胸やけ、胃のムカムカは「逆流性食道炎」の可能性あり!発生原因や治療法は?

かつては欧米に多い病気といわれていた逆流性食道炎が、今、日本でも急増中。胃や食道以外にも症状が出ることがあるから要注意! この病気が起こる原因や治療法を兵庫医科大学副学長 三輪洋人先生が詳しく解説。
兵庫医科大学副学長 三輪洋人先生

兵庫医科大学副学長 三輪洋人先生

兵庫医科大学病院副院長・消化器内科 主任教授・診療部長・内視鏡センター長。医学博士。専門は消化器内科一般、上部消化管疾患。著書は『胃は歳をとらない』(集英社)など。

胃酸の逆流で、胃ばかりか心臓ものども痛い!

【原因】胃酸分泌異常▶︎▶︎▶︎逆流性食道炎

原因は、胃の入口の筋肉のゆるみ!

正常な胃

《 正常な胃 》

逆流性食道炎の胃

逆流性食道炎の胃

正常な胃は、下部食道括約筋によって噴門(ふんもん)が閉じているので、胃酸は逆流しない。しかし、なんらかの原因で下部食道括約筋がゆるむと、噴門がきちんと閉じないため胃酸が食道に逆流し、食道の粘膜に炎症が起き、逆流性食道炎になってしまう。

CHECK LIST
逆流性食道炎の症状は胃の症状だけではない!

(胃の主な症状)
□胃がムカムカとして重い
□胸やけがする、胸がつかえる
□酸っぱいもの、苦いものがこみ上げる
□吐き気がする

□おなかが張る

(胃以外の部分の症状)
□のどがヒリヒリする
□声がかすれる
□心臓が痛い
□咳が出る
□耳のあたりが痛む

胃には胃酸から胃壁を守る仕組みがあるが、食道の内壁には粘膜を守る仕組みがないので、胃酸が流れ込むと粘膜が傷み、食道の内壁に分布する感覚神経などが刺激されて上記のような症状が起こる。胃や食道以外に症状が出ることもある。

胃の入口の閉まりの悪さや、胃酸の増加によって逆流

胃酸が食道へ逆流する逆流性食道炎。

胃酸が逆流してしまう理由とは?
「食道と胃の境目には、噴門という開閉部があります。この噴門は飲食物が通るとき以外は、横隔膜と、下部食道括約筋という筋肉によって閉じられていて、胃の内容物や胃酸の逆流を防いでいます。でも、加齢や食べすぎ、脂っこいもののとりすぎ、肥満、前屈み姿勢などが原因で下部食道括約筋はゆるみやすくなり、すると噴門が閉まらず胃酸の逆流を招くのです。また、動物性タンパク質など胃酸の分泌を増やすもののとりすぎも逆流を招く原因。そして逆流した胃酸で食道粘膜に炎症が起きるのが逆流性食道炎です」

逆流性食道炎の代表的な症状が、胸やけや、酸っぱいものがこみ上げてくるような“呑酸(どんさん)という症状。また、上のリストのように、胃以外の部分に症状が出ることも。

このような症状があったら消化器科へ。下記のような治療法で改善が可能。

「逆流性食道炎は軽症なら自然に治ることもあります。ただ、放っておいて重症化すると食道に潰瘍ができて、出血や穿孔(せんこう)(孔(あな)があく)につながったり、食道の粘膜の性質が変化するバレット食道になって食道がんのリスクが高まることも。ですから逆流性食道炎のような症状があったら、早めに受診をして治療をすることが大切です」

治療法は?

「逆流性食道炎は、胃酸の分泌を抑える『プロトポンプ阻害薬』などの薬での治療がメイン。胃酸の分泌が抑えられることで食道の粘膜の傷も回復し、症状が改善することが多いです。ただ、粘膜の傷が治りきらないうちに服用をやめると再発しやすいので、医師の指示どおりに服用することが大事。改善しない場合は、食道の動きを改善する薬や、胸やけを中和する制酸薬、食道の粘膜保護薬などを用いることも」

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