ゴールドマン・サックスで17年間にわたり投資業務に従事、現在も金融の最前線で活躍を続ける田中渓さん。おすすめの資産配分や投資について、また、「貯める」と「使う」のバランスなど、お金についてあれこれ聞いてみた。
教えてくれたのは
たなか けい●ゴールドマン・サックスで17年間にわたり投資業務に従事、投資部門の日本共同統括を務め、’24年退職。各種メディアで引っぱりだこの話題の人。著書に『億までの人 億からの人』(徳間書店)。4月からJ-WAVEで新番組がスタート予定。
投資のプロではない普通の人はインデックス投資だけでOK。個別株は射幸心を満たす程度に
おすすめの資産配分
「『卵をひとつのカゴに盛るな』という言葉もありますが、投資対象を広く分散させて、長期で続けるのが、投資におけるセオリーです。これは金融のプロでも初心者でも変わりません。逆にいうと、一点、短期投資は危ない。そのため、世界中の株に分散投資できる“オルカン”のような全世界株式インデックスファンドがおすすめです。
ただインデックス投資は、一度積み立ての設定をすると、淡々と買って持ち続けるだけなのでつまらない(笑)。射幸心を満たすために、総資産の10%ほどであれば個別株投資もいいと思います。リスク資産の割合は資産の大きさにもよりますが、今後のインフレや円安傾向を考えると、7~8割にするのがよいと思います。生活に必要な資金とのバランスを鑑みて、この割合を参考にしてください」
より堅実に行くなら?
リスク資産部分はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産配分を参考に
株式型ファンドだけだと値動きの大きさが気になってしまう場合、参考にしたいのがGPIFの資産配分。GPIFは日本の公的年金(厚生年金・国民年金)の積立金を運用する機関で、世界最大級の規模のファンドです。「GPIFは長期目線で安定性と持続性を重視しています。そのため、国内外の株式に加えて、値動きが抑えられる国内外の債券にも投資。株式100%よりもリスクを抑えながら、あまり知られていませんが、実は190兆円以上増やしている実績(※)があります。堅実に運用したいなら、この割合をお手本にするのもいいと思います」。1本でこの割合に分散投資できる、バランス型のインデックスファンドもあります。
※2001年度~ 2025年度第三四半期の収益額(累積)。GPIF「2025年度の運用状況」より
田中さんにもっと聞きたい!「インフレに負けない備え」
Q1. 金・銀・プラチナは 持っておくほうがいいでしょうか?
A. 金は資産の数%ほどならOK。銀・プラチナは不要では
「金が最近高騰した背景には、地政学リスクやインフレ懸念、各国中央銀行の買い増しがあります。“有事の金”というように、不安定な局面では値上がりしやすい。ただ株のように企業の成長という裏付けがなく、理論的な価格がわかりにくいため私は持っていません。しかし、貴金属や工業製品として実需もあります。株式とは値動きが異なるため、資産全体の数%持つのはよいでしょう。銀やプラチナは値動きが激しいので持たなくてよいと思います」
Q2. 暗号資産はどう評価していますか?
A. 金に近い性質があるが持つとしてもごく少額で
「暗号資産は“デジタルゴールド”とも呼ばれ、政府に依存せず、供給量に上限がある点で金と似ています。暗号資産全体の時価総額はまだ金の10分の1ほどで(’25年12月時点)、拡大余地があると考えて私は保有しています。税制面で、現在は総合課税ですが、将来的に分離課税へ見直される可能性があるのもポジティブな要素です。ただ、値動きが非常に大きいため、無理に持つ必要はありません。持つとしても、あくまでも余裕資金の一部で持つのが賢明です」
Q3. 「守る・貯める」と「使う・楽しむ」のバランスはどう考えればいいですか?
A. 老後資金を確保したうえでこれからの10 年を楽しむ
「まず、老後資金がいくら必要かをシミュレーションしてみましょう。必要額を確保できる見通しが立ったら、それ以外は使うことも大切。日本人は長寿ゆえに不安が強く、資産を十分に使わずに終える場合も多いです。しかし健康寿命は平均寿命より約10年短いといわれます。50歳からの10年は、体力も気力もあり、自由に動ける貴重な時間。旅行や芸術、最新テクノロジーなど、今だからこそできることにお金を使うことで、人生の満足度は高くなるのではないでしょうか」
Q4. 田中さんはこれから何にお金を投じたいですか?
A. 物はランニングシューズで十分。健康寿命を延ばすことと若い世代に
「今は物欲がなくなってしまい、ランニングシューズが買えれば十分です。健康寿命を延ばしたいと考えているので、食事・睡眠・運動には投資していきたいですね。このまま行けば70歳くらいまで走れそうだなと。食事は楽しみでもあって、コースの最後のTボーンステーキでも600~700gいけますし、お酒もかなり飲みます。その豊かな時間のために毎朝運動して帳尻を合わせているとも(笑)。若い世代への支援も積極的にしていきたいと思っていて、寄付や政党への献金、エンジェル投資もしています」
撮影/メグミ 取材・原文/西山美紀 ※エクラ2026年5月号掲載