’25年6月から’26年5月までの一年間に刊行された文芸作品から、エクラ読者に読んでほしいと本音でおすすめできる本を選んだ「第9回文芸エクラ大賞」。今回は「外国文学賞」「家族エッセー賞」「ノンフィクション賞」「科学エッセー賞」の受賞作品を紹介。
《外国文学賞》価値観を揺さぶる
『暗黒の瞬間』
人は誰でも闇落ちする可能性が?
エリーザ・ホーフェン
浅井晶子/訳
東京創元社 ¥2,530
主人公は長いキャリアを誇るベルリンの弁護士。彼女に弁護士返上を決意させた事件を9つの連作短編として描いている。「行間からにじみ出るのは人に潜む底知れぬ闇。それでも人を信じようとする主人公の苦悩が胸に迫ってきた」(細貝)。
《家族エッセー賞》まっすぐな言葉が響く
『介護未満の父に起きたこと』
サポート方針は“あえてビジネスライク”
ジェーン・スー
新潮新書 ¥990
「連れ合いを失くした親との関係や距離感に悩む友人が多い。私ならどうする、どうしたい?と考えさせられた」(K野)。82歳の父が突然ひとり暮らしに。家事ができない父のケアに奔走した、ひとり娘の5年間の記録。
《ノンフィクション賞》他人事じゃない!
『人新世の「黙示録」』
世界の終わりは絵空事じゃないという警告
斎藤幸平
集英社 ¥1,870
「ガソリン、薬……あたりまえにあった物の供給が楽観視できない今、将来の方向性を早急に考えるべきと痛感」(山本)。気候崩壊の先には選民ファシズムや戦争が待っている!? それらを止める方策が提示された、気鋭の経済思想家の一冊。
《科学エッセー賞》知的好奇心を刺激
伝染病も自然災害もありうる今、読んでおくべき!?
コーディー・キャシディー
梶山あゆみ/訳
河出書房新社 ¥1,870
ロンドンに蔓延した黒死病、ポンペイの火山噴火など歴史上有名な“大ピンチ”にタイムスリップした場合の脱出法を紹介。「科学的知見に基づいた楽しいサバイバル術ばかり。うんちくもたまって得した気分に」(細貝)。
文芸エクラ大賞とは?
私たちは人生のさまざまなことを本から学び、本を身近な存在に感じてきた世代。エクラでは、そんな読者の皆さんに心からおすすめしたい一冊を届け、改めて読書の喜びと、本がもつ力を感じていただきたいという思いから、’18年に「文芸エクラ大賞」を創設。
選考対象は、’25年6月から’26年5月までの一年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者の心に切実に響き、「今こそ読んでほしい」と本音でおすすめできる本。エクラ書評班が厳選した、絶対に読んでほしい「大賞」をはじめ、ほかにも注目作や、書店の目利きによるイチ押しの本もご紹介。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!
▼4人の選者
文芸評論家 斎藤美奈子
エクラ本誌で「オトナの文藝部」を連載中。本や新聞、雑誌などで活躍。文学や社会への鋭い批評が支持されている。
書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。
書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。
書評担当編集 K野
女性誌で書評&作家インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。
撮影/大木慎太郎 スタイリスト/洲脇佑美 取材・原文/山本圭子 ※エクラ2026年9月号掲載