さまざまなクリエイションが集まる文化都市・東京。その最先端アートシーンを一望できる年に一度の「アートウィーク東京(以下、AWT)」が今年も開催。その楽しさと魅力を、AWTディレクターの蜷川敦子さん、アンバサダーの鈴木京香さんに直撃! 自身もコレクターである鈴木さんに、アートを買うこと、集めることについて伺った。
アートを買うこと、集めること
対談が行われたのは、蜷川敦子さんのギャラリー「Take Ninagawa」。マン・レイ作品を中心に貴重なコレクションが並んでいた
アートを買うことはその作品の“番”をすること!?
──鈴木さんはコレクターでもありますが、アートを観る目は、“買う”を意識すると変わりますか?
鈴木 プライベートな場所に置くとか、ここに飾りたいと思って見るようになると、見方が変わってくると思います。ただ、自宅だと掛ける場所がむずかしいですね。作品によっては日光に当ててはいけないのですが、インテリアを考えればここに置きたいと思ってしまったり。だから短期間で楽しんで他の作品に替えるなどの衣替え的なことはよくしています。
最初は保管方法もわからないし、インテリアとしてここに置きたいということばかり考えていましたが、ギャラリーで、絵を掛ける環境についてや、保管の仕方などを教えていただけたのは大きいです。アドバイスに従い、明るさを測る機械を買いましたもの。
蜷川 すごくまじめに向き合っていらっしゃる……責任感がお強いですね。
鈴木 おかしいでしょう。誰にも頼まれていないのに(笑)。でも愛着がある作品だからこそ、いずれはどなたかに譲っていかなければと思うようになり、そのときにコンディションが悪くなってるようではダメだわ、と。今は私がこの絵を楽しませてもらえているのだから、そのかわりにちゃんと番をするんだという気持ちがあります。
鈴木京香さんが’22年に継承した、建築家・吉阪隆正の名作住宅「ヴィラ・クゥクゥ」。内部にはご自身が集めたアート作品の一部が飾られている
作品収集に意味をもたせるか、それとも自由に楽しむか
蜷川 東京にはアートラバーが多い印象があり、美術館に行くかたもとても多い。ただ、自分の生活や人生とアートとの距離は、まだ少し遠いのかなと思います。例えば作品を所有するとか、美術館にドネーションするなどのかかわり方をする人は、欧米と比較すれば非常に少ないかもしれない。だから京香さんが真摯に作品と向き合っているのをうかがい、感動しました。コレクションを社会的に捉えていらっしゃる。
鈴木 自分でも不思議なんですけれど、何度か購入の機会を経て、次第にコレクションに意味をもたせたくなったんです。好きなものだけ集めればいいと思うんですが、例えば女性アーティストの作品をもうちょっと増やしたいなというように、なんとなく“純粋に欲しいもの”とは違う作品を探すときがあって……自分でも何がそうさせるのかわからないのですけど。でも先ほどマン・レイの作品を観ていたとき、「いいな」と思ったらそれだけでいいと思ったんです。アートを集めることは“趣味”ですから。趣味として思いきり楽しめばいい、自由でいいんだ。って改めて。
蜷川 あらかじめ道筋をつけないというのも、かっこいいですよね。「いい」と思って買うことは、作品に対しての最高のコミットメントです。そうやって気に入って買ったものがいくつか集まったとき、自分でも気づいていなかった共通点が見えてきたりして、それが楽しい。コレクションの醍醐味だと思います。
鈴木 そうですね。いいなと思い始めたアーティストが、好きな画家のかつての仲間だったとわかって、「だから惹かれたのかも?」といううれしい驚きを感じたり。発見に自分の好みを教えられるっていうことなのかな。アートは人生を楽しくしたり世界を広げてくれるものですから。アンバサダーとしてはもちろんですが、アート好き代表として、今年もAWTをたっぷり楽しませていただこうと思っています。
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“自由な気持ちで探していくと
知らなかった魅力的な作品に出会えたりするんです”
(鈴木京香さん)
撮影/伊藤彰紀(aosora) ヘア&メイク/中野明海 スタイリスト/伊藤美佐季 取材・文/大輪俊江(あをぐみ) ※エクラ2026年12月号掲載