【感性を磨く京都】今注目のギャラリーと2025年「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」

古都に息づく伝統と革新が交わる京都。キュレーター・長谷川祐子さんが注目するギャラリー「ACG Villa Kyoto」「ノナカ・ヒル京都」を紹介。また今年で13回目となる「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の見どころをまとめた。

建築と美術を同時に堪能できる「ACG Villa Kyoto」

大阪・桜ノ宮で’03年に開廊して以来、日本の現代美術を世界に向けて発信してきた「アートコートギャラリー」が’18年にビューイングルームとして京都に開設。代表・八木光恵さんは当初そのつもりはなかったが、物件を見てひと目惚れしたという。そう、こちらは、建築家・故藤井厚二氏が設計した数寄屋造の邸宅。藤井氏といえば、環境工学の考えに基づいた日本の住宅建築のパイオニアであり、京都・大山崎に建てた自邸「聴竹居」は重要文化財に指定されている。「これまではたくさんの海外のアートフェアに出展して日本のコンテンポラリーアートを紹介してきましたが、この場所なら海外からのゲストに、日本の美意識が語らずして伝わると思います」。通常は一般非公開で、紹介予約制だが、今年4月から一般公開日を設けた企画展も開催。その機会をお見逃しなく。

「家屋という生活に紐づいた場所で美を感じる。とても好きな場所です」──長谷川さん

メトロポリタン美術館にも作品が所蔵されている福本双紅のオブジェ。

世界各国の美術館・財団へも作品納入を行い、日本のアートを世界に発信。写真はメトロポリタン美術館にも作品が所蔵されている福本双紅のオブジェ。ガラス扉の向こうには近代日本庭園の先駆者・七代目小川治兵衛が最後に手がけた庭園が広がっている

床の間には、正延正俊のドローイングと福本双紅の磁器を組み合わせて。

「日本建築とコンテンポラリーアートはよく合います」と、八木さん。床の間には、正延正俊のドローイングと福本双紅の磁器を組み合わせて。そのほか、茶室や円窓越しに望む庭園を使った展示も見応えあり

柱や窓の木枠はすっきり見えるように面取りするなど、廊下ひとつとっても洗練美が息づく。浅葱漆喰の壁に立てかけているのは牡丹靖佳の作品 

柱や窓の木枠はすっきり見えるように面取りするなど、廊下ひとつとっても洗練美が息づく。浅葱漆喰の壁に立てかけているのは牡丹靖佳の作品

こちらは数寄屋建築の床の間や棚に映える小さな作品も多数

大阪の「アートコートギャラリー」は民間最大規模の空間を生かし、大型作品を中心に展示しているが、こちらは数寄屋建築の床の間や棚に映える小さな作品も多数

世界的に注目されるガラス作家・佐々木類の作品。

世界的に注目されるガラス作家・佐々木類の作品。ガラスに草花を入れて焼成し、記憶を閉じ込めている

ACG Villa Kyoto

Data
京都市左京区北白川小倉町50の10
通常は紹介予約制。4・5月の一般公開日は、4/8、4/22、5/13、5/27。人数制限あり。
入場料¥2,000。
お申し込みは、予約サイトhttps://www.artcourtgallery.com/kyoto/から。

LAで注目のギャラリーが初上陸「ノナカ・ヒル京都」

「ノナカ・ヒル」は、ノナカ・ヒル孝義さんとパートナーのロドニー・ノナカ・ヒルさんが’18年にロサンゼルスで開廊した、日本のアートを海外に紹介するギャラリーだ。近年は「アート・バーゼル」や「フリーズ」といった国際的なアートフェアにも参加するなど、高い評価を得ている。’24年10月には日本の拠点となるギャラリースペースが京都に誕生。’22年、京都で開催された『Art Collaboration Kyoto』では京都・古門前の古美術商兼ギャラリー「思文閣」と同じブースで出展したこともあり、以前から骨董やアンティーク、古美術を取り扱う店が多い古門前・新門前あたりは好きなエリアだったそう。こけら落としにはLAでも好評を博した今井麗の個展を開催。今後も京都のスペースでは、国内外の作家のさまざまな作品を扱い、企画展が行われる予定だ。

「個性的なギャラリーをまわって新しいものを見出すのも、京都ならではの楽しみ方」──長谷川さん

ホワイトキューブ(白い天井と白い壁の空間)のほか、2階には陶芸作品がなじむ古民家感を残した小部屋も

ホワイトキューブ(白い天井と白い壁の空間)のほか、2階には陶芸作品がなじむ古民家感を残した小部屋も

今年4/3まで開催されている本田健による木炭画と、尾花智子による陶器の彫刻的アレンジメントの展示。

今年4/3まで開催されていた本田健による木炭画と、尾花智子による陶器の彫刻的アレンジメントの展示。作品同士が共鳴しそうなアーティストを組み合わせた企画展も多く開催されている。4/12~5/24はWe Like Usと題した写真のグループ展を開催予定

庭を借景に尾花智子の作品を展示

落ち葉を敷き詰めた坪庭は展示スペースとして使用することも。このときは庭を借景に尾花智子の作品を展示

三角屋根や大きな梁など、天井に町家の意匠を感じる2階

100年以上前に建てられた町家をミニマルモダンにリノベーション。三角屋根や大きな梁など、天井に町家の意匠を感じる2階

京情緒あふれる石畳の路地の先に見えるガラス張りのホワイトキューブ。

京情緒あふれる石畳の路地の先に見えるガラス張りのホワイトキューブ。伝統と革新が融合する京都らしい光景

ノナカ・ヒル京都

Data
京都市東山区新門前通大和大路東入西之町201の4
☎070・1845・1313
11:00~18:00
定休日 日・月曜、祝日

京都のさまざまな場所が会場に!「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」

’13年より京都を舞台に開催されている日本最大規模を誇る国際的な写真祭。回を重ねるごとに好評を博し、写真祭に合わせて京都旅をブッキングする人も増えている。日本および海外の気鋭の作品や貴重な写真コレクションを鑑賞できることに加え、注目すべきは京都らしい会場選び。歴史的建造物や近代現代建築、ミュージアム、ギャラリーなどを使い、大胆かつ斬新に展示され、めぐる楽しさもひとしお。第13回となる’25年は「HUMANITY」をテーマに、両足院や京都文化博物館 別館など、12会場で開催。’20年には、京都と世界をつなぐプラットフォームとして常設スペース「DELTA/KY OTOGRAPHIE Permanent Space」通称DELTAが誕生。1階はカフェと写真に特化したギャラリー、2階はアーティストレジデンスとしても使用される宿泊施設になっている。

DELTAの宿泊施設。京都在住の和紙作家ハタノワタルの和紙がはられた壁に写真作品が飾られる

DELTAの宿泊施設。京都在住の和紙作家ハタノワタルの和紙がはられた壁に写真作品が飾られる

キッチンやリビングもあり、暮らすように滞在できる 

キッチンやリビングもあり、暮らすように滞在できる

出町桝形商店街沿いに立つDELTA

出町桝形商店街沿いに立つDELTA

【DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space】
京都市上京区桝形通寺町東入三栄町62
☎︎075・708・8727
水・木・日曜11:00~18:00(金・土曜は~21:00)
定休日 月・火曜

京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡)

’15年まで新聞の印刷を行っていた工場跡が舞台に。ビル3階分の吹き抜けで、広さは1000㎡もあるインダストリアルな巨大空間は唯一無二(下の写真1枚目は昨年の展示風景)。今年はフランス出身のアーティスト、JRの写真展(下の写真2枚目は作品)を開催。

「美術館だけでなく、アートを通して新たな街の魅力に触れてほしい」──長谷川さん

【感性を磨く京都】今注目のギャラリーと2025年「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」_1_16
KYOTOGRAPHIE 2024の展示の様子。Viviane Sassen「PHOSPHOR│発光体:アート&ファッション 1990–2023」Presented by DIOR
【感性を磨く京都】今注目のギャラリーと2025年「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」_1_17
The Chronicles of Kyoto, Close Up, Japan, 2024

Data
京都市中京区少将井町239

誉田屋源兵衛 竹院の間

創業280年余りの帯匠の大店町家。玄関で靴を脱いで進んだ先、格子天井や板張りの床が美しい竹院の間が会場に(下の写真1枚目は昨年の展示風景)。今回は、生まれ育った沖縄を拠点に沖縄の人々の写真を撮り続ける石川真生の作品(下の写真2枚目)を発表。

【感性を磨く京都】今注目のギャラリーと2025年「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」_1_18
KYOTOGRAPHIE 2024の展示の様子。Birdhead(鳥頭)「Welcome to Birdhead World Again, Kyoto 2024」Presented by CHANEL Nexus Hall
【感性を磨く京都】今注目のギャラリーと2025年「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」_1_19
© Mao Ishikawa

Data
京都市中京区烏帽子屋町489

会期は4/12~5/11
https://www.kyotographie.jp/

キュレーター、美術史家 長谷川祐子
世界各地でのビエンナーレのほか、フランスで開催された『ジャポニズム2018:深みへー日本の美意識を求めてー』など数々の国際展覧会の企画を担当。昨年の『森の芸術祭 晴れの国・岡山』ではアートディレクターに。今年3月まで金沢21世紀美術館館長を務め、現在は、京都大学経営管理大学院客員教授、国際文化会館プログラムディレクターを務める。
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