イギリスのデザイナー、マーガレット・ハウエルの20年ぶりとなる新刊『マーガレット・ハウエルの暮らしと仕事』の出版を記念した内覧会へ。
9月5日から13日までこちらの代官山 T サイトガーデンギャラリーにて刊行記念のエキシビジョンが開催されています。
9月5日の発売前日に、マーガレットのシンプルで温かみのあるタイムレスな魅力がゆっくりと伝わってくるような展示空間で彼女の世界観に包まれてきました。
会場には、マーガレット自身が日々の中で撮影したイギリスの風景や日常の瞬間を切り取った23点の写真のほか、1970年代のブランド創設初期に作られた、貴重なシャツやコートのアーカイブも展示されています。
日本滞在中のマーガレットが撮った、日本家屋の前に洗濯物が干された風景写真が印象に残りました
今回出版された【マーガレットハウエルの暮らしと仕事】は、彼女の50年の歩みとシンプルで誠実なものづくり、丁寧な暮らしの美学が詰まった一冊。
ロンドンの自宅や愛用の家具や日用品、仕事と作品の背景が分かる豊富なビジュアルのほか、マーガレットご本人へのインタビューも記録されたライフスタイルブックです。
日常を慈しみながら暮らすことの豊かさ、彼女の仕事に対する誠実な哲学に触れながら、とても穏やかな気持ちになれる一冊
インタビューの中にあった言葉やエピソードは、私がこれまでに育んできた、もの選びの基準や理想とする生き方の輪郭に驚くほどぴったりと重なるものでした。
そこでは《祖父母や両親から譲り受けたものは、単なる「もの」ではなく、そこには記憶の断片が宿っている。長く愛してきたものには、ともに歩んだ思い出や、積み重ねられた時間も受け継がれている》という考えや、《ひとつひとつのものを自分の目で選び、大切に使い続けながら、暮らしを作っていく》といった思いが語られています。
ページをめくるたびに、それらの言葉が心に静かに染みわたっていきました。
私自身、昔から丁寧につくられたものや、時間を経たものに惹かれます。大量生産されたものよりも、作り手の温もりが感じられるもの、懐かしいもの、唯一無ニのものが好き…。
そんな私の家では、お気に入りのイギリスのアンティークのダイニングセットで食事をし、同じくアンティークのビューローブックケースやチャーチチェアを大切に使っています。
祖母や母が使っていたもの、父の実家の蔵にあった骨董品も、丁寧に扱いながら、暮らしの中で使う日々。
上質なものを大切にし、長く使い続けたい。
そんな価値観は、気がつけば私の暮らしの土台になっています。
本で紹介されている彼女の視点や物を選ぶ確かな眼差し、そして日々の生活の中で大切にしていること、隅々に宿る価値観は、何気ない日常の暮らしを愛する全ての人たちに通底しているものだと思いました。
部屋に差し込む光の様子や、季節ごとに変わる風の香り、ひたむきに生きる動物たちの表情や仕草、自身の些細な気持ちの変化…。私は、そんなとるに足らないものにいちいち心が揺れるんです。
見るもの、触れるもの、耳に入れる音、言葉、香り、そして身体にとり入れるものすべてを敏感に選びとる。
まわりの環境も、心も、身体も、自分が本当に心地よいと感じられるように整えて暮らしたい。
だから同じ考えを持つマーガレットの本の世界のなかにいると、とても安心した気持ちになれました。
昔から、流行や新しいものをすんなりとは受け入れず、自分が本当に納得したものしか選ばない。
まあまあ厄介で面倒なタイプだと自覚していますが、それが私なので、今となってはわりと肯定的に捉えています。
なぜこんなにも「自分の好き」を大切にし、昔から受け継がれてきたものや、丁寧に暮らすことに惹かれるようになったのだろう。
そんなところにまで思いが辿りついた時、すぐに心に浮かんだのが母の存在でした。
私の価値観の原点―改めて感じた母の想いと育て方
私は赤ちゃんの頃から、次のように育てられたそうで…。
たとえば食器。割れたら危ないからとプラスチックを選ぶ親も少なくない中、母は雑に扱えば当然割れる陶磁器のお皿やボーンチャイナのカップを使わせる。口当たりの良さだけでなく、ものを大切に扱うことも含めて教えました。
身につけるものは、デザインに加え、何よりも着心地や肌触りを重視。
そして、よちよち歩きの頃から帝国ホテルやホテルオークラへ連れて行き、カーペットが敷いてある場所では静かに歩くこと、大人たちが過ごす場所ではそれにふさわしい振る舞いをすることを教えました。
音楽家であった母は海外からの貴重な演奏家のリサイタルにも、その演奏を子守唄代わりにしてスヤスヤ眠る私にがっかりしながらも(笑)何度も連れていったそう。
Margaret Howellの【暮らしと仕事 Life and Work】
左上の小さなバスケットは、私が3歳くらいの時に常に持ち歩いていた懐かしい思い出の品。 今はサプリメントを入れて使っています。
今振り返ってみると、母が私に教えてくれたのは、単に上質なものではなく、何を選ぶのか、どう扱うのか、そして、どんなものに囲まれて、どんな価値観で生きていくのかだったのでしょう。
幼い頃から自分自身の感覚を信じる基礎を作り、選択肢の幅を広げてくれていたのだなあ、と感じました。
今の私が、何かを選ぶときにも、暮らしをつくるときにも、妥協せず、ブレない自分基準を持てるのは間違いなく母のおかげだと、この本を読みながら改めて感じました。
一冊の本を読みながら、いつのまにか私は、自分自身のこれまでの暮らしや生き方にまで思いを巡らせることに…。
母や祖母から受け継いだ古いもの、そして感性、ものを見る眼、暮らし方などがますますかけがえのないものに思えてきました。
すぐには手に入らないものや、それがあるからこそ、心が圧倒的に豊かになることを大切に。
これからも自分の心に正直に、ゆっくり、深く生きていこう…。
そんな気持ちをかみしめながら、私はこの本を閉じました。
会場では、オリジナルグッズも販売中。左から J マダムのトモミさん、私、akkoさん。
自分らしいスタイルや、ものの選び方を見つめ直したくなったときに、そっと開きたい一冊。
お手元に置いてみてはいかがでしょう✨
J マダムの皆さまとご一緒しました。
左から、トモミさん、akkoさん、私、kaedeco1さん、キャリゆかさん
eclat編集長(右)と編集部の神野さん(左)、私の後ろにJマダムのキャリゆかさん
【マーガレットハウエルの暮らしと仕事】2026年9月5日発売