二宮和也さんらが日本映画を談義。ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク現地レポ

10月27日、第39回東京国際映画祭の提携企画として、グローバル・ラグジュアリー・グループのケリングと映画祭が提携したイベント、ケリング「ウーマン・イン・モーション」トークがTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて開催されました。本イベントには歌手・俳優の二宮和也さん、アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ館長兼プレジデント、アカデミー・コレクション統括責任者のエイミー・ホンマさん、そして映画『国宝』(2025)の企画・プロデュースを手がけた映画プロデューサーの村田千恵子さんが登壇。日本映画にフォーカスしながら、さまざまな側面からトップランナーたちが意見を交わしました。

エイミー・ホンマ 二宮和也 村田千恵子 是枝裕和 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

左より村田千恵子さん、二宮和也さん、エイミー・ホンマさん、是枝裕和さん

2015年にカンヌ国際映画祭とのパートナーシップで始まった本プログラムは、映画界で活躍する女性の功績に光を当てる活動からスタート。現在ではジェンダーや文化的背景、人種などの多様性を尊重し、よりインクルーシブな環境を目指す国際的プログラムへと発展。日本では2017年よりケリング「ウーマン・イン・モーション」トークが開催され、これまでにも多彩な業界関係者が登壇してきました。

エイミー・ホンマ 二宮和也 村田千恵子 是枝裕和 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

今回は「日本映画の現在地と未来、映画文化を支える多様性」をテーマに、エイミー・ホンマさん、二宮さん、村田さんが登壇。是枝裕和監督による開会宣言から華やかに幕開けした、セッションの模様をお届けします。

contents

海外から見た日本作品

若い監督たちの躍進により注目度が上昇

エイミー・ホンマ 二宮和也 村田千恵子 是枝裕和 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

まず是枝監督の挨拶では、近年の世界における日本映画の立ち位置の変化について、「ここ数年、映画祭や自分の映画の公開キャンペーンで海外に行くと『すごく今、日本映画が面白いよね』という声をよく耳にするようになりました」と実感を込めて言及。これは10年前にはなかった現象であり、「濱口竜介監督、深田晃司監督をはじめ、40代、さらには30代、20代の若い監督たちが海外へ作品を持って出て行き、認知されてきた積み重ね。若い世代の努力によって、日本映画への注目度が上がっています」と、次世代の躍進を惜しみなく称えました。
そして、国内におけるアート系映画を取り巻く状況、制作現場の労働環境についても取り上げ、「映画業界の外の人たちとも連携を取りながら環境改善をしていくことが、より良い作品を作っていく上でとても重要になってきているなと感じています」と締めくくると、ゲストたちが登場。映画ジャーナリストの立田敦子さんがファシリエーターを務めるなか、トークがスタートしました。

カンヌ国際映画祭で、リアルにウケた『8番出口』

エイミー・ホンマ ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

ロサンゼルスにあるアカデミー・ミュージアムの館長を務めるエイミー・ホンマさんは、世界的な視点から日本映画への評価について説明。日系アメリカ人としてのルーツを持ち、かねてより日本文化に深い造詣を持つエイミーさん。館内にあるフィルム上映ができる映画館で黒澤明監督の作品を特集したこと、企画展として開催している『崖の上のポニョ展』に触れました。
「黒澤作品は東京からフィルムを借りたのですが、全ての上映回が満席でした。たくさんの若い世代、フィルムメーカーが観たいと思っているのです。そして私は宮崎駿作品の熱心なファンでして、スタジオジブリとコラボレーションできたことを光栄に思っています。手描き原画や貴重な資料を展示し、グローバルコミュニティに対してどのように作品を作られていくのか、その過程を紹介しています」

主演映画『8番出口』(2025)が昨年のカンヌ国際映画祭で大盛況を収めた二宮さんも、海外の観客からのリアクションを振り返ります。
「カンヌは本当に映画好きな方が集まる場所なので、肌に合わないと途中で席を立たれることも多いと聞いていて……。でも上映が終わって照明がついた時、そこにはたくさんの観客がいらして、この作品を『面白かった』と賛同してもらえたことが嬉しかったです。他作品のために来られていた、日本の俳優の方々にも『良かったよ』と言ってもらえて、本当にホッとしましたね(笑)」と国境を超えて作品が届いたことへの歓びを噛み締めていました。

日本映画らしさとは?

村田千恵子 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

トークは、海外に向けた作品づくりにおいて何が“日本らしさ”となるのか、という本質的な問いへと広がっていきます。

村田さんは、『国宝』のアカデミー賞キャンペーンなどで世界を奔走した際に、現地での反応から気づくこともあったといいます。
「現地の映画関係者やアカデミー会員の方々に観ていただく中で、メイクや衣装、美術、そして俳優陣も含め、職人の技術の高さ(クラフトマンシップ)がものすごく評価されました」。

当時は現地で大谷翔平選手が爆発的な人気に。「『日本から来た』と言うとすぐに『ショーヘイ・オータニ』と言われるような状況でした(笑)。大谷選手も長い訓練に裏打ちされた評価ですが、私たちの映画における緻密なクラフトマンシップもどこか重なる部分があり、魅力として受け止められたのかもしれません」と語り、クラフトマンシップこそが、海外から見える“日本らしさ”なのかもしれないと感じたそう。

二宮和也  ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

一方、表現者として長年作品に向き合ってきた二宮さんは独自の視点から“日本らしさ”を紐解きます。
「日本作品は、すごくミニマムな空間や展開の表現が得意なのではないかと思っています」と回答。「感情や情景を表す“オノマトペ”に象徴されるように、抽象的なものに対する表現の手数がすごく多い国ですよね。そういった点は、非常に日本らしくて得意とする部分だと感じています」と持論を展開し、会場の共感を誘っていました。

多様性と映画

エイミー・ホンマ  ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

「多様性(ダイバーシティ)」をテーマに掲げる本イベントらしく、映画館での鑑賞体験や配信プラットフォームの普及といった「映画の楽しみ方の多様化」についても深い議論が交わされました。

2021年にロサンゼルスにオープンしたアカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズは、展示や上映、教育プログラムを通じて映画の歴史と作り手の仕事に光を当てる世界最大級の施設。グローバルな拠点を統括するエイミーさんは、異なる文化の作品と通じ合うために、架け橋としての“映画館”の重要性を強調しました。
「映画館では人種、ジェンダー、年齢、育った環境、多様な環境からやってきた人が一堂に同じ体験をする。知らない人たちと集まってみるという共同体験が、他者への共感への一歩になります」。
続けて、「私は日系アメリカ人であり、ユダヤ系アメリカ人の女性でもあります。映画の歴史を語る上で、複数の観点から見ると、より文化への理解、他者への共感を育むことができる。自分自身も多様性のあるバックグラウンドを持つことを誇りに思います」とルーツが他者への理解の向上につながることを、自らを例に。

劇場と配信、それぞれの良さがある

二宮和也 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

劇場体験ならではの価値について問われた二宮さんは、「性別も年齢も、職種も違う人たちが映画という一つの共通項だけで暗闇の空間に集まる。これってエンタメ以外ではなかなか考えられない、魅力的な体験ですよね」と語ります。

「観終わった後にみんなでご飯を食べながら『何が面白かったか』『なぜ自分には合わなかったのか』を語り合えること自体が娯楽の醍醐味だと思うんです。万人に受ける作品だけでなく、それぞれが尖ったものを作っていくことも必要なのだと感じます」と、多様な作品が存在することの重要性を伝えました。

村田さんも「映画館で誰かと一緒に観て感覚や感情を学び合う体験」と「世界数十カ国へ同時に一気に届き、個人の“好き”を深掘りできる配信」という双方の強みに言及。
「昔は片方の選択肢しかなかったことを考えると、作り手にとっても可能性が広がる非常に面白い時代になったと感じています」と、多様化するメディア環境への期待を明かしました。

映画界で働く人たちの課題

是枝裕和 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

後半では映画業界が抱える労働環境や制作体制の課題といったリアルなテーマにも踏み込んでいきます。
冒頭のスピーチで是枝監督は、インディペンデントの作り手を支えてきたミニシアターやアートハウスの減少に触れ、「映画館を愛する作り手たちとともに、どうやって多様な映画文化を守っていくのかを考えていきたいです」とメッセージを投げかけました。
しかし一方で、現場の働く環境には着実で明るい変化の兆しも。労働環境の改善を目指す、映画適正化機構による基準運用や、東宝撮影所内の保育施設整備など、女性が結婚や出産を経ても離職せずに働き続けられる環境整備が進みつつあります。

二宮さんも「僕自身が働いている現場でも、女性スタッフの割合は明らかに増えていますね」と実感を込めてコメント。
「女性のプロデューサーやスタッフの方は細やかなコミュニケーション能力が高く、役者の顔色の変化にも気づいてケアしてくださるんです。役者は『やれるか』と聞かれると無理してでも『やります』と言ってしまう職業なので、安心して働ける環境を整えてもらえるのは本当にありがたいですね」と、現場のリアルな声と感謝を伝えました。

村田さんは、「10年後には、女性に限らず誰もが、子育てや毎日の生活の中でゆとりを持ちながら無理なくものづくりを続けられる制度や環境が当たり前になっていてほしいですね」と展望を語り、映画業界のさらなる発展と誰もが輝ける環境づくりへの願いも込めて。

女性リーダーとして目指すもの

村田千恵子 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク 東京国際映画祭

また、女性のエグゼクティブとして活躍するふたりには、リーダーとして心がけていることを質問。
エイミーさんは、「美術館を率いることができるのは、とても光栄なことです。さまざまな決断を下し、力を持つ立場として、他の女性に目を配りたいと思っています。その力を自分が独占せず、トップダウンではなく分かち合うことが大事。若い世代にとってロールモデルになれたらと思っています」と、新しいリーダー像を提言。

MYRIAGON STUDIO プロデュース事業部の執行役員でもある村田さんは、プロデューサーとして「才能ある皆さんが、ベストパフォーマンスをできる環境を作ること」を自身の課題に。「この人はこうしたら輝くとそれぞれ見極め、きちんとその場を提供できるようにするのが一番大事なことかなと、個人的には思っています」と続けました。

そして最後にエイミーさんへ、これからの日本映画に期待することを尋ねると「日本発の物語が、北米にどのように届くかを楽しみにしています。ミュージアムではまだ日本映画の表層に触れただけなので、もっと深めていきたいですね。日本映画がどんなものであったのか、今後どう育っているのか。是非クリエイターの方にもお越しいただき、語っていただきたいです」と締めくくりました。

公式サイト

文/横溝桃子

合わせて読みたい

【向井理さんスペシャルインタビュー】運命の引き合わせ? ”ある意味、劇薬な作品”でMRを演じる
【織田裕二さんインタビュー<前編>】ジジイにはシワが似合う! カッコ悪いほうがおもしろい
【石田ゆり子さんインタビュー<前編>】もし自分が都知事だったらどうするか? 撮影を経験して生まれた心の変化
【ヴァイオリニスト HIMARIさんインタビュー】「一世紀に一人の才能」と評される15歳、魂に響く音

ranking

what's new

pick up

recommend

feature

recommend

人気のヘルスケア記事がWebエクラにお引越し! ウェルビーエクラSTART! eclat Gourmet&Voyage eclat Maison
【50代 ニット】累計400枚売れ!C.T.plage×エクラの人気タートルニット「着回し6コーデ」 売れ筋ランキング 50代のための美コートから人気ニット、ふわもこ小物まで E by éclat 大人が華やぐ新作NEWS! 冬のリュクスな主役服