社会的役割の変化や更年期の影響などで、不安や焦燥感が募る40、50代。「なんだかしんどい」と感じるのは、あなただけではありません。心の柔軟性を取り戻すヒントをお届けします。
「メンタルの不調」についてJマダム®に聞きました!
(Jマダムアンケート66人の回答より)
Q.日ごろからメンタルの不調を感じることはありますか?
Q.メンタル不調は40、50代になってから増えましたか?
Q.よく感じるメンタルの不調はなんですか?
(複数回答)
不安感 …30%
なんとなく気分が晴れない …29%
イライラ …16%
孤独感 …11%
自己嫌悪 …10%
その他 …4%
落ち込んだときこそ、メンタルをアップデートするチャンス!
アラフィーは心の曲がり角
人生の折り返し地点で生じる心の揺れは、自分らしい生き方を選び直すために必要なプロセス。精神科医の視点から「中年の危機」を紐解き、メンタルケアの心構えをアドバイス!
お話をうかがったかた
トミー●’78年生まれ。豊富な臨床経験と深い共感力をもとに、SNSで「心を軽くする言葉」を発信する人気ドクター。『精神科医Tomyが教える50代を上手に生きる言葉』(ダイヤモンド社)など、悩みに寄り添う著書も数多く出版。
最新刊『うつ未満。「大丈夫」と言えない日の相談室』(秀和システム新社)が発売中。
40 、50 代にとって心の揺れはごく自然なこと
子育てが一段落し、仕事では定年が視野に入ってくるエクラ世代。若いころに思い描いた理想と“今の自分”のギャップを目(ま)の当たりにして「このままでいいのか」と焦りを覚えることもあれば、更年期の不調にとまどいながら、親の老いに向き合わざるをえない現実も──。
こうした複数の要因が重なることで、50代は「中年の危機」と呼ばれる心の不調が生じやすいと考えられている。
「多くの役割を担う女性はストレスを抱えやすく、急激に変化するホルモンの影響を大きく受けます。さらに周囲と比較して劣等感を抱きやすい傾向もあり、中年の危機に陥るリスクがそもそも高いのです。心が乱れるのは“よくあること”」と語るのは、精神科医のTomy先生。
心の揺らぎは、ネガティブな要因だけでなく、子供の独立、夫や自分自身の昇進、新居への引っ越しといった、一見喜ばしいできごとによっても現れることがある。
「人生で起こる大きなできごとが、どれほどストレスになるかを数値化した『ライフイベント法』では、たとえうれしいできごとであっても、生活が大きく変わればストレスになるとされています。生活の変化が続くときは、意識的に休息を多くとりましょう。新しい環境に慣れていくと、脳はストレスと認識しなくなります。子供の巣立ちを機に落ち込んでしまう『空の巣症候群』も、時間が解決してくれます。心配しないで」
精神科には「病気とまではいえないけれど、心がしんどい状態」、いわば“うつ未満”の人がかなりの数訪れるという。そうした人は考えすぎることで生きづらさを感じたり、自分を追い込んだりして深みにハマってしまうケースが多い。
そして、ささいなきっかけから、「私の存在意義は?」「私だけ取り残されていく気がする」などとネガティブな考えが止まらなくなることも。この現象は、〝頭が暇になっている〟ときに起こりやすいのだとか。
「脳には、いいことより悪いことのほうが記憶に残り、注意が向きやすい性質があります。そして、ぼーっとしているときに、ネガティブなことを次々に拾ってしまうのです。『あ、負のループに入ってる』と気づくだけでも脳のモードが切り替わりますし、おいしいものを食べるなどして意識を別の方向へ向けることで、この反応は収まっていきます」
“心”の問題は“体”で解決するのが合理的
心の不調は、実は心で解決するのはむずかしい。確実で即効性が高いのは「体を癒す」方法。
「心の調子が悪くなるのは、だいたい体が疲れているとき。たっぷり睡眠をとって、まず体を元気にしてあげること。体調が整って気分が軽くなれば、ネガティブな思考に引っぱられにくくなる。一番健全で理想的な心の整え方だと思います」
そして、多くの悩みの根っこには「他人軸」があると、Tomy先生は指摘する。
「『他人からどう思われるか』『世間の正解は何か』という基準で人生を判断しているから、苦しくなるのです。大切なのは、自分がどうしたいか。自分軸で生きれば、たとえつまずいても糧(かて)にできるし、人生の充実感にもつながっていきますよ」
Jマダム®のお悩みに、Tomy先生が解答!
お悩み1
新しい職場になじめません。仕事を教えてくれる教育係の人がまったく優しさがなく、いつも馬鹿にした言い方をするので心が削られます。(54歳・会社員)
【回答】
優しくしてほしいなんて期待しないこと。「この人はこういう言い方しかできないんだ」と受け止めていれば、まともな対応をされたとき、ギャップに救われることも。新しい職場になじめないのは当然です。慣れてきたら、気の合う人が見つかってラクになりますよ。
お悩み2
先日、父が永眠しました。肉親を失うのは初めて。「もっとこうしてあげていれば」などといろいろな後悔がよぎり、大きな喪失感に襲われます。乗り越え方がわかりません……。(57歳・自営業)
【回答】
大切な人を亡くすと、どんなに心をつくしていたとしても必ず後悔するもの。無理に克服せず、日々を淡々と過ごしてください。お参りをしたり、心の中でお父さまに話しかけたりすることも、心を癒す大切な時間に。月日の流れとともに、喪失感はやわらいでいくはずです。
お悩み3
事務のパートを続けてきましたが、子供たちの巣立ちが近づくにつれ、これから先の働き方を考えるように。やりがいのある仕事をしたいけれど、年齢や能力への不安もある。モヤモヤします。(51歳・パート)
【回答】
年齢や能力のことはいったんおき、これまでどおりパートの仕事を続けながら、自分ができるやりがいのある仕事とは何か、探ってみて。はっきりしないまま見切り発車でパートをやめてしまうと、その環境の変化がストレスになり、自己肯定感が下がってしまうことも。
お悩み4
病院の送迎や買い物などのちょっとした用事でも、実家へ行くと、話が通じない親に対してイライラしたり、心の奥にじわっと疲れが残ります。(55歳・会社員)
【回答】
イライラすると相手にも伝わって悪循環に。自分の心を保つために“距離をとる”“真剣に聞かない”ことも必要です。「なぜわかってくれないの?」ではなく「宇宙人なんだわ」くらいの気持ちで。まだそれなりに元気な親なら、疲れない程度の介入でもよさそうです。
お悩み5
ふとしたときに、過去のイヤな思い出、しんどかった記憶を反芻(はんすう)して不安になることがあります。これは年齢のせい?(54歳・自由業)
【回答】
年齢のせいではなく、頭が暇になっている典型例です。暇を持て余した脳が「考え事をしよう!」と、答えが出ない問題、つまり過去の後悔や未来の不安などを拾い集めて反芻するのです。体を動かしたり、テレビを見たりして、“今”に集中することで解消されます。
お悩み6
最近、もの忘れや眠りの浅さが気になり、「少し前まではこんなことなかったのに」と不安になります。病気ではないけれど「以前と違う」と感じたとき、いつ専門家に相談しにいくべきか、目安を知りたいです。(50歳・自営業)
【回答】
「生活に支障があるか」が受診の目安です。多少のもの忘れなら様子見で大丈夫ですが、眠れない日が続いて仕事のミスが増えた、運転中にボーッとして危ない目にあったなどの場合ですね。そこまでではなくても、専門家に話を聞いてもらって安心できそうなら相談を。
あなたのモヤモヤの傾向は?心のクセを治す、タイプ別処方箋
陥りがちなモヤモヤをタイプで分類し、それぞれの対処法をTomy先生が指南。自分の現状や傾向、心のクセを知って、気分を持ち上げる糸口に。
まずは心のタイプをCheck!
以下の20項目のうち、自分に当てはまると思うものをチェックしてください。一番チェックが多かったアルファベット記号A~Dを見てください。
A
□朝起きた瞬間から体が重く、憂うつになる
□SNSで楽しげな投稿を見ると自分の人生がみじめに思える
□パッとしない現状は、自分の努力不足のせいだと思う
□ふとした瞬間に涙が出そうになることがある
□以前は楽しかった趣味やエンタメ鑑賞がつまらなくなった
B
□LINEの返信が遅いと「変なこといった?」と不安になる
□苦手な人のことばかり考えてしまう
□服装や行動がまわりとズレていると焦ってしまう
□相手のためを思ってやったのに、感謝されないと腹が立つ
□「あなたはどう思う?」と聞かれて返答できないことが多い
C
□組織のリーダーや管理職の立場になった経験がある
□部屋が散らかっていると、気になってしまう
□途中で投げ出すくらいなら、やらないほうがマシ!
□本当の自分を誰にも見せていない気がして孤独を感じる
□何事も、結局自分ばかり動いていると感じる
D
□「もうおしまい」「すべてムダ」のように投げやりになりがち
□お金や健康など、現実の問題で頭がいっぱい
□「白か黒か」「0か100か」、はっきりさせないと気がすまない
□過去の失敗を思い出しては後悔し、落ち込むことが多い
□国際情勢や日本の未来が気がかりで、眠れない日がある
Aが多かったあなた:「無力感」タイプ
→心身の疲労がピークかも。まずはゆっくり休息を
心も体も疲れきって、無力感と劣等感に押しつぶされそうな状態。自己嫌悪やネガティブ思考の堂々めぐりを強制的にストップして、ゆっくり体を休めてエネルギーを充電させることを優先して。何もしない日が続くと自己肯定感が下がっていくので、少し回復したら、趣味や好きなことに費やす時間を増やしていくと◎。
Bが多かったあなた:「他人軸」タイプ
→他人への期待を手放し、自分軸を大事にして
「嫌われたくない」「認められたい」「間違いたくない」といった思考が苦しみの元凶。一度、思いきって手放してみて。他人に期待せず、世間の“正解”にもとらわれずにいれば、モヤモヤの多くは消えていくはず。どんな場面でも「自分はどうしたいか」という視点をもち、自分軸を育てることに意識を向けて。
Cが多かったあなた:「完璧主義」タイプ
→「やらないこと」を決め、何事も100%を求めないこと
責任感の強さゆえ、あれこれ抱え込んで苦しくなるタイプ。「やってくれる」あなたにまわりは期待し、さらに負担がのしかかる悪循環に。優先順位をつけて「やらないこと」を決め、“そこそこ”でOKと割りきりを。背負う荷物が軽くなればイライラやモヤモヤは確実に減り、押しつけられない環境に変わっていく。
Dが多かったあなた:「視野狭窄」タイプ
→いったん、情報を遮断して目の前のことをていねいに
どうにもならない現実を前に、視野が狭くなっている状態。そこにSNSやネット上の有象無象の情報が流れ込むと、不安や混乱が増し、思考が偏ってしまうことも。いったん、情報から距離をとり、自分で変えられないことはわきにおいて、目の前の営みをていねいにこなしていって。その積み重ねが、心を整える助けに。
心をほぐす10の方法
波立つ心を整えるのは、日々の習慣とささやかなセルフケア。がんばりすぎてクタクタの人でも、今日から取り入れられる方法を厳選!
1.太陽を味方にする
太陽の光には、メンタルを整えるメリットがたくさんある。
「日光を浴びると、安心感や前向きさにかかわるホルモンのセロトニンの分泌が活発になります。特に朝の光は体内時計をリセットし、夜に自然と眠くなるリズムに整えてくれます。熟睡できれば、メンタルの土台が安定する好循環に。さらに、日光浴により皮膚で生成されるビタミンDは骨の健康も支えます。むやみに紫外線を避けすぎず、上手に味方につけましょう」。
2.運動は最強の薬に
運動は、うつ病や認知症の治療にも役立てられている。意欲や快感にかかわるドーパミンやセロトニンを活性化させ、ストレスホルモンを抑制するほか、記憶や学習にかかわる脳の働きを支える作用も。
「運動中は意識が体に向くため、悩みや心配事にフォーカスしにくくなります。そして、ヨガなどで呼吸を深めれば、副交感神経が優位になって心が落ち着きます。心がつらいときは、体を動かしてみる。その発想が大切です」。
3.笑いスイッチを増やす
“笑う”行為も日光浴や運動と同様に、気分を上げる脳内ホルモンを分泌し、メンタルにプラスに働く。
「お笑いの動画を見たり、おしゃべりすると自然に笑顔になれる友人に会ったり、自分が笑顔になれるスイッチをいくつももっているのが理想です。モヤモヤを蹴散らすイメージで、思いっきり笑うと、体のこわばりも心の緊張もほぐれます。ただし、しんどいときに『笑顔にならなきゃ』とがんばるのは逆効果。心から笑うことが大切です」。
4.“今、この瞬間”に集中する
ネガティブな考えがめぐるのは、頭が暇になっているサイン。“今、この瞬間”に集中すれば、モヤモヤは薄れていく。
「例えば、考え事をしながら洗い物をするのではなく、手元の動きにしっかり注意を向けてていねいに作業する。それでもモヤモヤが浮かんでしまうときは、スーパーに買い物に行ったり、ティータイムにしたり、別の行動に切り替えてみて。環境や動作が変われば、自然とそちらに意識が向き、心の渦が鎮まっていきます」。
5.創作に没頭する
編み物をしたり絵を描いたり、創作は「できた」「進んだ」という小さな達成感の連続。自分の感性をかたちにする行為そのものが癒しになり、自己肯定感が高まって前向きになれる。
「『手仕事は心を整える』といわれるように、作業に集中することで雑念が減り、不安が一時的に遠のくという、マインドフルネスに近い効果も得られます。作品を贈って誰かに喜ばれるなど、人とのつながりが生まれることで、さらにメンタルにいい影響が広がります」。
6.悩みを書き出して“セルフ傾聴”する
「なんかしんどい」というモヤモヤを放っておくと、不安やストレスはどんどん増幅してしまう。今どんな状況で、自分はどう感じているかを書き出すことで、モヤモヤの輪郭が少しずつ見えてくる。
「書くことは、感情をまるごと受け止める行為。自分の話を自分で聞く“セルフ傾聴”にもつながり、心を鎮める効果があります。からまった思考がほどけ、悩みを客観視できるので、冷静に対処法を工夫することもできるように」。
7.不要なものを手放す
持ち物が多いと、判断の回数が増えたり視覚のノイズになったりして、知らないうちにエネルギーを消耗してしまう。不要なものを手放すだけで、脳や心の負担を減らせる。
「行っていないジムなども、地味にストレスになります。月に1度くらい、ワードローブや生活全体を見直し、違和感のあるものや不要なものは手放しましょう。常に自分にフィットするものだけに囲まれていれば、悩みが生まれにくい環境をつくれます」。
8.寝る時間と起きる時間を固定する
休日でも夜更かしや朝寝坊をせず、毎日なるべく決まった時間に寝起きすることで、ホルモンの分泌や免疫機能を調整するサーカディアンリズムが整う。その結果、自律神経のバランスが乱れにくくなり、イライラや不安、だるさが軽減されやすい。
「サーカディアンリズムの安定は、睡眠の質の向上にもつながり、心の安定に直結します。まずは起きる時間だけでも固定し、毎朝必ず太陽の光を浴びるように心がけましょう」。
9.「あのころ」を味わう
かつて親しんだもの、例えば好きだった音楽、何度も見た映画やドラマなどをじっくり味わう時間は、心の癒しにつながる。いい思い出と結びついているものなら、なお効果的。
「よく聞いていた歌をカラオケで熱唱したり、なじみの店に行ったり、なんでもいいと思います。悩みがなかったころを思い出して、心がゆるんでいくでしょう。ささやかな現実逃避ですね。心がしんどいときほど、こうしたホッとする時間が助けになります」。
10.“好き”で喜ばれることを探す
自分のためだけに生きていると、ふと疲れてしまったり、どこか虚しさを覚えたりするもの。そんなときこそ、自分の好きなことや得意なことを通じて、誰かの役に立てないか模索してみよう。
「たったひと言の『ありがとう』で、疲れが吹きとんだり、驚くほど回復できたりしますよね。でも自己肯定感を上げることが目的になると、かえってしんどくなってしまうことも。“自分のやりたいこと”で誰かに喜んでもらえるのがポイントです」。
波を越えた人に聞く「心の回復リスト」
荒天をくぐりぬけて本当のしなやかさを手に入れた人は、心の扱いに長(た)けている。自分を幸せにするために大切にすること、気持ちをゆるめる手立てとは。
俳優・南 果歩さん
私の人生は、私だけのもの。自分を喜ばせることを後回しにしない
小さな選択を大切にして気持ちを上げていく
2年前に、“人生のリスタート”ととらえる還暦を迎えた南果歩さん。乳がん、うつ病、離婚……50代で直面した大波を越えて知ったのは、「どんなにつらいことがあっても、人はまた笑えるようになる」ということ。
「どうしようもなく苦しかったら、私は逃げていいと思っています。一時的にでも、自分の居場所を変えるのです。私自身、心が壊れかけたとき、前向きな選択としてアメリカに渡り、人生をやり直すきっかけを得ました。環境や生活が変わると、思考回路は確実に変わります。広い世界や新しい価値観を知ることで、自分の存在や悩みがちっぽけに思えてくる。この作用は、心の回復にとても大きいと感じています」
朝起きたら家じゅうの窓を開けて空気を入れ替え、太陽に向かって大きく伸びをする。病と向き合ったときから続けている、大事な習慣だ。
「朝一番に、日光を浴びるのは本当に気持ちがいい。眠れない夜が続いたときも、朝は必ず起きて、お日さまを浴びて一日をスタートさせていました。そうすることで少しずつリズムが整って、前向きになれたのです」
健全な体に、健やかな精神が宿る──。身をもって体感したこの真理を、今もセルフケアに生かしている。
「メンタルが落ちたときは、とにかく体を動かします。心が弱っているとき、心に直接アプローチしてもあまり効き目がない。体で引っぱってバランスをとるイメージです」
日ごろから「自分にストレスをかけないこと」を大切にしているという南さん。多くの人とかかわる仕事柄、人間関係が悩みのタネになりそうだが、「万人に好かれようと思っていないから大丈夫」と、キッパリ。
「世の中には、私を好きでいてくれる人、よく思わない人、そして無関心な人が同じくらい存在していると思っています。年齢を重ねてそう考えられるようになって、気持ちがぐっとラクになりました。苦手な人が登場しても、『あら、こんなにわかりやすい嘘をつくのね』とか(笑)、人間観察をして楽しんでいます」
仕事以外の時間は、あえてルーティンを決めず、日々流動的。その時々の気分を大切にして行動することが、ご機嫌でいる秘訣だ。
「食べるものも使う器も、洋服もバッグも、今日何をするかも、すべてその日の気分に合った“好き”を選びます。そうすると、気持ちがぐんぐん上がっていく。人生は小さな選択の積み重ね。自分を喜ばせることを後回しにしたくないのです」
もともと、人と比べずに生きてきたタイプでもある。「今がすべて」と、若いころの自分とさえ比べない。ピンときたものには迷わずトライし、自分らしさの核を磨き上げてきた。
「私の人生は、私の価値観でしか生きられないので。人を羨んだり過去を振り返る時間があるなら、感性を深めたいなと。多方面の友人に刺激をもらいながら、食事やライブ、美術鑑賞、スキー、バンド、ダンス……喜びを共有して、心を健やかに保っていきたいですね。気が多いのも、案外悪くないんじゃないかしら」
南 果歩さんの「私の回復リスト」
□体を動かし、鍛える
「コロナ禍を機に始めた筋トレ。トレーニング後の爽快感は格別です。体力がつき、あと一歩をあきらめなくなりました」
□気が向いたときに楽しめる趣味をもつ
「俳句、ワイン、編み物など、ときどき参加している会がいろいろあります。自分のペースで楽しめ、心も豊かに」
□ペットと戯れる
「3匹のワンコが大きな癒し。本能で生きる犬たちの姿から、人間がいかに複雑に考えすぎているか気づかされます」
□音楽のライブを堪能する
「生で聞く歌のパワーは絶大。最近はMISIAさん、玉置浩二さん、久保田利伸さんのライブへ。めちゃくちゃしびれました!」
みなみ かほ●’64年生まれ。国内外のテレビや映画、舞台で幅広く活躍。ピンクリボン活動や、被災地を中心にした読み聞かせボラ
ンティアも行っている。
最新エッセー『還暦スマイル』(小学館)は、エクラ世代の背中を押す金言が満載。
スポーツレポーター・ 益子直美さん
心は弱いままでもいい。正しい知識を支えに、どう整えるか
どん底まで落ち込んだから新しい自分に変われた
'80~’90年代にバレーボール界を牽引した活躍は言わずもがな。現在は「監督が怒ってはいけない大会」の代表理事などを務め、スポーツ指導の改革に取り組んでいる益子直美さん。意外なことに、「現役時代からメンタルは弱々」なのだという。
「10年ほど前、大学バレーの監督をしていましたが、指導法に行き詰まってしまって。自分の未熟さに打ちひしがれ、一気にメンタルが落ちてパニック障害に。やがて心房細動を発症しました。この病気はストレスが再発のリスクになる。これを機に弱い自分をなんとかしたいと、メンタルケアの勉強を始めたんです」
心を強くするために始めた学びは、気づきの連続。益子さんは、「知識が心を支えてくれる」と痛感した。
「一番大きかったのは、心は強い弱いは関係なく、どう整えて安定させるかが重要と知ったこと。ずっと引け目だった弱さを肯定されたようで、すごく救われました」
アンガーマネジメントの資格を取るなど、その後も知識を積み上げ、心の整え方や時代に合ったスポーツ指導の方法を探っていった。学びを通じて自分自身を冷静に見つめ直し、もうひとつ気づいたことがある。
「私たちの世代は、年齢を重ねたぶんだけキャリアもプライドもあって、まわりからは『できて当然』と思われる。だから無意識に自分でハードルを上げてしまっているんですよね。監督時代につまづいたとき、誰にも教えを請えなかったのは、無知をさらしたくなかったから。自分を大きく見せようとしたことが、自分を苦しめていたんです」
どん底まで落ち込み、病気で「先の時間」と対峙したことが、変わるチャンスになったと振り返る。
「人生は強い衝撃があったときこそ行動できるし、ムダなプライドを捨てることができる。今はもう、ハードルを下げまくっています(笑)」
夫婦で住まいを湘南へ移して10年以上になる。海や山に囲まれて暮らす日々が、心の安定を支えている。
「大好き!」という沖縄を訪れて羽を伸ばしたり、高校時代のバレー部の同期と“豪華客船の旅”を計画したり。忙しい毎日の中に組み込む非日常が、モチベーションと活力に。
「この5月で還暦になります。40代のころから友人と毎月1万円ずつ積み立てをして、60歳になったら一気に使って“ちょっといい旅行”をしようと決めていて。60歳からは毎月2万円にして65歳を目標に、その次は70歳を目ざして。お互い病気を経験しているので、先に楽しみをおいておくことが、元気で過ごすためのおまじないみたいなものですね」
そして、心を潤す意外な“推し”の存在も。ライトノベル『宝石商リチャード氏の謎鑑定』のリチャードだ。益子さんの声がはずむ。
「アニメや漫画もあるけれど、私は断然オーディブル派。リチャードが話す日本語がほれぼれするほど美しいんです。言葉選び、穏やかなトーン……こんなふうに話したいと思わせてくれる憧れの人。声を聞くだけで癒され、心がまるくなります」
益子直美さんの「私の回復リスト」
□自然や季節を感じる
「庭の木々や花を眺めると心がやわらぎます。庭に椅子を出して自家製ハーブティーを飲みながらひと息つく時間が好き」
□沖縄で解放的になる
「沖縄は自分をさらけ出して、パワーチャージできる場所。ファッションも少し大胆にして、非日常を楽しみます」
□明るい色の服を着る
「ピンクやオレンジなどの明るい色の服を着ると、気分が晴れやかに。年齢を重ねた自分に“華”もプラスできます」
□オーディブルで推しの声を聞く
「目が疲れないオーディブルは最高! 心が疲れた日は、寝る前にリチャードの声を聞いて癒されてから眠ります」
ますこ なおみ●’66年生まれ。バレーボールの全日本代表として活躍し、現役引退後はタレントに転身。現在は、「監督が怒ってはいけない大会」を主宰するほか、公益財団法人日本スポーツ協会の副会長も務め、講演活動にも精力的。
取材・原文/熊坂麻美 イラスト/金子なぎさ ※エクラ2026年6月号掲載