小説紹介インフルエンサー 紙上健吾さんがエクラ世代に推したい「耳読書」の楽しみ方は?

紙の本、電子書籍に次ぐ読書コンテンツとして今注目されているのが、本の朗読を聴くオーディオブック。若い世代に熱く支持されている小説紹介インフルエンサー・紙上健吾さんもオーディオブック愛用者。彼が実感する「耳読書」の魅力と、ふだん使いにするためのヒントとは。

「気分によって速度を調整。すき間時間や作業中に小説の世界に入っています」

ショート動画で紹介した本は大ヒット!
小説紹介インフルエンサー 紙上健吾さん

小説紹介インフルエンサー 紙上健吾さん

苦手意識があったジャンルの本をオーディオブックで読んでみたら

紙上さんはSNSや動画で小説を紹介するインフルエンサー。筒井康隆著『残像に口紅を』やダニエル・キイス著『アルジャーノンに花束を』が彼の紹介で大きく売り上げを伸ばすなど、ここ数年の読書界に新風を吹き込んでいる存在だ。

「今は紙+電子書籍で月に15~20冊読み、オーディブルで月に2冊ほど聴いています。既読の本から試しましたが最初からすんなり入れましたし、朗読の速度を変えられるのがとても便利だなと思いました。ナレーターの朗読はややゆっくりめで、僕はだいたい2倍速で聴いていますが、周囲に聞くと1.5倍速くらいが多いようです。

耳読書を始めて気づいたのは、文字で読むのはちょっと苦手なジャンル、僕の場合は架空の歴史小説やファンタジーを聴くとはかどるということ。声優さんの声が想像力を補ってくれて、物語の世界に没入できるからかなと。そういう意味では、ちょっと映像コンテンツに近い感じもしています」

紙上さんが耳読書をするのは家事のときやジムで運動しているとき、移動中などさまざま。

「洗濯ものをたたんだり、食器を洗ったりしながら小説を聴いていますね。いつのまにか作業がはかどっているのでなんだかうれしくなります。運動中もそうですが、耳読書は無心で何かをやっているときと相性がいい。すき間時間に聴くことも多いので、細切れの読書になりがちですが、積み重ねていけば最後のページまでたどりつける。そのときの達成感が大きくて、また聴きたくなるんです」

作品数が多いだけでなく聴き放題プランもあり、選べる本は選りどりみどりのオーディオブック。半面「どう選んだらいいかわからない」という初心者の声もあるよう。

「アプリ内のランキングを参考にするのもおすすめです。ランキングは多くの人の意見が反映されたものなので、僕もチェックしています。エクラ読者のかただったら読み逃していた文豪の名作──芥川龍之介や太宰治のものを聴くのもよさそう。学生時代に教科書で読んで好きだった話もいいですね。

聴き放題のメリットのひとつは、昔挫折した本にチャレンジするのが怖くないということ。僕にも経験がありますが、紙で読んでイマイチ乗れなかったものが、耳からだと意外といけたりするんです。声には登場人物の年齢や性格など、たくさんの情報が含まれているからかもしれませんね」

読了の達成感は紙でも音でも同じ

声という要素が加わって、読書に新たな可能性を感じさせるオーディオブック。それを推す意味について、紙上さんはこんなふうに考えている。

「TikTokやインスタグラムなど、最近はインスタント的に楽しむコンテンツが増えています。そんな中で読書はある程度の時間を使うもの。さらに紙や電子書籍の場合はページをめくるなどちょっとした手間も必要で、それゆえ得られるよさもありますが、耳読書だとその手間も軽減できる。

読了の達成感を得られるという意味では、どんな読み方でも同じなんです。現代社会を生きていると時間の流れがどんどん速くなっているように感じますが、読書はだからこそ大事にしたいじっくり型のエンタメ。それをもっと気軽に楽しむためにも、オーディオブックはとてもいい方法だと思っています」

紙上健吾さんおすすめのオーディオブック

『月の立つ林で』青山美智子 

青山美智子『 月の立つ林で 』  書影

制作:MediaDo
ナレーター:川﨑芽衣子、松本章太郎

「人生の正解について考えさせられました」。

『ツキない話』というポッドキャストを聴いていた人々の悩みと新たな一歩を描いた連作短編集。最終章には驚きと静かな感動があり、耳に余韻が。

『三千円の使いかた』 原田ひ香

『 三千円の使いかた 』 原田ひ香

制作:中央公論新社
ナレーター: 御園理帆

「初心者にはこういう楽しく聴ける小説がいいのでは」。

御厨家の4人の女(祖母、母、娘ふたり)のお金の貯め方や使い方を通して個々の人生を描いた小説。クスっと笑いながら考えさせられる。

『本を守ろうとする猫の話』 夏川草介

『 本を守ろうとする猫の話 』 夏川草介

制作:Audible Studios
ナレーター:櫻井慎也

高校生の林太郎は古書店主の祖父とふたり暮らし。祖父が突然亡くなると不思議なトラネコが現れて……。本がもつ意味を真摯に問うファンタジー。

「人気作家夏川さんの作品の中でも特に好き」

小説紹介インフルエンサー 紙上健吾さん
紙上健吾さん
小説紹介インフルエンサー
紙上健吾さん
小説紹介インフルエンサー

かみじょう けんご●’98年生まれ。’20年秋に小説に関する動画をTikTokに投稿。以来読んでおもしろかった本を既刊・新刊を問わずSNSで紹介。総フォロワー数110万人以上。

撮影/メグミ(紙上さん) 早川歩夢(書影) 取材・原文/山本圭子 ※エクラ2026年7・8月合併号掲載

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