「夜まで遊ぶ東京」に憧れた私が、ゴッホの『夜のカフェテラス』で思い出したこと
名古屋に住んでいた頃、東京にはずっと憧れがありました。
夜遅くまでお店が開いていて、仕事帰りにふらりとカフェへ立ち寄る。
そこで誰かと出会ったり、おしゃべりを楽しんだり……。
そんなドラマのような東京の夜を、勝手に夢想していたものです。
そして今、アラフィフになって東京で暮らしています。
でも現実はというと、仕事が終われば一日分の疲れがどっと押し寄せ、平日の夜に繁華街へ繰り出す元気はなかなかありません。
治安のことも少し気になりますし、コロナ禍を経て「勤務時間外は仕事関係の人とはあまり付き合わない」という空気も感じます。
休日に会う友人たちも、みんな大人。
食事やイベントを楽しんだら、「じゃあ、またね」と気持ちよく解散。二次会、三次会……ということは、ほとんどなくなりました。
それはそれで、とても心地よい距離感です。
そんなある日、友人が「上野の森美術館で開催中の『大ゴッホ展―夜のカフェテラス―』のチケットの譲り先を探している」と連絡をくれました。
最近は忙しさを理由に、美術館へ足を運ぶ機会も減っていましたが、「これは何かのご縁かもしれない」と思い、そのチケットを譲っていただくことにしました。
ゴッホ展チケット
上野の森美術館の壁一面には、大きな展覧会ポスターが掲げられ、期待が高まります。
私は事前に整理券を予約していましたが、それでも入館までには長い列ができていて、この展覧会の人気ぶりを実感しました。
上野の森美術館壁面
館内もかなりの混雑。それでも、人の流れに合わせながら作品を見ていくうちに、ようやく《夜のカフェテラス》の前へ。
ゴッホが描いた《夜のカフェテラス》。
温かな灯りに照らされたテラス席。夜なのにどこか安心感があり、人が集い、それぞれの時間を楽しんでいる風景です。
その絵を見ているうちに、「そうそう、私が東京に憧れていた理由って、こんな夜の風景だったんだ」と、ふと思い出しました。
もちろん、現実の東京はゴッホの絵のようにロマンチックばかりではありません。
それでも、美術館を出たあと、上野の街を歩いていると、少しだけ夜風に誘われて、どこかでもう一杯お茶でも飲んで帰ろうかな……という気分になりました。
忙しいエクラ世代。
「今日はもう帰ろう」が当たり前になった今だからこそ、たまには誰かと夜の街をゆっくり歩き、カフェで他愛ない話をする時間もいいな、と感じました。
付き合ってくれる友人を探すのは若い頃より少し難しくなりましたが(笑)、そんな時間も人生には必要なのかもしれません。
今回の展覧会では、《夜のカフェテラス》だけでなく、ゴッホに影響を与えたルノワールやモネなど印象派の画家たちの作品も展示されていました。
また、農民や労働者の日々の営みを描いた作品も多く展示されており、華やかな夜景だけではない、ゴッホのまなざしの温かさや、人への深い関心を感じることができました。
代表作だけではなく、画家として歩んだ軌跡や時代背景にも触れることができ、ゴッホという人物をより身近に感じられる、とても見応えのある展覧会でした。
展示品は「夜のカフェテラス」のみ、撮影可能でした。
それでは、また。