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【50代皮膚のできもの】年齢を重ねると増える”できもの” 。イボ・ほくろ…この”できもの”放っておいて大丈夫?
ほくろが大きくなってきたり、体にイボができたり…。アラフィー世代になるとなぜか増えるのが”できもの”。年齢を重ねるにつれ、できものができやすくなる理由とは?この”できもの”の正体は?治療法は?そんな疑問や悩みについて専門家の先生にお話しを伺いました。
50代から発症率が高くなる「帯状疱疹」の原因と予防法【小田ユイコ×友和クリニック院長 宇土 博先生対談】
50代から増える「帯状疱疹」とは?
まわりでちらほら耳にする帯状疱疹(たいじょうほうしん)。体や顔に水ぶくれをともなう赤い発疹が帯状に広がり、患部にはピリピリ、ズキズキ、チクチクと神経痛のような痛みが。ときに焼けるような痛みとなり、寝ることさえままならないこともあるといいます。
子供のころにかかった水ぼうそうのウイルスが大人になって活性化!
小田:私はこれまで帯状疱疹にかかったことはないのですが、今後かかる可能性はありますか?
宇土先生:残念ながら、日本人の大人の9割はかかる可能性があるので、小田さんも念頭に置いておいたほうがいいですよ。帯状疱疹は、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルス=水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルスが、大人になって再活性化し、水ぼうそうとは違った様相で現れる病気。9割の人は幼少期に水ぼうそう(水疱瘡)に罹患しているので、帯状疱疹になる可能性はほぼ誰にでもあるのです。
小田:私、自分が水ぼうそうになったかどうかの記憶がないのですが……。
宇土先生:私もありません。そういう方は多いのです。感染していても無症状のこともありますしね。
小田:それにしても、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、まだ体内にいるなんて。なんだか想像できないですね。
宇土先生:水ぼうそうのウイルスは極めて頭のいいウイルスで、隠れ上手。症状はおさまっても神経節という末梢神経の神経細胞が集まっているところにもぐりこみ、40年もジーッとしている。忍者みたいにね(笑)。
小田:なぜジーッとしているんですかね。
宇土先生:それは、隠れ家の主が大人になって弱るのを待っているんですよ。若いときに出て行っても主の免疫力が強くて繁殖できない。主が年齢を重ねて免疫力が下がったときが出番(笑)。神経節から出てバーッと繁殖し帯状疱疹になれば、近くにいる、まだ水ぼうそうにかかっていない乳幼児に移り住み、ウイルスは自分の一族を増やすことができる。そういう戦略なんです。ちなみに、帯状疱疹は大人から大人へは感染しません。また、発症から7~10日たつとかさぶたになるんですが、そうなれば乳幼児にも感染しません。
小田:面白いですね。言い方はヘンですけれど、ウイルスも頑張っている。
宇土先生:そう、そんな頭のいいウイルスに負けないよう、人間も対策を立てなければならない。
帯状疱疹にかかりやすい2大原因
「過労」と「糖尿病」
小田:それにしても、なぜ50代になると帯状疱疹にかかる確率が上がるのでしょうか。
宇土先生:免疫力低下の大きな原因に「過労」があります。仕事では責任のある役目を任されたり、専業主婦だった方も子育てが終わって働きに出たり。それも家事や親の介護をしながらのケースが多々。孫が生まれれば面倒もみたりと、疲労がたまりがちな世代なのです。春休みや夏休みに1週間孫を預かり、帰ったとたん帯状疱疹になるのもよくあるケース。帯状疱疹のなりやすさに男女差はありませんが、50代の場合過労になりやすい女性の方がかかりやすい傾向にあります。20代や30代でも過労が続けば帯状疱疹になります。
小田:そういえば、私のまわりでも肉体的にも精神的にも疲れがたまったときに帯状疱疹にかかっている方が多いですね。
宇土先生:もうひとつの原因は「糖尿病」。50代になると、甘いものを食べ続けるなど長年の糖質過多生活や運動不足がたたって糖尿病を発症する人が増えます。糖尿病になると明確に免疫力が落ち、帯状疱疹も発症しやすくなるのです。
神経に沿って広がるから「帯状」に発疹が現れる
小田:発疹が「帯状」に広がるのはなぜですか?
宇土先生:神経に沿って広がるからです。神経節に忍者のように潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスは、神経をつたって皮膚表面に出てきて帯状疱疹を引き起こします。この神経の伝った範囲が帯状に見えるのです。
小田:体や首、頭や顔と、帯状疱疹が現れる場所が人それぞれなのはなぜですか?
宇土先生:帯状疱疹が現れるのは、主に血流が滞っている場所です。たとえば頸椎を痛めている人は、首より上の血流が滞っているので、首、頭、顔に帯状疱疹が現れやすくなります。また腹部によく帯状疱疹ができるのは、運動不足でふだんおなかをあまり動かさず、血流が滞っているから。手足はよく動かすところなので、帯状疱疹が現れにくいんですよ。これは余談ですが、開腹手術をした人は、発症する場所を問わず帯状疱疹にかかるリスクが上がります。開腹手術はそれだけ免疫力を低下させるのです。
帯状疱疹かなと思ったら、すみやかに皮膚科を受診
小田:水痘帯状疱疹ウイルスはヘルペスだと聞きました。私はたまに口唇ヘルペスができるのですが、帯状疱疹になりやすいのでしょうか?
宇土先生:たしかにどちらもヘルペスウイルスですが、種類が違います。口唇ヘルペスがあるからといって、帯状疱疹にかかりやすいということはありません。口唇ヘルペスは神経を麻痺させるウイルス。チリッとすることはあるけれど痛みはそれほどでもない。そのかわり唇に麻酔のようなしびれがあったり、顔面神経麻痺を引き起こすことも。一方、水痘帯状疱疹ウイルスは、神経の「さや」を食べるウイルス。神経は刀のようにさやに覆われているのですが、水痘帯状疱疹ウイルスはこれを食べながら増殖。刀である神経がむき出しになるので、神経痛をともなうのです。
小田:なんだか怖いですね。帯状疱疹にかかったと思ったら、どうすればいいですか?
宇土先生:すみやかに皮膚科にいくことをおすすめします。帯状疱疹と診断されれば、抗ウイルス薬を処方され、1週間ほどで症状は治まっていきます。激しい痛みがあると、整形外科を受診する方がいるのですが、関節などだけを調べて発疹を見落とされ、抗ウイルス薬を処方されずに悪化してしまうことがまれにあります。
小田:帯状疱疹は一度かかったら、もうかからないのでしょうか?
宇土先生:いったん発病すると確かに帯状疱疹に対する免疫は上がるのですが、残念ながら数パーセントは再発。3回罹患したケースもあります。
小田:発疹や痛みを我慢して放っておくとどうなりますか?
宇土先生:気をつけなければいけないのは、人には痛みを記憶する性質があるということ。帯状疱疹を放っておいて痛みが続くと、帯状疱疹後神経痛という少々やっかいな状態に。神経の興奮状態が続き、痛みへの感度が高くなる「感作」という状態に陥り、脊髄や脳に痛みが記憶されてしまうのです。この帯状疱疹後神経痛に対して、西洋医学では治療薬がありません。
小田:帯状疱疹、あなどれないですね!
帯状疱疹の「予防法」と「ワクチン」
どんなに忙しくても「頑張りの限界は3ヵ月まで」と肝に命じる
小田:帯状疱疹は免疫力の低下で起こる病気だと教えていただきました。予防するためにはどうしたらいいのでしょうか。
宇土先生:免疫力を上げる方法は食事の改善や適度な運動、メンタルケアなどさまざまありますが、いちばん重要なのは「疲れをためない」こと。個人差がありますが、人間が耐えられる疲れには限界があります。普通の50代は、通常1ヵ月、長くて3ヵ月。それを超えて疲れるような生活が続くと、免疫力が大幅に低下します。帯状疱疹だけでなく、ほかの病気にかかるリスクも上がります。
小田:あー、わかるような気がします。私自身、忙しい状況が3ヵ月近くつづくと「もう限界」って体が悲鳴を上げるように。そういうときが長年、神経節にジッと潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが「今だ!」と腰を上げるのですね。
宇土先生:そう。私は長年産業医をやっていますが、3ヵ月を超えて免疫力を落とさず頑張り続けられる人はいない。スーパーマンみたいな人でも6ヵ月が限度です。人生は波乱万丈ですから、睡眠時間を削ってでも頑張らなければならないときもある。でも疲れたなと思ったら、素直に休む、楽をすることが大事なのです。
小田:心配事があったり、使命感にかられていたりすると、自分が疲れているのを忘れてしまうことってありますよね。
宇土先生:血圧が高くて交感神経優位、つまり興奮状態だと疲れに鈍感になります。「もうそろそろ休んで欲しい」という体からのメッセージが抑え込まれてしまうんです。ふだん血圧が130の人が170以上になっていたら要注意。それと、「長くて3ヵ月」の目安を覚えておく。自分では疲れているつもりはなくても、頑張り続ける状況が3ヵ月続いたら、そろそろ危ないなという危機感を持つこと。
小田:疲れをあまり感じていない自分に危機感を持ったほうがいいということですね。
宇土先生:家族や友人の「ちょっと無理しすぎなんじゃない?」の声に、耳を傾けることも大事。自分では見えなくなっていることも、周囲の人は客観的に見ていますからね。
22時には寝て、効率よく疲れを回復させる
宇土先生:あとね、忙しいときほど、ときどき目を閉じてみるといいですよ。目をカッと見開いていると、体の声が聞こえないんです。心静かに座って、目を閉じてごらんなさい。首や肩がだいぶ凝っているな、今日は早めに寝ようかな、と気づくものです。
小田:本当だ! ただ目を閉じただけなのに、自分の体に集中できる。
宇土先生:そう感じたらしめたもの。22時には床に就くようにしましょう。23時から午前1時は、24時間のうちで成長ホルモンがもっとも出る再生の時間。疲れを効率よく解消するのに、睡眠を利用しない手はありません。
小田:俗に「美肌のゴールデンタイム」と言われる時間帯ですね。
宇土先生:美肌にもいいし、免疫力アップにもいい。その日の疲れを翌朝までもちこさないですみます。そうして疲れをコントロールすることこそが、これからの人生を健康に渡っていく力になるのです。
小田:帯状疱疹予防ワクチンは接種しておいたほうがいいのでしょうか。
宇土先生:50代以上のかたは接種されたほうがいいと思います。ただし、日本人は世界でもワクチン接種が過多な傾向にあることは知っておいてほしいですね。ワクチン接種を重ねると自然免疫のキャパシティがなくなってしまう。ワクチン接種を受けていないほかの病気、たとえばがんなどに対抗する免疫力が低くなってしまう可能性があります。帯状疱疹にならないためにまず実行すべきは、「疲れのコントロール」だということを忘れないでくださいね。
帯状疱疹後神経痛には経絡治療で「気」を巡らせるのが有効
小田:帯状疱疹が消えたあとも痛みだけ続く、帯状疱疹後神経痛になってしまったら、どのような治療がありますか?
宇土先生:帯状疱疹後神経痛は難治性の神経痛で、#1でもお話したとおり西洋医学では有効な治療法がありません。そこで、私のクリニックでは東洋医学の経絡治療を取り入れ、押し棒でツボを刺激したり、鍼治療を行っています。
小田:経絡って「気」の通り道と言われますが、いまひとつピンとこなくて……。
宇土先生:小田さん、「気」の正体は「電気」です。生物電気といいますが、人間は食べ物のブドウ糖を燃やして電気を発電しているんです。
小田:え~っ!!「気」って電気の「気」だったんですか?
宇土先生:はい。人間はおよそ100Wの電気を発電して、0.4Vくらいの微弱電流が常に体を巡っている。それが体中の細胞を活性化させているんです。経絡は、いわば電気の回路。どこかで滞れば、その部分が不調に陥ります。帯状疱疹後神経痛が起こっている部分では「気」が滞っているんです。
小田:スゴイ! 私たちって、電気仕掛けだったんですね。しかも自家発電。でも、ツボ押しや鍼でどうして「気」が巡るようになるのですか?
宇土先生:ツボや鍼から施術している人の「気」、つまり電気が送り込まれ、よどみを流してくれるのです。よく電気治療って行いますよね。あれと同じです。自分でツボを押した場合も、押した指から自分の「気」が入ります。これは決して「気のせい」ではなく、れっきとした「電気」の働きなんです。
小田:「気」がめぐると、なぜ帯状疱疹後神経痛がなくなるのですか?
宇土先生:自然治癒力が上がり、ウイルスが食べてしまった神経の「さや」を再生していきます。すると、むき出しだった神経にカバーがかかり、痛みが引いていくのです。
小田:中国4000年の歴史、恐るべし! 経絡を発見した人は、人間が電気で動いているってわかっていたんですかね。
顔まわりの「気」の巡りをよくするツボ
緊張を解き、リラックスするツボ
50代がかかりやすい帯状疱疹への理解を深められたと同時に、これから年齢を重ねていく上で免疫力がいかに大事かを思い知った小田。宇土先生が教えて下さった「疲れのコントロールが人生を渡る力」を胸に、これからは自分の体が発しているSOSに耳を傾けようと。そして、定期的に心身を休めるサイクルを作り、できるだけ守っていこうと決めました。
宇土 博先生
小田ユイコ
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