「大好きなパンツに、小物を自由にミックスするのがマイスタイル」と話す櫛部美佐子さん。パンツはベーシックなアイテムだからこそ、時代や自分の変化に合わせて更新しているそう。気負わずしなやかにおしゃれを楽しむ、彼女の哲学とは。
今日の自分の装いがいいなと思えたら、気持ちも前を向くんです
張り感のある構築的なパンツに、シアー素材のトップスを合わせた大人のモノトーンスタイル。「ワイドめのパンツが好きなので、トップスはコンパクトなものや、胸もとがあいたデザインを選びます。最近年齢とともに体型がふっくらしてきたので、顔まわりをすっきり見せると全身がきれいにまとまるというのも理由です。そうすると、着こなしに効いてくるのが存在感のあるネックレス。今日は、Vネックのトップスにホアキン・べラオのものを」。足もとは、ヌーディなマノロ ブラニクのミュールでレディな抜け感を演出して。
ニット¥35,200・パンツ¥79,200/アンビラン その他の小物/櫛部さん私物
現在ディレクションを手がけているブランド「アンビラン」のパンツは、櫛部さんも私物で愛用中。「手前のパンツは、体の線を拾わないようにバイアス裁ちしています。どれも、大人が心地よくはけるように、上質な素材選びにもこだわりがあります」。
パンツ〈手前から〉¥49,500・¥69,300・¥68,200/アンビラン
「ジュエリー類は、スタメンがありつつ、そこにその日の気分で足し引きしていく感じ」。黒のハットは、アメリカやカナダに住む人々"アーミッシュ" がつくったもの。国や年代、ラグジュアリーブランドからクラフトまで、さまざまなエッセンスをシームレスにつけこなすスタイルに、櫛部さんの美意識がにじむ。小物/すべて櫛部さん私物
なぜかわからないけれど好き。ピュアな気持ちがおしゃれの起点
手持ちのボトムの9割を占めるほど、パンツ好きだという櫛部さん。理由を聞くと「なぜだかわからないけれど、昔から大好きなの」とはにかむ。「自分の着こなしに、パンツは絶対欠かせない。だからこそ、こだわりもかなり強い(笑)。体のラインを拾わない、ほどよくワイドなシルエットが私の定番です。身長が高いほうではないので、全身のバランスをとるためのディテールも重要。例えば、フロントにタックが入って立体感があるとか、わたり幅がしっかりあるとか、自分の中のルールがいくつかあるんです」。
パンツを軸に、ジュエリーやヴィンテージアクセサリー、時計などを自由にミックスするのが櫛部さんのスタイルだ。「30歳の節目に買ったカルティエのトリニティリングや、旅先で買った思い出のアクセサリーなど、その日の気分でミックスします。年を重ねると、服を着るだけでぱっと決まる、ということがむずかしくなるので、小物のギミックも借りて」
年齢を重ねると、これまで好きで着ていたものが似合わないと悩む大人も多い。
「そんなときは、とにかくいろんな服を試着してみる。そしたら、今の自分に似合う服が絶対に見つかるはず。私も、好きなものを大切にしつつ、アイテムはアップデートするようにしています。でも、最終的に自分が素敵って思えたらいいんですよ。今日の着こなし、なんか失敗しちゃったなって思う日は、早く家に帰りたいと思いませんか(笑)。でも、今日の自分いいな、と思えたら、気持ちも一日前を向く。自分の好きなものをまとうって、そういうパワーがあると思います」
くしべ みさこ●数々のブランドでデザイナー、ディレクターとして活躍。現在は、ファッションブランド「アンビラン」と「オーレム」のディレクションを手がける。
撮影/鏑木 穣(SIGNO) ※エクラ2026年7・8月合併号掲載