアルバイトを始める。

12歳
父が姉を引き取る。それをきっかけに父からの養育費がストップ。生活がより不安定に。フードスタンプ(食料券)などの公的な支援も受ける。友人たちが普通にしていることができない、普通に持っているものが買えない「相対的貧困」を経験。アルバイトでお金を稼ぎ、友人家族のサポートも受けながら、高校までを過ごす。

18歳
ハーバード大学入学。奨学金を借りながら、トラックの運転手、夏の間の寮の掃除、サンクスギビングディナーの手伝いなど、さまざまなアルバイトを経験。卒業時に数十万円の貯金を作るまでに。

「僕にお金の知識がついたのは、子供時代に貧乏だったことで“節約筋”がついたから」とハーランさん。幼少期、両親が離婚し母子家庭となったハーランさんは、10歳からハイスクールを卒業するまで新聞配達で家計を助け、学用品や部活の費用などは自分でまかなった。

「奨学金を受けて入学した大学時代も、時給2ドル25セントの工事現場から時給19ドルの家庭教師まで、ありとあらゆるアルバイトをやりました。でも、その間もずっと節約と貯金は続けていたから、卒業して日本に来た時点で、すでに数十万円の貯金はあった。なにより怖いのは借金というのが母の教えだったから、働きはじめてからもほぼ0円生活を続け、奨学金は2年で完済。浮いたお金で、少額ですが投資も始めました」

22歳
大学卒業後、幼なじみに誘われ、日本へ。福井で英会話教師の職に就く。その後、地元の劇団に所属。「借金を返すのは確実なリターン」と奨学金を2年で完済。奨学金完済後は、返済に回していた分で、投資をするように。

26歳
東京へ。上京の翌年、パックンマックンを結成。お笑い芸人として活躍しながら、ムダを削る→投資のサイクルを続ける。初期には個別株投資で、少なくない損失を出したことも。その後、手間がかからず、ミドルリスク・ミドルリターンの「長期」「分散」のインデックス投資を柱に。現在、経済的な不安がなく、バイクなどの趣味も楽しめる、パックン流FIRE(Financial Independence“Relax”Early)を達成。

一念発起して上京し、芸能界に入ってからも、節約と投資の日々は変わらず。しかし、最初の個別株投資では、手痛い失敗もした。

「負けましたねぇ。それに、毎日の株価の変動で一喜一憂するのもイヤだった。『おかしいな。僕は芸人で、友だちも彼女もいて、趣味もたくさんあるのに、なんで経済紙の数字ばっかり眺めてなきゃいけないんだ?』って思ってからは、分散型の投資信託に変えました。最初の不動産を買ったのは来日して11年目、結婚した年。僕のアメリカン・ドリームはマイホームを持つことだったから、夢がひとつ、そこでかなったかな」


なにより、コツコツと増やしてきたお金で手に入ったのは「安心」と「自由」だったと、ハーランさん。それは子供のころ、欲しくて欲しくてしかたのなかったもの。

「車とか家とか、ブランド品とか、お金で買える素敵なものはたくさんありますよね。でも、お金って、使わなくてもそこにあるだけで、十分、安心が買えているんです。そして、貯蓄があれば、イヤな仕事をしたり、我慢したりがんばったりしなきゃいけないことから解放される。続けてきて、本当によかったと思いました」

喜びを減らしてまでの貯蓄に意味はあるか?

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人生は冒険だ、とハーランさん。しかし、死ぬまでさすらい続けなければならない老後は、やはり考えもの。車はリースですますなど、今も自分にとって必要のない出費は極力抑えつつ、投資への考え方も、堅実そのものである。


「まず、病気で働けなくなるなどの緊急事態のために半年分の生活費は確保して、その次に、2〜3パーセントのリターンを得られる債券に投資する。そのうえで、インデックスファンド(市場指数に連動した投資信託)を。土台がしっかりしたので、今は専門家のすすめる個別株をちょっとだけ買っています。遊びですね。3つ買って、ひとつは大きくマイナス、2つは小さくプラス。マーケットに勝つのはむずかしいね! エキスパートがすすめる銘柄でも、こんなものですよ(笑)。まあ、それでも、社会勉強にはなっていますが」


冒険するにしても、まず足場固めから。老後資金のシミュレーションは必須だと、ハーランさんもいう。


「定年後も働かなくちゃと思ってる人が多いようだけど、本当にそうですか? 計算してみてください。期待できる年金の額と、実際に使うお金の予測。家のローンを完済して子供が独立したら、経費はすごく減るし、めっちゃ楽しみじゃない? そのお金をどうするか、もっとワクワクしてほしい。もちろん、お金は使わなくても価値のあるものだし、浪費するのはバカバカしいけど、自分の喜びを減らしてまで貯蓄を増やすのもおかしいよね。僕はFIRE(Financial Independence, Retire Early=経済的自立と早期引退)する気はないけど、リタイアのRをRelaxにしたいと思ってる。今あるお金でこの先、自分も配偶者も子供も十分安心だと思ったら、よし、遊ぼう!でも、全然いいと思ってます」

世界は、喜びに満ちている。味わうには時間が足りない!

英語で「死ぬ」を表す「kick the bucket (バケツを蹴る)」。そこから転じて「バケットリスト」(=死ぬまでにやりたいこと)を考えるのが最近のブームだったというハーランさん。例えば、こんな夢だ。


「世界一周。それも、単なる旅じゃなくて、その場所で1カ月とか2カ月とか暮らして、仲間をつくったりアルバイトしたり。その国の笑いを学んでスタンダップ・コメディの舞台にも立ってみたい。でも、今の日本での毎日も楽しいから、それを犠牲にしてまで行くか?という計算も、しっかりしていて。寄付やボランティアにも関心がありますよ。ハーバード・ビジネス・スクールの研究にあったんだけど、自分にお金を使うより誰かのために使うほうが喜びが大きくなるらしい。つまり、何に使えばより喜べるかを常に考えてる」


お金は安心のもと、そして楽しみを生み出すための資源だというハーランさんの信念は、揺らがない。


「僕は、世界は喜びに満ちた海だと思ってる。そこからバケツで喜びをすくって、自分のプールに投げ込んでいる状態。でも、この動作も80代になったらキツいから、楽しいことは今のうちからやっておかないとね」

パックンの考える幸せになるための「お金の生かし方」

1. 持っているだけでも「安心」が買える。家族に残すのもひとつの生かし方。
2. かからなくなった分のお金を何に使うか。これからにもっとワクワクしよう。

3. 人生は冒険。世の中にあふれる喜びを探して旅を続けたい。

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