【ヴァイオリニスト HIMARIさんインタビュー】「一世紀に一人の才能」と評される15歳、魂に響く音

今、世界で注目されているヴァイオリニストHIMARI。「国内外、40以上出場した賞はすべて1位」「10歳で、世界で一番むずかしい超名門校カーティス音楽院に合格」「ベルリン・フィルと共演」……。そんなすばらしい経歴はいったん忘れて、まずは聴いてみてほしい。出会えてよかったと思える、美しくも心を揺さぶる音。そんな15歳の彼女にインタビューが実現した。HIMARIさんを通して私たち成熟世代にとって"才能と芸術を支える"という、新しい愉しみを見つけたい。

HIMARI

「挑戦しないと始まらない」努力する天才の軌跡

HIMARI STORY

0歳(2011):東京生まれ
3歳(2014):ヴァイオリンを始める
6歳(2017):プロのオーケストラと共演
9歳(2021):第15回リビンスキ・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール史上最年少・特賞グランプリ(第1位を上回る賞)
10歳(2022):史上最年少でカーティス音楽院に合格
14歳(2025):英国 名門レーベル、デッカ・クラシックスと独占契約
      ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演ソリストを務める

HIMARIさん

’25年3月ドイツのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会でソリストを務めたときの写真。14歳のソリストは約100年ぶりの快挙だ。技術的に最高難度とされるヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第1番を見事に弾ききった。終演後大きな歓声が上がり、アンコールでは、技巧的なコリリアーノのレッド・ヴァイオリン・カプリースが演奏された。コンサートでの衣装は日本で誂(あつら)えたもので、赤はHIMARIさんのトレードカラー

人を幸せにできるヴァイオリニストに。

夏の来日に際して、都内でインタビューが実現。「コンクールは自分のために弾くから、あまり好きじゃない。コンサートは聴いてくれる人のために弾くから」と語るHIMARIさんの現在の声をお届け。

猛練習するのはあたりまえ。先にある“何か”を求めて

「構えているだけじゃ、少し不自然じゃない?」。そういって、HIMARIさんは何げなくヴァイオリンを奏ではじめた。撮影の間、スタジオ内にヴァイオリンの重厚な音色が響き渡った。難解な曲をも完璧な技術で弾きこなす姿は、まさに驚愕のひと言につきる。しかし、それだけではない。彼女が奏でる美しい音色には、聴く者の心を震わせる“何か”が潜んでいる。

現在HIMARIさんは、アメリカ・フィラデルフィアにあるカーティス音楽院で学んでいる。数多くの音楽家を輩出してきたこの名門音楽大学で、巨匠にして名伯楽として知られるアイダ・カヴァフィアン氏に師事。11歳での入学から4年、課題曲は常に30曲以上あり一日の練習は8時間以上、同級生の大半が18歳以上の中、音楽とひたすら真摯に向き合う日々だが、そんなことはここではあたりまえ、とHIMARIさんはさらりとかわす。

「日本にいたときは、練習室にこもって朝から晩までひとりで練習していたけれど、カーティスでは友だちと一緒に弾いたり、ほかの楽器のメンバーと演奏したりする機会も多いので楽しいです。常に何かゴールがあるので立ち止まっている暇もないですが、みんな一緒にがんばっている感じがいいなと。室内楽やオーケストラで演奏するときは、自分の音より、まずほかの人の音をちゃんと聴いて弾かなければうまくいかないですし、その点でもカーティスで勉強できてよかったと思います」

近年は、日本とアメリカを往復しながら、世界を舞台に最高峰のオーケストラとの共演が加速している。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、シカゴ交響楽団……。コンサートリストには錚々(そうそう)たる名前が連なる。そんな数々の大舞台でも、共演者たちの音にまず耳を傾ける──カーティスでの学びを礎に、ソリストとして堂々たる演奏で喝采を浴びているのだ。

「4年間で得たものは、本当に大きいです」。成長の実感と自信が、彼女の言葉と表情ににじむ。
「ヴァイオリンを弾いていないときは、ずっと音楽を聴いています。自分の演奏も聴きますし、自分が弾いている曲をほかの人が弾いている音源だとか。ただ自分の曲だけを聴いていると、飽きてきちゃって演奏がつまらなくなってしまうので、これ、次に弾きたいなとか考えながら、全然関係のない曲を選んだりもします」

あるとき、古い音源に「何これ、すっごくカッコいい」と思わず耳にとめたヴァイオリンの演奏があった。それは、奇しくも師であるアイダ先生によるものだった。さらには、ハイフェッツ、オイストラフといった伝説の巨匠たちの演奏も好んで聴くという。

「1900年代に録音された昔の人たちの演奏は、やっぱり今のそれとは別なんですよね。言葉でどう説明していいのかわからないのですが。ただ私は、そういう音が出せたらいいなと思う。まねしているわけでも、似せようとがんばっているわけでもありませんが、なにより自分がすばらしいと思っているので、繰り返し繰り返し聴いています」

HIMARIさん

歴史的、世界的な音楽家との心を通わす響き合い(ハーモニー)

この9月、世界に向けて初めてのアルバムがリリースされる。その名も『Debut』。トップを飾るのは、’25年3月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演で演奏されたヴィエニャフスキ作曲「ヴァイオリン協奏曲第1番」のライブ録音だ。

「ベルリン・フィルと一緒に弾いたヴィエニャフスキの音源が使えるなんて想像もしていなかったので、すごくうれしかったです。それならば、“オール・ポーランド”でまとめたいなと思いました。ポーランドといえばヴィエニャフスキとショパン。それからポーランド人ではないけれど、シベリウスの曲の中からポーランドの音楽であるマズルカを。自分の好きな曲を選んで、アイダ先生とも相談しながら決めていきました」

以前は「ベルリン・フィルやウィーン・フィルと共演できるヴァイオリニストになりたい」と語っていたHIMARIさん。夢のひとつだったベルリン・フィルとの共演もかなえた今、さらなる目標とは。

「レパートリーをたくさん増やして、世界中のすばらしいオーケストラや演奏家のかたがたと共演したいです。アメリカに留学して5年目になるので、アメリカのいろいろなオーケストラとも共演できたらいいですね。もちろん、ベルリン・フィルにも2度、3度と呼ばれる演奏家になれたらいいなと思っています」

才能と成長を静かに見守る新しい応援の形

かつての夢もマイルストーンのひとつ。「あまり過去は振り返らない」という。なぜなら、次から次へと新たな舞台が待っているから。9月には日本でロンドン交響楽団と共演し、12月には日本と台湾でツアーを開催。そして’27年4月には、初めてクラシックの殿堂であるカーネギーホールに登場する。ボストン交響楽団との共演、デビューに期待が高まる。その視線は前へ、前へ。驚くべき速度で一歩ずつ階段を駆け上っている。

また今年、ファンクラブとは一線を画す「HIMARI パトロネージュ・クラブ」が立ち上がった。欧米に根づくパトロネージュ(後援)文化を目ざしたものだ。才能を消費するのではなく、より高みを目ざして、支え、育てていく。

百年にひとりという才能。彼女が純粋に音楽を深められる時間を保つことができるよう、成熟世代の私たちこそ、静かに見守り、その成長をともに分かち合っていきたい。

HIMARI パトロネージュ・クラブ
欧米に根づいている、若き才能を社会が支える「パトロネージュ(後援)」の文化。HIMARIが成長する過程を静かに見守り、ともに分かち合うような形をここ「パトロネージュ・クラブ」では目ざし、華やかなファンクラブとは一線を画す。今年の募集は終了しているが、ドネーション(寄付)は受け付けている。
詳しくはhttp://himari-info.com/pat

Information

『Debut』
デッカ・クラシックス
¥3,300

『Debut』デッカ・クラシックス¥3,300
HIMARIの全世界デビュー・アルバム『Debut』が、9月25日(金)に発売決定。目玉は、’25年3月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演で演奏されたヴィエニャフスキ《ヴァイオリン協奏曲 第1番》のライヴ録音。そのほかにもハイフェッツとミルシテインによる編曲でショパンの《夜想曲》、名ヴァイオリニスト・作曲家ヴィエニャフスキによる《ファウスト》の主題による華麗なる幻想曲などを収録。

撮影/鍋島徳恭 取材・原文/河合映江 ※エクラ2026年10月号掲載

合わせて読みたい

【石田ゆり子さんインタビュー<前編>】もし自分が都知事だったらどうするか? 撮影を経験して生まれた心の変化
法政大学総長 ダイアナ・コーさん「人はそれぞれ独自のセンスと声をもつ存在。互いを認め合える学びの場から、社会を変える」【エクラ トップリーダーズvol.15】
【黒柳徹子×尾上右近 スペシャル対談<前編>】右近さんおすすめの“カレー”で徹子さんをおもてなし!
映画『Michael/マイケル』公開記念!? マイケル・ジャクソンのレコード【エクラ編集部員の偏愛名品図鑑 #47】
伝説のピアニスト・ブーニンさんの映画公開! 初日舞台挨拶へ【ウェブエクラ編集長シオヤの「あら、素敵☆ 手帖」#119】
【吉沢 亮さんインタビュー】力を抜いて、自然体のまま王になっていく

ranking

what's new

pick up

recommend

feature

recommend

人気のヘルスケア記事がWebエクラにお引越し! ウェルビーエクラSTART! eclat Gourmet&Voyage eclat Maison
売れ筋ランキング モードな薄底フォルムを大人仕様にアップデート エディター 坪田あさみさんコラボ 秋の新戦力に、ネックレスと、スカーフ 今が変えどき!秋の新戦力アイテム