物価の上昇を日々感じ、円安のニュースも気になる今、将来の暮らしに不安を感じている人も多いのでは。日本経済新聞社 編集委員の田村正之さんが“これから”を読み解くキーワードをわかりやすく解説します。
経済のプロがわかりやすく解説! 経済のこれからを読み解くkeyword
keyword 01「労働力希少社会」
人口減少による労働力不足は物価上昇の大きな後押しに
「日本では今、人口減少による労働力不足が大きな問題になっています。これまでは高齢者や女性の就業によって労働力が補われてきましたが、ボリュームの多い団塊世代が75歳を超え、女性の就業率も高水準となった今、人手不足がいよいよ深刻化。これまで安価で豊富な労働力頼みだった飲食や宿泊などのサービス業を中心に、人員確保のため賃金アップや価格アップが続いています。
企業は増えていく人件費を商品やサービスの価格に反映せざるをえず、それが物価上昇につながります。この賃金や物価の上昇の流れはしばらく続くでしょうし、短期的な変動はあっても、人口減少の構造的要因を考えれば、物価を押し上げる力は今後も大きいといえます」
keyword 02「社会保障費の増大」
財源確保のための負担が避けられず手取り収入が増えづらい状況
「少子高齢化が加速する日本では、社会保障費が増加しています。’25年度の約140兆円から’40年度には約190兆円、1.35倍になると報じられています。ただしGDPに占める割合で見ると21%から24.5%程度への上昇にとどまり、経済規模の広がりによって税収も増えるため、財政破綻するほどの問題ではありません。
とはいえ、高齢化が進めば医療・介護費用はさらに増え続けることになり、さまざまな面で効率化などの工夫も進んでいますが、私たちの負担は避けられません。そのため、財源として消費税増税もたびたび話題に出ています。額面の賃金が増えたとしても、増税や社会保険料アップになれば手取り収入はそこまで上がらなくなってしまいます。そのため給料を受け取る以外の備えが、今まで以上に大切な時代なのです」
keyword 03「政策金利・実質金利」
物価上昇も加味した「実質金利」で見ると日米の差が大きく、円安要因に
「日本で金利がやや上昇していますが、これは日本銀行が景気や物価を調整するために決める『政策金利』のこと。実際の影響を考えるうえで大切なのは『実質金利』で、政策金利から物価上昇率を差し引いた値です。例えば日本では、政策金利が0.75%、物価上昇率が3.1%で実質金利は−2.35%です。一方、アメリカでは政策金利が3.5%、物価上昇率が2.7%で実質金利は+0.8%です(ともに’25年12月時点)。
こうした国ごとの金利の差は為替に影響しやすく、実質金利が高いほうの通貨が高くなる傾向にあります。今後日本の金利が上がれば円安がやわらぐ可能性はありますが、日本の債務の大きさを考えると大幅な利上げは簡単ではありません。また、実質金利が低いと株や不動産は上がりやすい一方、預貯金の価値は目減りしやすくなります。そのため、預貯金以外の資産を持つことも重要です」
教えてくれたのは
たむら まさゆき●証券アナリスト、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの資格ももつ。個人投資家の利益を考える目線で、長年にわ
たってインデックス投資の有用性について発信。著書に『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日本経済新聞出版)など。
撮影/柳 香穂 取材・原文/西山美紀 イラスト/小泉由美 ※エクラ2026年5月号掲載