さまざまなクリエイションが集まる文化都市・東京。その最先端アートシーンを一望できる年に一度の「アートウィーク東京(以下、AWT)」が今年も開催。その楽しさと魅力を、AWTディレクターの蜷川敦子さん、アンバサダーの鈴木京香さんに直撃!
AWTは、行きたい場所を自分でキュレーションする特別な機会
メイン会場をもたず、都内に点在する美術館やギャラリーを結んで開催される分散型イベントAWT。コロナ禍の’21年にソフトローンチされ、翌年からは現在に近いかたちに。今年で5回目を迎え、年々注目度は増している。
共同創設者でディレクターの蜷川敦子さんは、個々に優れた活動を続ける各施設をつなげることで、東京のアートシーンをよりアクティブにしたいとの思いから、このイベントを立ち上げた。そんなAWTを初期から応援しているのが、アンバサダーの鈴木京香さん。ふたりのお話は、初回からの思い出にはじまり、アートを買うこと、集めることにも広がった。
“Man Ray,” installation view, Take Ninagawa,Tokyo, 2026. Courtesy Take Ninagawa,Tokyo. Photo by Kei Okano.
対談が行われたのは、蜷川敦子さんのギャラリー「Take Ninagawa」。マン・レイ作品を中心に貴重なコレクションが並んでいた
──’21年のAWT実現のために、まず手がけたのはどんなことでしたか?
蜷川 「AWT BUS」の考案です。何よりもまず、東京のアートシーンをひとつのまとまりとして見せたいと思っていました。でも東京はすごく広いし、どうひとつにまとめるかと考えた時、美術館やギャラリーをつなぐシャトルバスを出そう、と思いついたんです。
鈴木 バスは便利なことはもちろんですが、「どの路線が効率的か」とか「あそこに行くにはどのバス?」と考えるところからワクワクしますよね。その時間からすでにAWTが始まる気がしています。
──’26年のAWTは、どんな楽しみ方がおすすめでしょうか?
蜷川 今年一番変わったのは特別展「AWT FOCUS」です。これまではひとつの会場で毎回ひとりのキュレーターに展覧会をつくっていただいてきましたが、今年は多様な視点を入れたいと思い、10組のキュレーターが監修する10の展覧会に。参加ギャラリーがキュレーターと一緒に個別の展覧会を実現する形式にしました。ひとりのキュレーターでは拾いきれなかった、美術史の端にあるようなものも拾っていけるのでは、と期待しています。
鈴木 去年は大倉集古館での「AWT FOCUS」で、とても豊かな時間を過ごさせていただきました。今年はそれが10軒違う個性のある場所でなされるとなると、また別の期待が生まれます。でも10軒に分散されてしまうと、大きなムーブメントとして街の人に伝わるのか……少し気になります。
蜷川 AWTは、イベントとしての成功だけでなく、“学ぶ機会”であることにも力を入れています。会場が分散していると、行きたい場所を自分でキュレーションしながらルートを決めて回ることになる。それがコンテンポラリーアートの考え方にもとても近いんです。決まった作品をいわれたように観るのではない鑑賞のあり方も提案したかったという意図はありますね。
鈴木 なるほど。スケジュールに余裕がなくて1、2カ所しか回れないとなれば、じっくり考えますものね。初めて行くギャラリーにもこういう機会なら足を運びやすいですし。私も今年は「AWT FOCUS」参加ギャラリーの中で、行ったことのないところから攻めてみようかしら。私自身、最初はギャラリーに行くことに緊張感がありましたが、長く通ううちに、先々のかたとお友だちのように話をさせていただけるようになり、ずいぶん世界が広がりました。新しい世界への扉があるって、幸せなことですね。
蜷川 AWTがそういう出会いをつくる存在になればいいなと思っています。
Courtesy Art Week Tokyo
大倉集古館で行われた昨年の「AWT FOCUS」。「リアルとは?」のテーマで、多様な表現を通じ「リアル」を探る機会となった
鈴木 毎年おなじみになりましたが、「AWT BAR」もいい機会ですね。いろいろなアートを観てきたあとには、やはり人と話したくなるものですから。
蜷川 「AWT BAR」は、作品とは違う視点での出会いも意識してつくりました。アーティストが考案したカクテルからその思考を知り、作品にも興味を持って展覧会まで足を運んでいただけたらと。また設計は毎年若手の建築家にお願いしていて、そのサポートの意味もあります。
(対談後編へ続く)
撮影/伊藤彰紀(aosora) ヘア&メイク/中野明海 スタイリスト/伊藤美佐季 取材・文/大輪俊江(あをぐみ) ※エクラ2026年12月号掲載