睡眠を妨げる寝汗の正体は「更年期」。更年期のカラダとココロを支える根本治療とは?【小田ユイコ×野崎ウイメンズクリニック院長 野崎雅裕先生対談#2】
#1で、首・胸・頭皮ぐっしょりの寝汗は、寝ているあいだのホットフラッシュで、更年期による症状だったことが判明。今一度、更年期に向き合おうと決意した小田に、「女性のかかりつけ医」として評判の野崎雅裕先生がすすめてくださったのは、最新のHRT療法や漢方による治療。それってどんな治療なの?

野崎雅裕先生
野崎ウイメンズクリニック 院長。医学博士。九州大学医学部卒業。米国シンシナティ大学医学部生理学研究員、米国ノーフォーク・ジョーンズ研究所研究員を経て、九州大学病院産婦人科准教授、九州中央病院副院長を歴任。2010年に野崎ウイメンズクリニックを開院。日本産科婦人科学会専門医。日本女性医学学会認定医・評議員。日本生殖医学会専門医・評議員。日本女性心身医学会認定医・評議員。NPO法人 更年期と加齢のヘルスケア学会理事・九州支部長・メノポーズカウンセラー。

小田ユイコ
美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』『BAILA』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。
寝汗を含む更年期症状には「天然型女性ホルモン」によるHRT療法を
小田:#1で、小田の寝汗の真相はホットフラッシュで、更年期症状のアラームサインだと教えていただきました。56歳になって、今さらではありますが、更年期にきちんと向き合おうと思います。
野崎先生:それは、とてもいい考えです。女性の人生は、まだまだこれからですから。そんな小田さんや、更年期世代のみなさんに提案したいのがHRT療法。HRTは、Hormone Replacement Therapyの略で、卵巣の機能が低下して分泌が低下した女性ホルモンを、ほんの少しだけ補充する治療です。
小田:HRT療法は、今から10年ほど前に日中のホットフラッシュに悩まされたとき検討しましたが、乳がんや子宮体がんなどのリスクを知り、受けるのを断念しました。
野崎先生:乳がんや子宮体がんのリスクは、長らくHRT療法のネックとなってきましたが、天然型の女性ホルモンを使えるようになってから、それらのリスクが軽減されたんですよ。たとえば胃がんや大腸がんになる可能性は、誰もがゼロではありませんよね。それと同じくらいになったということです。
小田:天然型の女性ホルモンとそれまでの女性ホルモンでは、どう違うのですか?
野崎先生:小田さんの卵巣が以前分泌していたのと同じ構造をしているのが天然型の女性ホルモン。ひと昔前のHRT療法は、ピルのような合成型ホルモンが主流でした。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)がありますが、10年ほど前から天然型エストロゲンによる治療が本格化し、昨年末から天然型プロゲステロンも使えるように。昨年11月から保険適用になりました。
小田:知りませんでした! 天然型プロゲステロンの登場で、何が変わったのですか?
野崎先生:天然型とはいえ、エストロゲンだけを投与すると子宮内膜症のリスクが上がり、子宮体がんを招きかねません。子宮を守るためにはプロゲステロンの投与が欠かせないのですが、合成型プロゲステロンは乳がんのリスクが報告されています。しかし天然型プロゲステロンが日本で認可されたことで、乳がんのリスクもHRT療法を受けていない人と同じになったのです。
小田:それは画期的ですね! 乳がんや子宮体がんのリスクがHRT療法を受けていない人と同じなら、ぜひ受けてみたいです。
野崎先生:ちなみに、子宮筋腫などの病気で子宮を取った方は、プロゲステロンの投与は必要ありません。HRT療法を受ける場合、エストロゲンのみの投与となります。

HRT療法は閉経後にスタートしてもよいが、閉経前の45歳くらいから始めるのがおすすめ
野崎先生:天然型女性ホルモンによるHRT療法では、まずは血液検査を行い、甲状腺の病気などほかの病気が隠れていないかを調べます。そして事前の卵巣がん、乳がん、子宮がん検診は必須です。天然型女性ホルモンによるHRT療法を導入している女性クリニックでは、事前にこれらの検査を行っています。当クリニックでは、その後も1年に一度、定期的な検診をお願いしています。また、喫煙や肥満がある人は血栓症のリスクが高く、注意が必要です。乳がんや脳卒中、心筋梗塞にかかったことがある人は、HRT療法を受けることができません。
小田:HRT療法を受けると、どのような変化がありますか?
野崎先生:まず寝汗など、ホットフラッシュからおさまっていきます。ぐっすり眠れるようになるので、慢性的な疲労も取れ、不安やイライラも軽減。HRT療法を受けた多くの患者さんが「別世界のよう」とおっしゃいます。
目に見えるところでは肌がみずみずしくなり、ハリやつやがよみがえります。抜け毛が減り、髪がしっかりしてくる方も多いです。実感できる部分だと肩こりや頭痛、手足の冷えや手指のこわばりなどが減って、日々の生活が楽に。デリケートゾーンの不快感や性交痛も緩和されます。目に見えないところでは、骨粗しょう症や高血圧、高コレステロール、認知症の予防に。
小田:更年期以降あたりまえになり、もう仕方がないこととあきらめていた症状ばかりです。HRT療法には、飲み薬が処方されるケースと、塗り薬、貼る薬が処方されるケースがあると聞きます。どのように違うのですか?
野崎先生:天然型エストロゲンには飲み薬、ジェルなどの塗り薬、下腹部などに貼るシール状の薬があります。飲み薬で胃腸がムカムカする人、肝臓に負担をかけたくない人には塗り薬や貼る薬を処方します。アルコール分などの刺激に肌が弱い人には飲み薬がおすすめです。天然型プロゲステロンは、今のところ飲み薬しかありません。
小田:私は56歳ですが、HRT療法は何歳くらいから始めるのが適切ですか?
野崎先生:更年期症状の重い、軽いにかかわらず、45歳くらいから始めるのがおすすめです。といいますのも、そのころから気づかぬうちに骨密度の低下や血管の硬化が起こるからです。エストロゲンが減り始めるこのころから始めていれば、50代から増える骨折や血圧の上昇などを予防することができます。
小田:HRT療法を始めた場合、薬は毎日? いつまで続けることになるのでしょうか。
野崎先生:HRT療法には周期的投与と連続投与があります。周期的投与は閉経前後の女性に用いる方法で、エストロゲンを先に飲み始め2週間してからプロゲステロンを併用し、その後休薬期間を設けて月経を起こします。小田さんのように閉経している方には、連続投与といって、飲み薬の場合エストロゲンとプロゲステロンを1日1回服用します。
止めるタイミングは人それぞれですが、当クリニックでは70代でも少量で飲み続け、健康維持に役立てていらっしゃるかたもいます。寝汗など更年期症状が緩和されたからとすぐにやめてしまうと、また症状がぶり返してしまいます。ただ、HRT療法が体に合わない、あまり効果が感じられない、薬がなくても大丈夫と思った場合は医師と相談し、いつでも止めることは可能です。ホルモン補充療法ガイドライン(2017年度版)では、「ホルモン補充療法の投与継続を制限する一律の年齢や投与期間はない」とされています。
小田:天然型の女性ホルモンによるHRT療法の乳がん、子宮体がんを恐れすぎる必要がなくなったことはわかりましたが、その他の副作用はありますか?
野崎先生:不正出血や乳房の張りや痛み、胃のむかつきや吐き気が現れることがあります。しかし、1か月から3か月程度で治まることがほとんどです。不正出血が続く場合は、薬の投与方法を変更したり、ほかの病気が隠れたりしていないか調べます。


寝汗などの更年期症状緩和には漢方薬を使う手も
小田:HRT療法以外に、寝汗を改善する治療法はありますか?
野崎先生:寝汗のようなホットフラッシュを含む更年期症状の治療には、漢方薬もよく処方します。体全体の調子を整える漢方薬は、さまざまな更年期症状をやわらげることが可能です。「女性三大漢方薬」と言われる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)はその方の「証」に合ったものを飲めば効果があります。
小田:漢方薬って気休め?と感じてしまうこともあるのですが・・・。
野崎先生:効く人には、効きます。そのためには「証」に合っていることが大事。ひとつの目安は、漢方薬を飲んだときに「結構、おいしいな」と思えるかどうか。合っていればおいしいと感じるんです。
小田:え? 苦くておいしくないほうが効きそうですが(笑)。
野崎先生:良薬口に苦しというのはウソ。合っている人はおいしく飲んでいますよ。
更年期症状を緩和する代表的な漢方薬
●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
竹久夢二の美人画に出てくるような線が細くて体力が弱い人=「虚証(きょしょう)」に向いている。冷え性、貧血、疲れやすさ、おなかをこわしやすい。
●桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
ミロのビーナスみたいに筋肉が充実して比較的体力がある人=「実証(じっしょう)」に向いている。肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、便秘がち。
●加味逍遙散(かみしょうようさん)
上記の「虚証」と「実証」のどちらでもない人=「中間証(ちゅうかんしょう)」に向いている。
のぼせ、肩こり、疲れやすい、不安、イライラ。
小田:今回、寝汗が更年期症状によるホットフラッシュだったこと、HRT療法が進歩していたことなど、知らないことばかりでした。
野崎先生:小田さんのように、日々の辛さを更年期症状だと思わず我慢してしまう方は多いのです。自分の体の変化をよく理解して、HRT療法や漢方など治療という選択肢があることを知っていただきたいですね。それは、70代、80代、90代と年齢を重ねたときの健康と美しさを今から守る手段でもあるのです。
今回の取材でHRT療法を初めて受けてみようと思った小田。東京在住の小田は、残念ながら福岡の野崎先生のクリニックに通うことができないため、都内の女性クリニックにさっそく予約を入れました。HRT療法で寝汗やその他の更年期症状がどうなったか、後日この連載でご報告したいと思います。
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