「眼瞼下垂は本当に手術は必要?」「保険は適用される?」「どんな手術法が自分に合っているの?」と悩む人は少なくありません。眼瞼下垂の手術にはさまざまな方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。後悔のない選択をするために、治療法や費用、保険適用、術後の経過、クリニック選びのポイントまで、専門医の解説をもとにわかりやすくまとめました。
【教えていただいた方】
手術って本当に必要?どんな方法がある?
医療機関や医師により診断が違うので、カウンセリングは必須
眼瞼下垂はれっきとした病気と見なされ、診断されたら健康保険が適用になります。それでも「適正な費用で自分に合った治療を受けたい」というのはみんなの願い。術式の違いはもちろん、保険診療と自費診療では、かかる費用にかなり幅があります。実際の手術法や費用は、医療機関によってどう違うのでしょう?
「眼瞼下垂の治療は、眼科、形成外科、美容外科で受けられますが、検査や診断の質、手術の目的や仕上がりに違いがあります。当然ながら費用も違いますが、いちばん大きな違いはそのクリニックと医師の考え方だと思います。
手術が保険適用になるかどうかは特にです。他院では自費診療でしかできないと言われた人でも、当院では保険適用になることはよくあります。前回、まぶたのたるみでも保険適用になることがあると説明したのがまさにそれです。医師の解釈には幅があるため、候補の医療機関があれば、何カ所かカウンセリングに行って、具体的な治療法や費用を聞いてみるのがいちばんでしょう」(高田忠尚先生)
眼瞼下垂の手術に関して、一般的には次のような特徴があげられます。
これはあくまで状況を平均した特徴です。中には、高田先生のように眼科医でありながら形成外科の技術を持ち、美容まで考慮したオリジナルの手術法を中心に行う医師もいるため、一概にはいえないことも覚えておきましょう。
↑高田先生が執刀した眼瞼下垂手術の症例。50代女性のビフォー&アフター(術後8週間)。挙筋腱膜前転法を基本に、傷あとを目立たなくしてより自然な二重幅を形成するために考案したオリジナルの「TKD切開・ファシアリリース法」(健康保険適用手術)
手術法のネーミング、混乱しやすいので気をつけて
現在、眼瞼下垂の手術を検索すると、多種多様な手術法が出てきます。そのクリニック独自のネーミングがついていることもあり、最近はわかりにくくなっています。
「受けようとしている手術が、どの術法なのかはとても大事。当院では他院の修正手術も多数行っていますが、なかには失敗のリスクが大きい手術や、修正手術が困難と知らずに手術を受けられている人も多いんです。
例えば『タッキング法』は、まぶたを持ち上げる筋肉を糸で縫い縮める手法です。皮膚を切らずに糸で固定させる埋没式の手術を指すこともありますが、いちばん一般的な『挙筋前転法』もタッキングと呼ばれることがあるんです。また、ミュラー筋だけを折りたたむように瞼板に固定する『ミュラー筋タッキング(ミュラータック法)』もあります。ミュラー筋が傷つくと自律神経に影響を与えたり、まぶたの痙攣を引き起こしたりするリスクがあるため、当院では基本的にミュラー筋タッキング法は行いません。クリニックによって『タッキング法』の解釈が異なるため、治療を受ける前に手術内容をよく確認することが大切です。同じ手術でも、執刀する医師のスキルなどにもかかわりますから難しいところですが、その医師の手がけた症例、口コミなどを参考にしましょう」
↑こちらも高田先生が執刀した眼瞼下垂手術の症例。50代女性のビフォー&アフター(術後12週間)。術式は前出と同じく高田先生オリジナルの「TKD切開・ファシアリリース法」(健康保険適用手術)
自分に合った眼瞼下垂の手術法は? 術式の種類を分類・比較
以下に、代表的な眼瞼下垂の治療、手術法をまとめてみました。
何を重視するかは、人によって違います。特に、どれくらい仕事を休めばよいか心配な人、他人に気づかれたくない人は、ダウンタイム(ある程度回復するまでの時間)や術後の腫れも比較してみて。また、比較表は高田先生の知識や経験から作成したもので、一般的に当てはまらない場合があることを理解しておきましょう。
部位名は以下を参照ください。
初出:OurAge 2024/6/17
眼瞼下垂手術Q&A(保険・費用・術後の疑問)
眼瞼下垂手術をするか、迷ったり考えたりしている人の疑問に、年間2000件以上手術をする高田先生に答えていただきました!
Q1 眼瞼下垂で手術する人の年齢は平均して何歳くらいですか?
当院では若い方は中学生から、上は90歳ぐらいまで。老若男女幅広く手術を行っていますが、40代〜50代の女性がいちばん多いと思います。
Q2 眼瞼下垂の治療でセカンドオピニオンは取るべきですか? 何軒くらい行くのがいいでしょう?
手術件数が豊富かつ実績がある医療機関で、手術の内容説明に納得ができれば、1軒でも問題ないように思います。逆に、きちんとした説明がされず、納得ができないのであれば、何軒でも行って、意見を聞いてみるべきでしょう。
特に、手術をせかすような説明をするクリニックは注意が必要といえます。
Q3 眼瞼下垂でカウンセリングや相談に行ったら、すぐに手術をすすめられるのですか?
眼瞼下垂症は、眼科学的に(医学的に)考えても緊急性のない疾患なので、すべてのケースで手術を行うべきとは思いません。あくまでご本人が納得してからのことです。
そのため当院の場合は、しっかりと術前説明(カウンセリング)を行い、安易に手術を受けるように誘導するような営業トークはしていません。
Q4 「眼瞼下垂は手術なしでクリームで治る」という広告をよく見ます。本当に治りますか?
まぶたの皮膚のたるみがそのクリームで改善するのであれば、多少の効果はあるのかもしれません。でも、基本的に眼瞼下垂症はまぶたの構造の問題であるため、点眼薬、クリーム、軟膏などの外用薬、内服薬を含め、薬剤で根本から治すことはできないものです。
さらに言えば、眼瞼下垂症もさまざまな原因があるので、その原因に合わせた治療法、手術方法の選択を検討することが必要だと思います。
Q5 眉下切開手術でも、眼瞼下垂は治るのですか?
眉下切開手術は、眉毛のすぐそばの皮膚を切除します。余分な皮膚を取り除くことでまぶたをリフトアップさせ、まぶたのかぶりを引き上げる方法です。
まぶたのかぶりがあったとき、眉下すぐを切開して余分な皮膚を切り取り、ほぼ跡が見えないように、細い糸で縫合します。
軽度の眼瞼下垂の方は、眉下切開だけでも症状の緩和に十分つながります。
皮膚の重みやたるみが顕著で、視界が狭くなっているようであれば、保険診療で眉下切開手術をすることも。当院の場合は、最初から眉下切開することもあれば、挙筋前転法など基本の眼瞼下垂症手術後に追加して、眉下切開をおすすめするケースもあります。
眉下切開に限らず、さまざまな手術方式の中でその方にいちばん合った方法を提案しています。
Q6 医師の診断では軽症の眼瞼下垂。手術はもっとひどくなってからでよいと言われましたが、本当ですか?
一概に、症状が重くなってからがよいというわけではありません。一見軽度でも、「隠れ眼瞼下垂症」のように進行している場合もあるからです。
また、手術は組織の状態の良し悪しで難易度が変わります。加齢によっても皮膚は硬くなり、眼瞼挙筋の筋力の低下、皮膚の弛緩、組織の脂肪化などが進み、手術自体が若い人より難しくなります。
Q7 まぶたが垂れて目にかぶってきたと感じます。手術して、10年前くらいの印象にすることは可能ですか?
印象や見た目を改善するという希望をかなえたい場合は、自費診療の範疇となります。保険診療はあくまで機能回復を主としたものだからです。
当院の場合は、眼瞼下垂手術を保険診療で行う際、眼瞼挙筋を前転(タッキング)し、開瞼幅や左右差の調整を行っていきます。結果として、ねらっていないにしてもその方の若い頃の状態に戻る場合もあります。
もし、意図的に若い頃の印象に戻したいのであれば、自費診療で目元のデザインをオーダーメイド的にアレンジしていくことになると思います。
Q8 眼瞼下垂の手術は何回でもできますか?
手術は、回数を重ねれば重ねるほど組織の瘢痕化(はんこんか)、繊維化が進み、手術難易度が上がってしまいます。さらに言えば、手術の術式によっても再手術の難易度は変わってきます。特にミュラー筋タッキングなど、ミュラー筋を操作するような手術や吊り上げ術だと、後からの修正や再手術は難しいと考えられます。
Q9 手術後、眼が閉じにくくなったという話をネットで見かけますが、なぜですか?
眼瞼下垂手術は目を開きやすくする手術ではありますが、その実、目を閉じにくくする手術ともいえます。したがって組織の取りすぎ、過矯正による後遺症で兎眼(とがん:まぶたを完全に閉じることができない状態)が出ることも予想できます。
特に手術後の早期には、傷口(手術創)が硬くなり、引きつって突っ張ってしまうため、睡眠中に薄目を開けている状態になるなど閉じにくさが出てくることも。数カ月で治ることも多いため、きちんとした手術であれば、最終的に困るような兎眼になることは少ないはず。当院が皮膚切除量を3mm以下に規定しているのは、兎眼を避けるためでもあります。
Q10 眼瞼下垂の再手術(修正手術)を2軒で断られました。無理なのでしょうか?
他院の修正手術は、前医による手術内容の差があり、それによって難易度も変わります。他院修正のケースでは、埋没糸の除去、瘢痕組織の切除など高度な技術による対応が必要となるため、通常の眼瞼下垂とは分けて考えます。修正手術後のトラブルのリスクも高くなるのは当然です。
また、修正手術を希望する方の中には眼瞼下垂の治療以上に、審美的な改善への気持ちが強い方が多いのも、術者側からすればリスクとなります。
そうした理由で、初めから手術をお断りする施設も多いでしょうし、引き受けたとしても通常より高額な手術費用の請求となることが多いように思います。
初出:OurAge 2024/7/11
眼瞼下垂のクリニック選びのポイント
今回、話してくださるのは、東京美容外科クリニックの統括院長で、メディアにも多数出演している形成外科医・美容外科医の麻生泰先生(左)と、手がける眼瞼下垂手術は年間2000件以上という眼瞼下垂のエキスパート、監修、眼科医の高田尚忠先生(右)です。忌憚のないコメントに期待しましょう。
眼科、美容外科、形成外科…実は、何科に行くかより、医師次第!
麻生 有名人などを見るとやっぱり「ちょっと、あれはかわいそう。なぜ?」と思う人いますよね。普通に眼瞼下垂の手術をしてもらえればよかったのにな、と。
高田 それ、あります。なぜそんな失敗をされてしまったの? なんでそこに行ってしまったの? と。
麻生 眼瞼下垂の治療はどこでやったらいいのとよく聞かれますが、何科ならいいとかいう話じゃない。先生によりますよね。 うちは美容外科ですが、僕自身は慶応の形成外科、大学院で博士号を取ったので形成外科医なんですよね。
形成を学ばずにいきなり美容外科に行った人が、眼瞼下垂の切開手術はできないと思います。そういう教育を受けてないから。
ただし、形成外科医でもできない先生もいる。
眼瞼下垂を専門的にやられてる先生のところに自分で積極的に見に行ったり、トレーニングを受けたりしている先生でないと無理だと思いますね。 逆に美容外科でもとても上手な人もいるし。
形成を学んでなくても、自分自身で研究してセンスのいい先生もいる。
高田 僕は眼科医でありながら、形成外科で眼瞼下垂の勉強をした珍しいパターンだと思います。その医師が何ができるか、どんな手術ができるかは、ホームページを見ればだいたいわかりそうですよね。
麻生 大学病院なんかでは「目が開けばいい」と思ってる先生もいますしね。
高田 眼科も、そういう意味で言うと「開けばいい」という先生が多いかもしれません。
僕自身はそこが違いますけど。
麻生 高田先生、他院の修正手術も多いんじゃないですか?
高田 僕のところは眼瞼下垂手術専門と謳っていることもあり、眼瞼下垂手術のうち、1~2割が他院の修正手術。県外からもかなり多くいらっしゃいます。
中には何度も手術を受けている方もいて。修正手術をやればやるほどこちらは難しくなる。修正は、埋没法による二重手術後のケースが多いですかね。「なんでこんな手術したかな〜」と思いながらやってます。その分、とても勉強になりますけど。
①1カ月前に前院で両側手術後、左右差が出たため右目のみ再手術したという方。前院の修正手術後10日目。まだ左右差がひどい状態。
②高田先生により左右とも修正手術。
広すぎる二重の幅を縮小し、開瞼幅の左右差を調整。これは術後1週間。
③12週間後、左右差がほぼなくなり、かなり自然な状態に。
「切らずに治したい」なら、美容外科で自費診療がベスト
麻生 埋没法(まぶたを切らずに、針を使って細い糸で まぶたの皮膚の内側と筋肉や軟骨を結びつける方法)は、そもそも眼瞼下垂の手術じゃないですからね。眼瞼下垂の治療手術として埋没法って書いてるところもあるじゃないですか。
高田 混同されてますよね。眼瞼下垂の手術の目的は目をちゃんと開けることであって、二重を作る手術ではない。保険内でできる眼瞼下垂の手術では、二重になりにくい人はならないし、なる人はなるよって話です。 ただ、目の機能を治すうえで、いかにナチュラルに仕上げるかが勝負。
僕は保険治療でもできるだけ自然な目にこだわってるんですよ。自分がきれいと思う目にしてあげようと思ってる。
僕の手術でベースにしているのは、保険診療での「眼瞼挙筋腱膜前転法」です。
皮膚を含めできるだけ組織を温存しつつ腱膜を折りたたむように縫い止めるんですが、その止め方の強弱でも二重の食い込み方が変わり、二重の幅が変わります。なので、皮膚の切除量、切開デザイン以外の二重まぶたの構成要素にも気を遣いますね。
自由診療であれば、皮膚、まぶたの脂肪、眼輪筋などの組織の切除量を意図的に増やして、仕上がりのデザインに対して保険診療より配慮したものにしています。
麻生 美容外科は「切らないで」という人も多いので、僕はまぶたの裏側からミュラー筋をタッキングする方法をいちばん使います。ミュラー筋は、また緩む可能性があるので、緩んだらもう1回やらないといけないですけどね。
うちは自費診療なので、基本的に「切りたくない」という人には皮膚は切除しない。
僕はあんまり二重の皮膚を切るのは好きじゃないんです、先生はどうされるかわからないですけど。
腱膜とミュラー筋の位置をチェック!
いろいろな術式を患者さんの希望に即して対応する、麻生先生
高田 僕は二重の皮膚を、だいたい3mmは切ります。眼瞼下垂で目の開きを治しながら、余った皮膚を取って二重もきれいに見せたい。僕はそれが売り。保険診療でのパターンにしてます。
ただし、それ以上皮膚を取ってほしいと言われたら自費にしますよ、と説明しています。
麻生 ミュラー筋を触るのはだめと言う先生もいますね。
高田 それ、僕です。他院でミュラー筋を傷つけられて、術後に眼瞼痙攣(けいれん)になってる人が大勢来るんです。ミュラー筋タッキングは初心者の先生でもできる代わりに失敗しやすいんだと思います。
先生のように、切らないで裏側からうまくミュラー筋を引っ張れる先生はいいんです。でも、慣れていない先生もいる。
糸の結び目をまぶたの裏側に置いてこられたら、後になって取るのがめちゃくちゃ大変。再手術できないケースもあります。
麻生 そう、結び目を裏側に置いてくる先生がいるんですよね。裏だと絶対だめだと思うんです。僕は表側で二重のラインと連動させる方法を以前学会で発表してたんですけど、全然研究してない先生もいる。
僕なんか、手術もネット上で公開しちゃってるから、しっかり見てもらっていいんですけどね。 まあ、眼瞼下垂をメスは使わないで、しかも二重をきれいにしたい、となったら自費で美容外科しかないでしょう。
美容外科に行って「保険診療もすると書いてあったのに、行ってみたら自費診療をすすめられてしまった」とクレームを言う人がいますけど、美容外科なら自費診療だと思ったほうがいいです。
高田 保険診療と自由診療の内容の違いをちゃんと言葉できっちり説明できるかどうかですよね。 うちはほぼ保険ですけど、保険ならこうこうこうですよという話を、カウンセリングでものすごく説明して、納得してもらったうえでしかやらないですね。
なにせ、僕がきれいだと思うものをやるから信頼して受けてほしい。
麻生先生による症例:切開による眼瞼下垂手術と、目の下のたるみ取りをした60代女性。
下は術後7カ月
口コミやレビュー、それに対するクリニックの返信も参考に
麻生 先生はそれぞれ皆、自分の得意な「黄金パターン」があって、そこから外れるようなことを患者さんから指定されたら、「無理〜」ってなりますよね。
眼瞼下垂を専門とし、術式を確立。口コミで全国から患者さんがやってくる、高田先生
高田 好みがありますね、こうするのがきれいと信念を持っている。
麻生 どんなに自費手術でも、「二重の幅はこうお願いします」と言われて、それをいいと思わなければそのとおりにはできないですよ。そのとおりにやってうまくいかないことはわかってるのでね。さようなら、となります。
そんなこと言うと、さっそくネットに書かれてしまうんですけど(笑)。
高田 今、口コミやレビューがすごいですからね。でも、僕はネットの書き込みは参考にしていいと思いますね。
麻生 一部、偏った書き込みもありますけどね。本当の患者さんじゃなかったり。全部信用しないほうがいいと思うこともありますよね。
高田 書かれたほうの対応、返信も大変です。でも書きますよ。
クレームを書いた人に対してというよりも、それを読んだ人がどう思うかが大事だと思うんです。読む側が正当に判断してくれたらいいなと思って。
麻生 そういう意味ではネットでの発信は大事ですよね。インスタとかYouTubeとかも。どんな人かわからない先生に頼みたくないですしね。
高田 僕がずっとブログを書き続けているのもそれです。患者さんは論文は読めないけどブログは読める。
麻生 それ以上に知りたかったら、まずカウンセリングに行けばいい。
高田 そうですそうです。僕はメール相談までやっています。 眼瞼下垂は緊急性のない疾患だからこそ、自分でしっかり調べたり勉強しておけると思いますね。
初出:OurAge 2024/5/25