大のクラシックファンで知られる美容ジャーナリストの齋藤薫さん。彼女がプライベートでしばしば訪れているという、ドイツの音楽祭。初心者からクラッシック音楽通までも魅了する、奥深いドイツ音楽祭の世界を案内してもらう。前後編の後編。
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バーデン バーデン イースター音楽祭
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お伽(とぎ)の国で音楽に酔いしれる
ドイツの軽井沢とも言える高級リゾート、バーデン バーデンは街自体が美しいメルヘンの世界、世界中から観光客を集める温泉地でもある。毎年イースターに行われる音楽祭の主役は昨年までベルリン・フィル、今年からは大人気の若きマエストロ、クラウス・マケラ(写真)率いる世界的オケ、ロイヤル・コンセルトヘボウに変わるが、昼間は教会や美術館、ホテルなど各所で小さなコンサートが行われ、夜は祝祭劇場で連日オペラやオーケストラの演奏があって、そこには皆ドレスアップして出かけていく夢のような数週間。小さな街なので演奏家やオペラ歌手と街で遭遇するチャンスもあり。素晴らしいスパ、カラカラテルメで1日過ごしたり、ドイツ随一のグルメの街で世界各国料理を堪能したり。そういう意味でも旅の満足度は極めて高い。(齋藤)
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バーデン バーデンはドイツ南西部、フランスのアルザス地方にほど近くファンタスティック街道沿い。イースター音楽祭は3月27日〜4月5日ごろまで開催予定
ドレスデン音楽祭
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10万人が集う古都の祭典。今年は角野隼斗も登場
フィレンツェにも匹敵する古都ドレスデンは、360度どこを見てもバロック様式の建物が美しい歴史の街。毎年新緑の季節に開催されるドレスデン音楽祭はなんと観客10万人、出演者だけでも2000人以上が駆けつける大規模な催しで、クラシックやバレエのみならず、ジャズやダンス音楽など、幅広いジャンルの演奏会が宮殿やオペラ劇場、教会、時には野外など各所で催され、絶対に飽きさせないプログラム。特に今年は、観客動員数でギネス記録を作ったほど人気絶頂のピアニスト角野隼斗のリサイタルも行われる。ともかくこの人のガーシュウィンは必聴! エルベ川沿いのライトアップは圧巻で、音楽祭の季節にはクルーズも楽しい。陶磁器の街マイセンもすぐ近く。(齋藤)
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ドイツ東部の街。音楽祭中は、市内20カ所、約60公演を開催。期間は5月14日〜6月14日。注目のピアニスト角野隼斗さんの出演は、5月21日
バイロイト音楽祭
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音楽通にとっての聖地巡礼
生涯に一度は行くべきと、クラシック通が毎回チケット争奪戦を繰り広げる世界で最も有名な音楽祭は、基本的にワーグナーしか演奏されない。そもそもバイロイト祝祭劇場はワーグナー自身が自らの楽劇『ニーベルングの指環』を理想的な環境で上演するために創設されたもので、全てが異例づくし。目玉である『ニーベルングの指環』は四日間ぶっ通しで演奏される狂気的な超大作だけに相当の忍耐と予習がいるけれど、紛れもなく異次元の体験とはなるはずだ。奇しくも今年は150周年ということで華やかな盛り上がりがありそう。加えてバイロイトの街には世界最古にして世界最高の木造劇場があり、こちらも圧倒的に贅沢な装飾は必見。(齋藤)
ドイツ北部のフランケン地方にある小都市バイロイト。音楽祭のチケットは毎年争奪戦。’26年も1時間で完売、いつかぜひ。期間は7月24日〜8月26日
シュヴェリーン城の宮殿野外オペラ
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まさに白鳥の湖の世界に没入
’24年についに世界文化遺産登録。白鳥が優雅に泳ぐ湖に囲まれていることから"北の白鳥城"といわれる湖上の宮殿。花々が咲き誇るお伽話に迷いこんだような佇まいは、シンデレラ城のモデルになったノイシュヴァンシュタイン城に酷似していることから“北のノイシュヴァンシュタイン”とも呼ばれる。その旧庭園で行われる野外オペラも、夏の音楽祭として世界的に人気。宮殿と湖を背景にした野外オペラは、あたりが暗くなってから煌めく星空の下、幻想的な光の中での上演なので、夜9時からと遅いスタートだけれど、演目に関わらず実にロマンチック。音楽やオペラに詳しくなくても、観光気分で出かけても、決して退屈しないはず。(齋藤)
ドイツ北部、城内のロココ劇場を中心に初夏に開催される。新作オペラや歴史的オペラの復活上演など多彩な上演が魅力。通常5〜6月にかけて1カ月続く(’26年は開催期間未定)
ミュンヘン オペラフェスティバル
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誰もがオペラを楽しめる喜び
音楽通向けのバイロイトはハードルが高いという人は、是非ともこちらへ。既に150年の歴史を持つミュンヘン オペラフェスティバルは、できるだけ多くの市民に芸術を楽しんでもらいたいとする当時の王政の後押しで始められたもの。バイエルン州立歌劇場はじめ、多くの劇場を巡れるプログラムは世界的なオペラファン垂涎の的となっている。嬉しいのはマックス・ヨーゼフ広場で行われる「オパー・フュア・アレ(みんなのオペラ)」という無料コンサートや、巨大スクリーンによるデジタルコンサートも開催。いろんなスタイルでオペラを楽しめる。ドイツ最大の都市宮殿や大聖堂、教会が立ち並び、中世の建物と現代建築が融合した街中には歴史ある青空市場ヴィクトアリエンマルクトが。140軒もの屋台が並ぶ“ミュンヘンの胃袋”の食べ歩きも異様に楽しい。(齋藤)
古い街並みと新たな文化が調和する南ドイツの中心都市。オペラをはじめ、ミュージカル、バレエやコンサートが開催される。期間は6月18日~7月31日
ヴァルトビューネ音楽祭
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森の舞台で、ピクニックのように音を愛でる
ある意味で象徴的なのが、ベルリン郊外の森の中で1年に1度だけ開催される世界的人気の野外コンサート。「森の舞台」と名付けられたヴァルトビューネは古代ギリシャの円形劇場をモデルに設計され、約22000人以上収容。初夏の夕暮れ時から始まり、あたりが暗くなるほどに手持ちのキャンドルがあちこちで煌めく光を放つ幻想的な一夜は、ただその場にいるだけで最高の旅の1コマとなるはず。世界最高峰のベルリンフィルの演奏と豪華なゲストで、毎回大変な盛り上がりを見せるが、’26年のゲストはキング・オブ・テノール、ヨナス・カウフマン。飲み物や食べ物を持ち込め、服装も皆カジュアルなピクニックコンサートは、ベルリン旅行のメインに当てる価値あり。(齋藤)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による世界的な野外コンサートで、この街の夏の風物詩。’26年は国際的に人気のテノール歌手のヨナス・カウフマンが出演予定。今年は6月27日に開催
さいとう かおる●美容ジャーナリストの草分けにして、業界のご意見番。美容はもちろんのこと、女性に寄り添い、力づけるエッセーが、幅広い世代の支持を集めている。プライベートでは、大のクラシック好きで、ドイツの音楽祭には定期的に訪れている。ドイツ音楽の旅は10回以上、各地を訪れているが、実はバイロイト音楽祭は未体験。絶対行きたい。そして目下の推しは、指揮者ならクラウス・マケラとサイモン・ラトル、ピアニストは藤田真央とイム・ユンチャン。『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋)など著書多数。
※エクラ2026年5月号掲載 掲載情報は4月1日時点のものです