「最近、まぶたが重い」「目が開けづらくなった」「以前より眠たそうに見える」。そんな目元の変化を年齢のせいと考えていませんか? 実はその症状は、40代以降に増える「眼瞼下垂(がんけんかすい)」のサインかもしれません。症状やセルフチェックの方法、まぶたのたるみとの違い、治療について、専門医にくわしくお聞きしました。
【教えていただいた方】
眼瞼下垂とは?どんな症状なの?
その頭痛や肩こり、まぶたのたるみが原因かも!
眼瞼(がんけん)とはまぶたのこと、下垂(かすい)は垂れ下がるという意味。眼瞼下垂は文字通りまぶたが下がり、不調や不便が起きている状態のことです。
先天性の場合もありますが、40代以降に起こるのはほぼ後天性の眼瞼下垂。まぶたを上げるための筋肉、眼瞼挙筋やミュラー筋の力が弱くなることがおもな原因です。
Dr.TAKADA×OurAge2024
「眼瞼下垂は知らずに進行していることが多いもの。目の不調だけでなく、頭痛や肩こりを引き起こすことも普通ですよ。不眠や集中力が落ちるなんてこともあります。
もちろん外見も老けて見られがちで、まったくいいことがありません。 あとで説明するようなライフスタイルの変化に伴って、最近は眼瞼下垂で悩む人がとても増えています。
一度なってしまうとセルフケアで治せるものではなく、治療として手術が必要になります。最近は、手術を手がける医師が増え、術法も進化してきていますよ」
こう解説してくれるのは、眼瞼下垂の手術を専門に手がける高田尚忠先生。
浜松と名古屋で実施されている高田先生の手術を受けに、全国各地から患者さんがやって来ます。
まず、次のチェックをしてみましょう。
5つ以上当てはまる項目があったら、もう眼瞼下垂の可能性も!(詳しいセルフ診断は最後に)
Dr.TAKADA×OurAge2024
頭痛や肩こりが眼瞼下垂からきているものだとしたら、なぜなのでしょう?
「まぶたが上げにくくなると、これを補うためにまぶたの眼瞼挙筋を過剰に使うのはもちろん、額にある前頭筋や眉の力、果ては首や肩の筋肉まで総動員してまぶたを引き上げようとします。
これらの筋肉はつねに緊張して縮んだ状態になり、頭痛や肩こりなどを引き起こすと考えられます。慢性的に交感神経が優位になるのももちろん原因になるでしょう」
加齢だけじゃない、眼瞼下垂を起こすのは生活習慣だった!
眼瞼下垂は誰にでも起こります。
当然ながら、年齢を重ねるほど起こりやすくなりますが、とても個人差があります。
実は、眼瞼下垂を誘発、進行させる要因はその人の生活習慣にもあるのです。
まぶたの開け閉めにかかわる組織を無意識に傷めている習慣や癖には意外なものも!
思い当たる習慣や癖はできるだけ改善したいもの。
眼瞼下垂になっていない人は予防が、なっている人でも進行をくい止めることができるかもしれません。
眼瞼下垂を進行させる要因
【コンタクトレンズの長期使用】
特にハードコンタクトレンズを使っている人は要注意。つけたり外したりするとき、まぶたを引っ張るのが大きなダメージに。外すときはできるだけ優しく。できればつけない日を作り、まぶたを休めることも大切。
【アイプチの長期使用】
アイプチやアイテープなどの道具で二重まぶたを作っている人も、眼瞼下垂のリスク大。まぶたは元の位置に戻ろうとするので、筋肉が疲労したり皮膚にも大きな負担が。
【アイメイク】
アイライン、ビューラー、マスカラと、まぶたを引っ張って変形させながらメイクをしていませんか?
メイクを優しくしている人も、クレンジングで負担をかけていたら同じこと。特にウォータープルーフタイプをこすって落としたりするのは負担大!
【まつ毛エクステンション・まつ毛パーマ】
まつ毛エクステンション(マツエク)自体はとても軽いものですが、自まつ毛には余計な重みが加わります。まぶたを上げる筋肉は同時にまつ毛も引き上げているため、重みが増した状態が続くのは大きな負担。 一方、まつ毛パーマは自まつ毛を薬液を利用してカールさせる技術。マツエクのように余計な重みはかからないものの、パーマをかけるときの負担も考慮して。
【目をこする癖】
頻繁に目をこする癖がある人は意外に多いものです。まぶたの組織は想像以上に繊細なもの。ぐいぐいごしごし、力を入れてこすっていないかどうかチェックを。
【スマホやPCの使いすぎ】
長時間スマホやタブレット、PCを使用して目を酷使していると、まばたきの回数が極端に減ります。これがドライアイや目の疲れ、かすみ、視力低下などの原因になり、眼瞼下垂にもつながります。できるだけ目に負担をかけない対策が必要。
【花粉症やアトピー性皮膚炎】
花粉症の目のかゆみやアトピー性皮膚炎で、まぶたをこすったりかいたりする習慣がある人は、若くても眼瞼下垂のリスク大! できる限りこすらない、かかないと肝に銘じることが大事。
意外に簡単、意外にわかる! 眼瞼下垂のセルフチェック
眼瞼下垂になっているのかどうかは、医師にしかわからないと思っていませんか?
もちろん医師以外が“診断行為”をしてはいけませんが、セルフチェックである程度の予想はできます。
眼瞼下垂の診断基準のひとつが「MRD(margin-reflex distance)」。上まぶたの縁と黒目の中央部の距離のことです。
定規を使って測ってみませんか?
眼瞼下垂診断基準「MRD」測定の仕方
自分で測る際には、両手が使えることが大事。
鏡に映しながら定規の目盛を見るだけでもOKですが、人に見てもらえれば理想的。
スマホのインカメラで撮影するのも確実です。その場合は両手が使えないのでスマホを立てかけるか、三脚などで固定し、タイマーで自撮りしましょう。
①片手で定規をおでこに垂直に当てます。
②MRDを測るのに重要なのは、おでこの筋肉や眉の力が加わらないようにすること。そのため、もう一方の手の指を眉に沿わせて当て、動かないように押さえてから、おでこの力を抜いて目を閉じます。
③そのまま、そーっと目を開けてください。上まぶたの縁から黒目の中央までの距離は何mmですか? それが自分のMRDです。
MRDによる眼瞼下垂の判定
目安として「MRD」が3.5mm以下になると、上まぶたのかぶりによる視野欠損が出てくるため、そのあたりが眼瞼下垂症の診断基準になっています(注1)。
(注1)Cahill, K. V., Bradley, E. A., Meyer, D. R., Custer, P. L., Holck, D. E., Marcet, M. M., & Mawn, L. A. (2011). Functional Indications for Upper Eyelid Ptosis and Blepharoplasty Surgery: A Report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology, 118(12), 2510-2517.
↑MRD=上まぶたの縁と黒目の中央の距離で判定します。
距離だけでなく、瞳にどれだけ上まぶたがかぶさっているかも目安に。
眼瞼下垂ではない■正常 3.0㎜以上:黒目がほとんど全部見えている
眼瞼下垂■軽度 1.5㎜前後:黒目にはかかるが瞳にはかかっていない
眼瞼下垂■中度 0.5㎜前後:瞳の一部が隠れている
眼瞼下垂■重度 ― 0.5㎜前後:瞳が半分以上隠れている状態
初出:OurAge 2024/5/18
老化によるたるみと何が違うの?
似ているようで違う「まぶたのたるみ」と「眼瞼下垂」
眼瞼下垂(がんけんかすい)は、上まぶたがうまく上がらなくなって目が開きにくく、視野が狭くなってしまう状態。目の不調だけでなく頭痛や肩こり、不眠などの身体症状が現れる人も多くいます。 でも、年を重ねるとまぶたの“たるみ”も気になり出しますよね?
眼瞼下垂なのか? たるみなのか? 区別がつかない…という人も多いことでしょう。
「まぶたのたるみも眼瞼下垂も、40代以降に起こるものは加齢が原因のことが多いもの。まぶたのたるみは加齢に伴って誰にでも起こりうるので、眼瞼下垂に比べて発生頻度は高いですね。
ふたつが明らかに違うのは、トラブルが起きている場所。
眼瞼下垂は、まぶたを持ち上げる筋肉が緩んで、うまく目が開けられなくなっている状態。まぶたの縁に近いところで起きているものです。
一方、まぶたのたるみのほうは、皮膚の緩みそのものです。ほかの皮膚同様、老化や紫外線などのダメージによって皮膚内のコラーゲン、エラスチンなどのハリ成分が減少すると、肌の弾力性がダウン。まぶたの皮膚を支えられず、たるんで下に下がってしまった状態です」(高田尚忠先生)
まぶたのたるみは加齢による皮膚の垂れ下がり(皮膚の緩み)が原因。眼瞼下垂は眼瞼挙筋の機能低下(筋肉の緩み)が原因。はっきり違います。
このふたつは、正式には以下のように呼び分けられています。
■眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)
こちらはまぶたの筋肉に問題はありません。眼瞼挙筋の機能は保たれているものの、たるんだまぶたの皮膚が目の縁にかぶさり、視野が狭くなっている状態です。
■腱膜性眼瞼下垂(けんまくせいがんけんかすい)
まぶたを持ち上げるために働く挙筋腱膜と、先端部分にある瞼板の結合部分が緩み、まぶたが下がってしまった状態のこと。眼瞼挙筋の衰えが直接の原因です。
「前者のたるみでも、黒目が隠れるほどまぶたが落ちてくることもあり、眼瞼下垂と似たような症状が現れます。医学的(眼形成外科的)には眼瞼下垂と分けて考えられ、『偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)』とも言われます。
偽眼瞼下垂の原因は、皮膚のたるみ以外にもあります。
例えば、加齢によって眉毛が自然に下がってしまう『眉毛下垂(びもうかすい) 』、まぶたを閉じる筋肉が過剰に緊張して開きにくくなる『眼瞼痙攣(けいれん)』、眼球が陥没したようになる『眼球陥凹(がんきゅうかんおう)』など。
これらのケースは、眼瞼下垂とは原因が異なるので、人によっては眼瞼下垂の手術では改善できないこともあると覚えておきましょう」
まぶたのたるみと眼瞼下垂、見分け方は?
では、まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)と眼瞼下垂、どうやって見分ければよいのでしょう?
「ポイントは、まぶたの下がり方です。まぶたのたるみは皮膚そのものが重く落ちてくる、つまり“まぶたの縁を超えて”垂れ下がるのが特徴です。目に対して、まぶたの縁の位置が変わるわけではありません。
例えば、まぶたの皮膚を指や細いもの(針金など)で持ち上げてみると、まぶたがグッと上がって縦の幅が狭くなり、縁が高い位置に上がります。これはまぶたのたるみであると判断できますね。
眼瞼下垂のほうは、黒目が隠れるほど“まぶたの縁の位置が下がる”状態を指します。同じようにまぶたの皮膚を持ち上げても、まぶたの縦幅が変わらないのが特徴です。
パッと見、まぶたのたるみは皮膚の余剰感が目立つことで老けた印象になりますが、眼瞼下垂はまぶたが下がって目が開きにくそう、眠そうな印象です。
症状の現れ方では、まぶたのたるみは徐々に進行しますが、眼瞼下垂は急激に現れることもあるのです」
わかりますか? どちらがまぶたのたるみで、どちらが眼瞼下垂?
(答え:上がたるみ、下が眼瞼下垂)
眼瞼下垂かどうかの判断基準としては、『MRD』があります。自分でもできるので、ぜひ試してみましょう。
「とはいえ、年齢を重ねると、両方が同時に起きているケースが少なくないんです。
その場合、治療はたるんだ皮膚や脂肪を切除したうえで、眼瞼下垂の手術を行うことになります。
眉下切開で余分な部分を切り取る方法や、二重のラインに沿って切除して縫い縮める方法が代表的です」
眼瞼下垂も皮膚のたるみも、重症度には個人差があり、特にふたつが合併していると判断が難しいもの。医療機関で診断してもらい、症状に合った治療法を選択することが何より大事です。
まぶたのたるみ治療でも保険適用になる場合もある!
眼瞼下垂の治療のための手術は、眼科、形成外科、美容外科などで可能です。ただし、まぶたのたるみとの違いや、眼瞼下垂かどうかを正確に調べるためには、専門の機器がそろっている眼科が理想的。ほかの病気の有無も的確に調べてもらえます。
眼科での検査は健康保険が適用になり、手術も1~3割負担の保険内で可能です。
ただ、保険診療が適用されるのは眼瞼下垂の改善を目的とした治療法のみで、美容目的の場合は基本的に自由診療となります。
では、まぶたのたるみにより、目が見えにくくなっている場合はどうでしょう?
「先に説明したように、まぶたのたるみと眼瞼下垂は同時に起きていることが多いものです。
当院の場合、同時に起きているのであればもちろん保険適用。たるみによって視野が狭まり、日常生活に支障があるのであれば、それも保険適用としています。
しかしながら、はっきり分けて考える医師もいます。例えば、眼瞼下垂症は保険適用となっても、たるみによる偽眼瞼下垂症は自由診療とするケースも多いのです。
1回目に保険診療で切開による眼瞼下垂の手術を行い、2回目に自由診療または保険診療(たるみの程度によって異なる)で、たるみに対しての手術(皮膚やたるみの切除、眉下切開など)をする。そのように、初めから2度の手術を計画する場合もあるでしょう。
当院だとほとんどの場合、保険適用で行っていますが、それも保険適用の手術でありながらも、『TKD切開法』という独自の工夫をした手術です。これは皮膚切除を加えた眼瞼下垂手術。皮膚を取りすぎるリスクを考え、皮膚の余剰分を少量だけ切除しつつ、眼瞼挙筋や挙筋腱膜の異常も治すことができます。
自由診療であれば、皮膚の切除する量をまぶたの状態に合わせて増やしたり、必要であれば眼窩脂肪などの脂肪も切除し、まぶたのたるみや重みに対して、より配慮した手術を行うことができます
保険診療というのは、損なわれた機能の回復、病気によって引き起こされた直接的な症状を改善する目的で適用されるもの。
つまり、まぶたの重み、たるんだ皮膚のかぶさりによって視野が狭くなっているのを改善する目的の手術であれば、保険適用となる可能性が高いのです。
逆に、まぶたの重み、皮膚のかぶさりが軽度で視野の狭さが認められなければ、自由診療となってしまいます。
保険診療をうたっているのに、実際にカウンセリングを受けてみたら、明確な基準や根拠もなく高額な自由診療をすすめられたという話はよくあります。
眼瞼下垂の治療は大部分のケースが保険適用。たるみを治したい、シワを取りたいという審美的な要素を治す手術では、基本的に保険は適用されず、自由診療での手術になります。
眼瞼下垂の手術料金は、一般的な病気やけがの治療と同じく、全国全施設一律に定められています。保険診療3割負担であれば、片眼につき約18,000〜55,000円(手術方法により異なる)。
自由診療の場合、料金は医療機関によってまちまちです。よりこだわった内容の手術を受けられますが、約200,000〜700,000円と高額になることが多いようです。
手術・治療内容や費用の根拠などをしっかり把握して検討しましょう。
初出:OurAge 2024/6/8
眼瞼下垂Q&A(受診・費用・保険・術後の疑問)
眼瞼下垂Q&A
Q 何科を受診したらいいの?
保険診療を主体とした形成外科・眼科・皮膚科、自由診療が中心の美容外科などです。
Q 保険適用になる基準は?
MRD(瞼縁角膜反射距離)を基準に、日常に支障をきたしていることですが、最終的には医師の判断です。
Q いちばん基本的な手術法は?
手術法は数多くありますが、保険診療なら切開法、自由診療であれば埋没法がメイン。どの手術法にも短所・長所があります。
Q 手術はいくらくらいかかる?
保険診療の3割負担なら両目で4万円台。自由診療では15万〜70万円程度と幅があります。
Q 一度手術したら再発しないの?
可能性がないわけではありません。再手術のしやすさは、最初の手術次第とも言えます。
Q 両目同時に手術するのが普通?
片目でもできますが、へリング現象(片方の目を開けやすくすると片方が開きにくくなる)や、左右差を避けるためには両目が理想。
Q 術後の腫れ、メイクはいつ可能?
手術後10日~14日で抜糸、強い腫れは、ほぼ1週間で引きます(高田尚忠先生の手術の場合)。アイメイクはできれば1カ月後くらいから。
Q よりよい手術を受けるには?
その医師の手術件数や手術例を参考にして、何軒か比較検討します。HPが眼瞼下垂に詳しいことも必須。クチコミも参考になります。
眼瞼下垂の手術例
二人ともTKD切開・ファシアリリース法による眼瞼下垂手術。
健康保険適用/局所麻酔下/手術時間:両目で約30分
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子
初出:OurAge 2024/4/27