「興味はあるけど、いろいろありすぎて……」というマダムのためにプロが指南。「旅するように味わう」日本のクラフトビールガイド。
セレクトしてくれたのは
しらいし たつま●クラフトビールマガジン『TRANSPORTER』編集長、クラフトビアバー勤務を経て’20年より現職。ナチュラルワイン、純米酒にもマニアックに精通、酒の生産者や料理人、飲食店オーナーの信頼も厚い。
東京都千代田区神田紺屋町28紺屋ビル1F
☎︎050・3565・6588
15:00~22:00
不定休
まずは定番を知るべし。「飲める」場も動機に
少量生産のいわゆる「マイクロブルワリー」を中心に、続々と新生が現れる日本のクラフトビール市場。その数は約千軒にもおよぶ。「我々プロでも全部は把握しきれない。小さな店では扱える量にも限りがある」と、白石達磨さん。店主として酒選びや接客を担う『キャリカーズトーキョー』は、角打ちができる酒屋で、クラフトビールも常時150種がそろう。セレクトの基準は「定番があるブルワリー」だという。「例えば北海道の『ブラッスリー・ノット』は、ペールエール、IPAなどを常時造り続けていて品質も高いです」。
自由な味づくりが魅力といわれるクラフトビールだが「味の再現性があることは、ブルワリーの実力を知るうえで重要」とも。先述の2つのスタイルは、クラフトビールの基本を知るうえでも覚えて損はない。
加えて「地域性に着目してみるのもおもしろいですよ」と、提案する。「地域の廃校などを活用したり、地元の農産物を使用したり、酒蔵とコラボしたりと、土地の魅力をビールで発信する醸造所が増えています」
東京から日帰りで行ける場所や、奈良や伊勢など観光と合わせて旅程を組める土地まで、注目すべきブルワリー8軒を教えてくれた。
「醸造施設を見学できる、その場で飲めるタップルームや直売所を備えているところも。一度訪れると、醸造家やビールに愛着が生まれますよ」
(右)Brasserie Knot(ブラッスリー ノット)/北海道
タンチョウの里として知られる北海道・釧路湿原に隣接する鶴居村で’22年開業。「結び目」を意味する「knot」の名に「ビールが地域の自然やアウトドア、音楽などの文化との結び目に」という思いが。廃校の体育館を活用した醸造所は見学ができ、直売所も併設。5種の定番を軸に「引き算の味」を磨く。(右)「WIND(IPA)」¥770、(中)「BIRD(PALE ALE)」¥750(ともに360㎖。参考価格)ほか。
brasserieknot.jp
(左)Falò Brewing(ファロ ブルーイング )/宮城
東日本大震災から復興を遂げた宮城県沿岸部山元町で、ビールの力で地域の魅力を発信すべく誕生したブルワリー。国内の有名ブルワリーやオーストラリアでも醸造に携わったオーナーが目ざすのは、地域の特産品や農産物も活用した確かな品質とユニークさをあわせもつ味づくりだ。開業は’25年、第一弾としてリリースされた「ツバメドラフト」はライトで軽快、毎日飲みたくなる。¥980(350㎖)
www.instagram.com/falobrewing
(右)Teenage Brewing(ティーンエイジ ブルーイング)/埼玉
夏は蛍も見られる都幾川が近い埼玉県ときがわ町は、都心から車や電車で約1時間。大自然の中にある醸造所兼タップルームは、かつての木材家具加工場を活用。音楽家から醸造家に転身したオーナーは、ビール造りを音楽になぞらえ、素材を音のようにかけ合わせ「心を動かす」味を目ざす。濃密なベリー感に、バルサミコ酢のさわやかな酸が溶け込んだサワーIPA「スペンタージュ」¥1,400(500㎖。参考価格)。
teenage.jp
(中)麦雑穀工房(ざっこくこうぼう)/埼玉
「畑から始まるビール造り」を標榜し、自家栽培や地元有機農家が育てる作物を使用。ワインでいうところの「ドメーヌ」的ブルワリーは、近年、有機農業でも注目を集める埼玉県小川町に。ビール粕を肥料として活用する循環農に取り組む一方、タップルームでは、ビールとともに地元食材を使ったフードも提供。「雑穀ヴァイツェン」は、自家栽培穀物の豊かな香りと風味が味わえる看板だ。¥700(350㎖)。
www.craft-beer.net
(左)Inkhorn Brewing(インクホーン ブルーイング )/東京
東京・目白駅からすぐの場所に5年前に誕生したマイクロブルワリー。オーナーは北米のクラフトビール文化に造詣が深く、国内のブルワリーで醸造指導などを務めた実力派だ。醸造工程の管理を徹底した緻密なビール造り、クリアな味わいに定評がある。目白通りに開かれたタップルームを併設。
(右)ミルクシェイクIPA「TROPICAL FUSION」¥1,200、
(左)ブラックIPA「慈悲心鳥」¥1,100(ともに355㎖)。
www.instagram.com/inkhorn_brewing/
(右)Passific Brewing(パシフィック ブルーイング )/神奈川
「海を越え、山を越え、ビールと旅するブルワリー」がコンセプト。「pacific(太平洋)」と「pass(峠)」をもじったブルワリーの名に、地元の茅ケ崎の海とオーナーがビール造りを学んだ志賀高原の山への思いが表れている。ビールの歴史やコンテクストを踏まえて醸すラガー、IPAが看板商品。茅ヶ崎駅前にビールとフードを楽しめる酒場「Pepown」も展開する。「Passific IPA」¥800(350㎖。参考価格)
www.instagram.com/passificbrewing/
(中)奈良醸造/奈良
奈良という歴史ある土地に根ざしながら、モダンなアプローチでビールを媒介にした新たな価値を提案。アーティスティックな缶のデザインにもその哲学が表れている。現代のライフスタイルに合わせた低アルコール商品などが話題に。写真のブロンドエール「REFLECT」各¥660(350㎖。参考価格)のほか、『風の森』で知られる酒蔵「油長酒造」とのコラボレーションで生まれた「UNDERWATER」なども。
narabrewing.com
(左)ひみつビール/三重
農業用の納屋を改修したブルワリーは、伊勢神宮から車で約30分。自社栽培の小麦や副原料も使用したビールは、蔵つきの酵母の使用、長時間の発酵などに特徴がある。くすりとしてしまうデザインやネーミングとは裏腹に、飲み心地と複雑味をあわせもつ味わい。
(右)パイナップルを使ったジューシーなダブルウィートエール「たのシーサー」¥1,100、(中)ライムIPA「LIME HACK」¥900(ともに350㎖)ほか。
himitsu-beer.myshopify.com
COLUMN
ビール好きには夢のよう! ブルワリー併設、1日2組限定ホテル
日本のトップワイナリー「98WINEs」の姉妹ブルワリー「98BEERs」に併設された1日2組限定、大人のためのホテル。醸造所を望むタップルームで、チェックインから18時までフリーフローでビールを楽しめる。ディナーのそば懐石は、「98」ブランドのワインとともに。
『STAY366』
山梨県甲州市塩山福生里462の1
☎︎0553・32・6603
1泊2食つき1名¥53,500~
撮影/宮濱祐美子 原田凌佑(キャリカーズトーキョー) スタイリスト/西森 萌 取材・原文/佐々木ケイ ※エクラ2026年6月号掲載