ロンジェビティ研究は単なるエイジングケアの域を越え、「老化を治す」時代へ!? 最先端テクノロジーがもたらす「不老長寿」の現在地を、美容ジャーナリストの齋藤薫さんが解き明かす。医療ベンチャー「TAZ」代表・生命科学者の高橋祥子さんが目指す“若返り”と、代謝コントロール×老化細胞除去というW効果が期待できるサプリメントをフィーチャー。
誰もが「病気にならない」時代を目ざす「老化細胞除去」
人が病気にならない未来を追い求めて老化細胞研究へ
細胞の抗老化のキーワードであるオートファジーやミトコンドリアと比して、私たちにとって最もわかりやすいのが「老化細胞の除去」ではないだろうか。説明を聞かずとも仕組みがイメージできるからだが、人間の体は想像以上に複雑で神秘的。その驚くべきメカニズムを老化細胞研究の第一人者、高橋祥子さんに伺った。
「老化して増殖できなくなった細胞が、炎症性の物質を放出して周りの細胞の老化まで促進してしまうことから“ゾンビ細胞”とも呼ばれるのが老化細胞。加齢に伴う機能低下を改善することで健康寿命が延びることがわかっています。老化細胞除去成分自体はすでに世界中で見つかっていますが、細胞にダメージを与え安全性が懸念されるものも。私たちは安全性の高い食品成分で老化細胞を除去する独自技術で特許を取得。まもなく論文も発表されます」(高橋さん、以下同)
高橋祥子さんは、東京大学大学院の博士課程の段階で、日本では初とも言える遺伝子解析サービスの事業を起こし、その後に医療ベンチャー「TAZ」を設立。老化細胞除去によって、世界的コンペティション「Xプライズ」の準決勝に進むという快挙を成し遂げている。全員が医者という家庭に育ち、だから自分は病気を治す前に人が病気にならない未来を目ざそうと考えたという。
「遺伝子解析も老化研究も、その思いから手がけたものです。私が大学に残らずベンチャーを立ち上げたのも、研究成果をいち早く社会実装するため。生物学的には、人間も老化せず、病気にならずに一生を終えることができるはずで、それを富裕層だけでなく、一般の方が享受できる時代の達成を目ざしています。現在、アメリカの遺伝子治療薬は1億円かかると言われ、払えない人は助からない。病気にならない“不老長寿の技術をすべての方へ”というのが、私たちが掲げるテーマです」
科学で得られた知見を、続けられる習慣へ
しかし科学は思いがけない発見をもたらすもので、奇しくも今秋、大きな研究成果から生まれたサプリを世に送り出すが、これが驚くべき副産物をもたらす、私たちにとって夢のようなサプリとなっているのだ。
「実は代謝コントロールやカロリー制限をすると寿命が延びることを研究する過程で、カロリー制限せずとも同じ経路を活性化させるプロシアニジンというリンゴポリフェノールが、内臓脂肪低減やダイエットに効くだけでなく、老化細胞に作用する研究結果も報告されたのです」
なんと体重や体脂肪が減らせるうえに若返りも期待できるという、思いもよらなかった2大効果が。「腹八分目こそ抗老化の鍵」という普遍の法則がそのままサプリメントになったわけで、歴史的発見とも言えるもの。ヒトによるエビデンスがしっかり取れており、機能性表示も取得。
自ら試作を試し続けた高橋さんの肌は発光するように美しく、代謝コントロール×老化細胞除去というW効果には美肌効果さえ期待してしまう。そこに、従来のアンチエイジングと、細胞レベルのリジュビネーションとの違いをまざまざと感じるのだ。抗老化ではすでにNMNが一大トレンドとなったが、NMNは未だヒトによるエビデンスは得られていない。人類の不老長寿はもう確実だが、問題はヒトの臨床試験を待たなければいけないこと……。
「実は思ったより早いと感じています。細胞リプログラミングも数十年後かと思っていましたが、早くも今年アメリカで眼疾患を対象とした臨床試験が始まっています。だから、極端に言えば将来的に200歳くらいまでの長寿は可能かと。
それでも脳の寿命が人の寿命であると私は考えています。心臓も含め、悪くなったものを入れ替えることはできても、脳だけは元に戻すことはできないので。
私は研究者として、また人類の挑戦として、こうした長寿の追求は必然だと思っていますが、あくまで大切なのは健康寿命。人間の機能は全てが相関しているので、最終的に大切なのは食事や運動、睡眠なども含めて複合的に働きかけてこそ結果を出せること。でも逆に老化を心配しすぎたり、悪いイメージを持つほど老化しやすいといった研究結果もあり、本当の若返りには自分の体とあくまで楽しく向き合うことが必要なのだと考えています」
りんご由来プロシアニジンを配合。BMIが高めの人の体重や体脂肪、内臓脂肪などの減少をサポート。アプルン(機能性表示食品)120粒¥4,838/TAZ shop
たかはし しょうこ●’88年生まれ。’13年、ゲノム解析ベンチャー「ジーンクエスト」を起業。’23年に「TAZ」を設立。科学技術の力で誰もが健康で長寿に生きられる社会を目ざす。
撮影/藤澤由加 取材・原文/齋藤 薫 ※エクラ2026年12月号掲載