この季節だから美味しい! 一生に一度は食べたい「究極の鍋」 五選

eclat 2月号では、なかなか味わえない滋賀県大津の熊鍋をはじめ、日本海の沖合、福井県三国漁港や城崎温泉のカニ鍋、玄界灘のアラ鍋、渥美半島のふぐ鍋の五つの“究極鍋”をご紹介。

【熊鍋】滋賀 比良山荘

薄切りの"白身" をほの甘いだしにさっとくぐらせて

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腕のいい猟師が仕留めた冬眠前の月の輪熊。華やかな盛りつけに、食べる前から高揚感をあおられる
鯉と鰻の焼き霜造り
八寸は金茸の菊花和えや鮎のなれずし、青干しぜんまいの寿司など。すべて近隣の山の恵み
2~3度、だしにくぐらせれば食べごろに。最後はうどんで締める。月鍋を楽しみにリピートする女性客は、年々増えているとか
「山の中で木の実を食べて育つ熊は、部位より個体そのもののよしあしが味に出る」と話す伊藤さん。伊藤さん自らが"鍋奉行" としてゲストをもてなしてくれるのも贅沢
七輪が入る特注のテーブルが据えられた食事用の客室。窓から見える庭の風景にも、四季ごとの表情が
大輪の花のように盛りつけられた熊肉は、皿の絵柄を透かすほどの極薄切り。部屋の暖かさで脂が溶け出し、時間を追うほどにつややかさを帯びていく。京都と若狭を結ぶ鯖街道沿いに立つ『比良山荘』は、季節ごとの味がある料理宿として名高い。月の輪熊を食す「月鍋」は、多くの食通が毎年心待ちにする、冬の名物だ。
「私たちは熊の脂を“白身”と呼びます。この白身がうまい」と話すのは、「月鍋」を生み出した3代目・伊藤剛治さん。熊やイノシシといえばもともと、猟師たちが食すマタギ料理。それを懐石の文脈で昇華させ、食通を魅了してきた。だしにくぐらせて食す熊肉は、獣くささは皆無。さらりとした脂の甘味は深く、優しく、体にしみわたる。火を通すうちに、脂の風味をまとう根つきのセリや肉厚の春菊など、香り高い野菜もごちそう。熱源は炭火で、だしのほのかな甘味は砂糖やみりんではなく、月の輪熊が好むハチミツで。味わいの中に、野趣と自然の摂理が息づく。
 静謐(せいひつ)さと洗練をあわせもつ空間は、隅々まで手入れが行き届き、気持ちまで清められるかのよう。一食を目ざし旅する価値は十分だ。
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滋賀県大津市葛川坊村町94 ☎077・599・2058 11:30~13:00、17:00~19:00
(ともに最終入店、要予約)㊡火曜 5室 月鍋コース¥20,000~ JR堅田駅よりタクシーで約30分、京都市内よりタクシーで約40分
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