体にさまざまな“不具合”が現れ始める40代以降。病院に行くほどではないけれど、体が、心が、今までとなんとなく違う。そんな不調や不安を抱えるエクラ世代に、ぜひ手にとってほしい書籍『大人のご自愛 漢方養生』が発売に。漢方薬剤師・漢方ライフクリエーターとして30年以上漢方に携わってきた著者の樫出恒代さんにインタビュー。
人気連載が書籍化!『大人のご自愛 漢方養生』
「おとなのご自愛 漢方養生」著者・樫出恒代さん
“アンチ漢方”の樫出さんが漢方に魅せられるまで
『大人のご自愛 漢方養生』は、OurAgeで10年にわたり続いた連載。今年2026年2月からWebエクラに転載され、人気を博している。そんな好評連載が、待望の書籍化となった。
本を開くと、樫出さんのふわりとやわらかな語り口に包み込まれる。読み進めるほどに、「悩んでいるのは私だけじゃないんだ」という安心感と、漢方と養生への興味がムクムクと湧いてくる。
加えて、この本で特徴的なのは、漢方というと真っ先に出てくる「気・血・水(き・けつ・すい)」や五臓など、難しい言葉ばかりの“お勉強モード”から始まっていないこと。とにかく、やさしい。“「だめでもいいじゃん」。これも漢方養生”。目次のこんな一文にも、人柄がにじんでいる。
パート1は、漢方と養生とは? の入門編。パート2では、「冷え」「更年期太り」「落ち込み」といった大人世代の代表的なお悩みから「老眼」や「尿漏れ」に至るまで、こんな悩みにも効くの!?と驚く漢方養生の知恵が不調別でまとめられており、それぞれの症状におすすめの漢方薬が紹介されている。パート3は、樫出さんが作った「漢方体質チェック」と、体質やストレスを自分で知ることができる「腹診」の方法を解説。ご本人によるイラストが、また愛らしく、分かりやすい。
漢方に興味があるものの、難しそう……とためらっている人、複合的な症状に悩み、何から始めたらいいか分からないという人の背中をそっと押してくれる1冊だ。
こんなに愛にあふれた、やさしい漢方本を書いた樫出恒代さんはいったいどんな方なのか。お話を伺ってきた。
樫出さんの実家は新潟で薬局を営んでおり、母親は以前から漢方に積極的に取り組んでいたという。が、若い頃の樫出さん自身は、実は“アンチ漢方”だった。
「漢方なんて古くさい、具合が悪くなったらすぐ抑えられる化学物質って素晴らしいな、と思っていたんです(笑)。例えば頭痛だって『あの薬を飲めばすぐ痛みが取れる、治らなかったら倍飲めばいい』なんて思ってました」
そして「実家の薬局なんか継ぐもんか」という気持ちを抱きつつも薬学部に進学。都内の外資系製薬メーカーに就職した。
「免疫抑制剤などに関する学術部署にいました。でも、なんだか違うなって」
自分しかできない仕事をしたい――。そんな思いが生まれるとともに、多忙なライフスタイルによるものか、体調をくずしてしまう。頭痛や肩こりをはじめ、子宮内膜症、パニック症。症状を抑えようと薬を服用すれば、今度は胃痛に襲われるという負のループに。
「結局、薬を飲んでも一時のまやかしみたいなもので根本は治ってはいないんだな、と。このままでは私は、ずっと薬漬けになるかもという思いも。では本当に“治す”ってなんだろう?と考え始めたんです」
こうして、“症状が治まったから終わり”ではなく、その先も考えて、根本から不調の原因を整える漢方に開眼する。
「もちろん西洋医学は、投薬や手術をすることでその人が人生が変わるような素晴らしいものです。かたや漢方は、“病気”を治すのではなく“病人”を治すことをモットーにしている医学。私は自分の体調がきっかけで学び始めましたが、実際に漢方に変えていくことで、好循環が起きました」
ホリスティックに体と心を整えて自然治癒力を上げ、不調が出にくい体をつくる。そんな“高め安定”を目指せる漢方にすっかり魅せられて、現在に至る。
50代が気力と体力を取り戻すヒントは「ワクワク」
樫出さんは、東京の「女性ライフクリニック銀座」の漢方外来、実家である新潟での漢方カウンセリング、また各地で精力的に行っているセミナーやイベントなどで、エクラ世代と接することも多いという。
「更年期世代は、仕事や家事をしながら親の介護問題なども重なり、人生が急激に複雑化していく年齢です。つまり、これまで以上に気力や体力が必要。同時に、子どもの巣立ちなど、いろいろなものを手放すタイミングでもあります。ですが、手放すのにもエネルギーが必要なため、また疲れてしまう場合が。そういう意味でも、ベースとなる気力と体力を挙げていくことはとても大切です」
そのために、私たちが今すぐできることを尋ねてみた。
「自分と向き合うこと、ですね。例えば私は、漢方カウンセリングで『いま最も辛い症状は何ですか?』と尋ねるんです。すると皆さんいろいろお話してくれるんですが、それと同時に『いまいちばんワクワクや幸せを感じることは?』と質問すると『分からない』という方が非常に多くて。
実はカウンセリングは、目の前にいる私ではなく、自分自身と向き合ってもらう時間。私の質問で『そういえば私、旅行に行きたかった』と思い出す人がいたとします。そんな思いだけでもワクワクという気力につながるんでしょうね、顔つきが変わり、にこやかになるんです。私は、その人を見ながら『この人にはこういう漢方がいいな』と考えて、もうちょっと元気にならなくちゃね!と背中を押す。自分の思いに気付き、一歩踏み出す。それを後押しできるのも、漢方なんです。
まずは自分が、何でワクワクするかを考える。そこから始めてみてください」
自身の体験、そして樫出さんのもとにカウンセリングに訪れた人の具体的なお悩みや症状なども交え、食やツボといった養生の知恵も盛り込んだ「おとなのご自愛 漢方養生」。仕事に家事に奮闘しながら、裏にはたくさんのストレスを抱えているであろうエクラ世代に、ぜひ日々の暮らしの“お守り”として役立ててほしい。
『大人のご自愛 漢方養生』
漢方薬剤師・漢方ライフクリエーターとして30年以上漢方に携わってきた樫出恒代さんが、10年にわたりつづってきたエッセイから、人気テーマを厳選し、まとめた1冊。1760円(税込)/集英社
目次(抜粋)
・「漢方薬は効かない」と思っている方に知ってほしいこと
・緊張しやすい人に伝えたい、3つの知恵
・忘れっぽいにも、役立つ漢方があります!
・夜中に目が覚めてしまう、その原因は?
・食後にぱたっと寝てしまう、それ「氣絶病」です
・頭痛持ちさんに知ってほしいこと
・明け方に足がつる悩みに、三つ星の養生を
かしで ひさよ●Kaon漢方アカデミー主宰、 漢方カウンセリングルームKaon、漢方くすりのヒロヤ代表。新潟薬科大学薬学部卒業。
一人ひとりの心と身体に丁寧に向き合う独自メソッド〈バイタルフットヒーリング〉を取り入れた漢方カウンセリングを実践。東京・築地、新潟を拠点とするほか、「女性ライフクリニック銀座」にて漢方外来を担当している。また、漢方の魅力を伝える人材育成にも力を注ぎ、東京、京都、新潟など各地での漢方アカデミー開講や漢方フェスを通じて普及活動を展開。「一家にひとり漢方アドバイザーを」という想いのもと、漢方を日常に生かし、自分らしく心地よく生きる力を届けている。
取材・文/原田千裕