【お墓どうする?】アラフィーが知っておきたい「そもそも“お墓”ってなんですか?」

少子高齢化による承継者問題をはじめ、ここ十数年でお墓をめぐる事情は大きく変化しています。お墓を探す前に、まずは正しい知識を得ることが大事。そこでお墓のあり方について、専門家にお話を聞きました。
教えてくれたのは…
シニア生活文化研究所所長 小谷みどりさん

シニア生活文化研究所所長 小谷みどりさん

第一生命経済研究所を経て、’19年から現職。著書に『お墓どうしたら?事典』(つちや書店)、『没イチ パートナーを亡くしてからの生き方』(新潮社)など。

家族のかたちが変わればお墓のあり方も変わります

エクラの読者にアンケートをとったところ、「実父は次男なので、お墓を新しく建てなければいけない」「義父母のお墓があるのは遠方。子供たちのことを考えると、自分たちのお墓は近所につくるのがよさそう」「夫も私もひとりっ子で、子供もひとり。となると、両家合同のお墓でないと維持はむずかしいかも」といった悩みが多く寄せられた。そんなふうに、新しいお墓を模索している人たちがいる一方、「お墓を継ぐ人がいない」「このままだと、将来は娘がひとりで複数のお墓をみることに」という声も。

「お墓は、家族のかたちと密接に関係しています。少子化がすすみ、核家族が主流になった今、従来のお墓のあり方が現実にそぐわなくなってきたのも当然です」と、お墓に精通している小谷みどりさん。「そもそも日本で長らく主流だったのは土葬。田舎では、誰かが亡くなったら、その集落の墓地に、ひとりずつ埋葬していました。『お墓はひとりひとつ』がスタンダードだったのです。しかも昔は、生まれた土地から一度も離れることなく、そこで生涯を終える人が大半。なので、お墓を新設しなければならないという状況に陥ることもなければ、子供の数が多かったので、墓守がいないという悩みとも無縁でした」


小谷さんいわく、私たちがなじんできた「○○家之墓」という“家墓”が広く普及しはじめたのは、戦後のことだとか。「家墓は、墓石の下に複数の骨壺を納める、いわば家族の“共同墓”。それは、火葬でなければできません。東京や大阪といった大都市圏は、土地に余裕がなく、人口密度も高かったため、比較的早く火葬が主流になりましたが、火葬の全国平均が50%を超えたのは1935年。’70年でも、5人にひとりは土葬だったんですよ」


ということは、家墓が一般的になったのは、ここ70〜80年ほど。長年お墓の枕詞のように使われていた“先祖代々”は、実は、せいぜい曽祖父以降、わずか3、4世代程度というわけだ。

「ちなみに、多くの人が『お墓は長男が継ぐもの』と思っていらっしゃるようですが、そうした決まりもありません」

お墓どうする?

夫婦墓や親子墓だけでなく、仲間との共同墓が増えそう

高度成長期以降、進学や就職を機に大都市圏に移り住む人が急増し、核家族化がすすんだことや、親戚付き合いが薄れてきたことも、お墓に影響を与えた。

「本来お墓は、誰と入らなければいけないといった決まりはありません。ですから、骨壺を入れるスペースに余裕があれば、かなり遠い親戚でも一緒に納骨できます。にもかかわらず、現在の居住エリアに“自分の家族だけのお墓”を建てるケースが増えてきました」


その家族は誰をさすかというと、「実際に生活をともにしている人たち」。エクラ世代だと、祖父母も家族と認識している人が多い気がするが、若い世代は、親と子のみととらえている人が多いという。


「お墓参りをイメージするとわかりやすいと思いますが、皆さん、親戚のお墓参りにはあまり行かないのでは? 祖父母のお墓にしても、両親と同じお墓ならお参りするかもしれませんが、両親とは別で、しかも遠方にある場合、足が遠のいているのではないでしょうか。読者の子供や孫世代になると、その傾向はますます強くなるでしょう」

お墓

そんなふうに“家族の単位”が小さくなりつつある現代、お墓の規模が縮小しても不思議はない。夫婦や親子のみというお墓や、承継の必要がない永代供養墓などが、今後は主流になっていきそう。


「今は、老人ホームやシニア住宅で最期を迎える人も多いですよね。お墓は、生活共同体が入るものだと考えると、その仲間たちと同じお墓に入るケースも増えてくるだろうと思います」

 
さらに、あと数十年もしたら、お墓そのものがなくなる可能性も。

「アメリカやイギリス、韓国など、海外の一部では、『遺骨をなくす』というムーブメントが生まれています。骨を溶かすなど、化学的な処理をして、完全に自然に還(かえ)るような方法が試行されているのです。いわば、究極のエコ。そうなると、お墓そのものが不要になるかもしれません。弔い方を含め、お墓は今後さらに変わるかもしれませんよ」

 

永代供養墓が主流になる日も近い!? 主な3つのタイプ

 個別安置型 

一般墓同様、専用区画に、墓石などを 建てて安置し、一定期間を過ぎたら、 遺骨を合祀型のお墓に移す形式。期間 は、13年、17年、33年など、墓地や霊 園によって異なる。墓石の種類や安置 場所を指定されるケースが多いが、個人でお墓を建てるよりは安価に済む。

 集合安置型 

それぞれの遺骨に専用スペースを与え、小さな石碑や石塔などを建て、同じ場所に集めてひとつのお墓に見立てる、いわばマンションタイプ。遺骨は専用の骨壺に納められるが、専有スペースが小さいぶん、通常のお墓よりも費用が抑えられるケースが多い。

 合祀型 

永代供養墓の中で最も多いスタイルで、「合同墓」「合葬墓」とも呼ばれる。遺骨は骨壺から取り出し、墓所内に直接納骨されるため、あとから遺骨を返してもらうことはできない。永代供養の中で最もリーズナブルで、費用は数万円~25万円前後が一般的。

 

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