手にとってページをめくるだけで日常を忘れさせてくれる本。この一年間の、本の話題を総ざらい。文芸評論家・斎藤美奈子さんが世の中の動きとともに解説!
女性首相誕生の背景にも関係が!小説から見えてきた"ポピュリズム”
(右から)
『イン・ザ・メガチャーチ』
朝井リョウ
日本経済新聞出版 ¥2,200
『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
李 龍徳
河出文庫 ¥1,155
「今年2月の衆院選は高市首相の“推し活選挙”だったという印象。大衆の人気を得ることが第一というポピュリズムを感じましたね。本屋大賞受賞作『イン・ザ・メガチャーチ』を読むと“推し活も選挙も同じで権力をもつ人が仕組んでいる!?”と思わされる。6年前に出た本で予言書みたいと話題の『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』は日本初の女性首相が超ナショナリストという設定。これらを読むとポピュリズム政治の危うさに気づかされます」
まさに社会現象。映画を見た人は本を買い、聖地巡礼も”映画化”は相乗効果大!
(右上から時計まわり)
『国宝』上・下
吉田修一
朝日文庫 上・下各¥880
『新版 遠い山なみの光』
カズオ・イシグロ 小野寺健/訳
ハヤカワepi文庫 ¥1,485
『宝島』上・下
真藤順丈
講談社文庫 上¥924、下¥715
「歌舞伎の世界を描いた大ヒット映画『国宝』は吉田修一の小説が原作。復帰前の沖縄を舞台にした映画『宝島』の原作は真藤順丈の直木賞受賞作です。映画化に際し『国宝』はシンプルな内容にしている一方、『宝島』は原作に忠実。カンヌ国際映画祭に出品された『遠い山なみの光』もそうですが、映画と原作を比べると監督の意図がわかっておもしろい。映画を見た人も、改めて原作を読むと新しい発見があると思います」
ドラマ化も認知度を上げるきっかけに"ディスレクシア"を描く良書に注目が
(右から)
『うちの子は字が書けない発達性読み書き障害の息子がいます』
千葉リョウコ
ポプラ社 ¥1,540
『宙わたる教室』
伊与原新
文春文庫 ¥825
『アオハルスタンド~福島県立桜堂高校野球部の誓い~』
持地佑季子
集英社文庫 ¥847
「ディスレクシアとは字の読み書きに限定した困難がある、学習障がいのひとつ。40人クラスで3人ほどいるといわれ、ドラマ『愛の、がっこう。』や『宙わたる教室』で取り上げられ認知されるように。この障がいが原因で学業不振になる人や知らずに大人になった人が多いとわかったのは最近。ディスレクシアの高校球児の小説や息子が当事者の漫画家の本を読むと、専門家に判断してもらい、支援を受けることがいかに大事かよくわかります」
撮影/大木慎太郎 スタイリスト/洲脇佑美 取材・原文/山本圭子 ※エクラ2026年9月号掲載