料理としつらいの美で優雅な時間を堪能「料亭旅館 浅田屋」【黒田知永子、夏ならではの金沢】

静かで優雅なひとときを過ごせる客室と、地産の魚や旬の野菜をつかったさわやかな夏料理で、最高なひとときを提供してくれる金沢の料亭旅館「浅田屋」。古都ならではのおもてなしを演出する浅田屋の魅力を黒田知永子さんがナビゲート。
黒田知永子
春夏秋冬と桜の時期にかけ替えられる暖簾は、三代沢信寿さんの染めによるもの。古い門構えにモダンな色柄が映える。
ブラウス¥85,000・スカート¥79,000 /ドゥロワー 丸の内店(ドゥロワー) ピアス/私物

庭の緑が旅の疲れを癒してくれる、くつろぎの茶の間

茶の間
旅館に着くとまず案内される茶の間でくつろぐ黒田さん。おしぼりとお茶でひと呼吸、老舗旅館ならではのこまやかなおもてなしの心が伝わってくる。お客の好みに合わせて、特別な金沢体験の提案も。
「千歳」の坪庭
「千歳」の坪庭には樹齢300年を超す槇の木が。旅館全体の作庭は京都の「大河内山荘」の庭園を手がけた庭師によるもの。
料亭旅館浅田屋
宿泊の部屋数は4室。こちらの「千歳(せんざい)」は主に食事に使われている。畳には籐筵(とうむしろ)が敷かれ、夏仕様に。足もとからも涼感が伝わってくる。葦簀(よしず)を通して見える緑もさわやか。床の間のお軸は夏の風物詩「虫売り」、伊藤小坡の画が愛らしい。耳つきのかごには、蛍袋、撫子、茶筅草、下野草。楚々としたなげいれは、華道を嗜む女将自らの手によるものだ。

太きゅうりやずいき、旬の加賀野菜と日本海の恵みを美しい器で

お造り

加賀の夏を代表する野菜、太きゅうりをくりぬき、青紅葉の上にのせ、向付に見立てた3種のお造り。甘海老、鯛の昆布締め、マグロが行儀よく並び、小さな船盛の風情。

すり流し
ていねいに炙ったアイナメに旬のじゅんさいとずいきを合わせたすり流し。蓋を開けると雅な桐の蒔絵が現れ、お椀と料理の調和にはっと息をのむ。
焼き物
焼き物はノドグロ。浅蔵五十吉による九谷焼に竹をあしらって。“五十吉カラー”と呼ばれる深い黄の色釉が美しい。切子杯の冷酒とともに。

歴史ある料亭旅館の夏。料理としつらいの美

夏暖簾をくぐると、水を打った敷石と風雅な生け花が出迎え、茶の間に上がると庭の緑が旅の疲れを癒してくれる。

 

「まず茶の間でお茶を召し上がっていただきながら、金沢にいらした目的やご興味をおうかがいし、実りある滞在にしていただくためのお手伝いをいたします」と話すのは、16代オーナーの浅田久太さん。

 

涼しげな坪庭から優しい光が入る部屋は、個人宅のようにくつろげ、静かな時を過ごすことができる。地産のノドグロ、旬の太きゅうり、ずいき、じゅんさいなどを使ったさわやかな夏料理は、器の取り合わせも美しい。

 

「歴史を感じる調度や器、手入れされた庭の緑……、細部にまで行き届いた夏らしいしつらいが素敵。ゆっくり滞在したい旅館ですね」と黒田さんもくつろいだ。

料亭旅館 浅田屋

慶応3(1867)年創業の数寄屋造の料亭旅館。金沢駅からほど近く、近江町市場もすぐなのに、街中の喧騒をまったく感じさせない。静謐な和の空間に身も心も浸して、古都ならではのおもてなしが演出する優雅な夏時間を過ごしたい。

【DATA】

金沢市十間町23 ☎076・231・2228 ¥43,000~(2名1室利用の1泊1名料金、朝・夕食つき、サービス料含む) 会食は昼食5名以上の予約で¥15,000~、夕食は¥22,000~ www.asadaya.co.jp/ryokan

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