物価上昇や円安の要因になる、社会構造の変化がいろいろ起きています。では、私たちが個人として、資産を守っていくためにできる対策とは? 日本経済新聞社 編集委員の田村正之さんが 50歳から始める際の注意点も含めてレクチャー。
教えてくれたのは
たむら まさゆき●証券アナリスト、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの資格ももつ。個人投資家の利益を考える目線で、長年にわ
たってインデックス投資の有用性について発信。著書に『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日本経済新聞出版)など。
株価は世界経済に合わせて上昇。だからこそ、全世界の株に分散投資
インフレや円安に負けないよう、資産を守り育てるためにすることは、実はシンプル。
「軸にしたいのは、世界中の株式に幅広く投資する『全世界株式インデックス型』の投資信託です。左のグラフのように、長期的には世界経済の拡大に合わせて世界の株価も上昇します。インフレ対策として持っておくのは、全世界株式インデックス型投資信託1本で十分。より資産を分散させるなら、金など物価上昇や地政学リスクに強い資産を、投資に回す分の5~10%ほど持つのもよいでしょう」。
全世界株式インデックス型の投資信託は円安への対策にも。
「ドルなど外貨建ての資産のため、円安になった際に、円に換算したときの価値が上がります。逆に円高になった際には、円に換算したときの価値は下がりますが、海外の株の価値が上がっていくことで、円高の影響をある程度やわらげられるはず。長期的には世界経済の成長が期待できるため、過度な心配はいりません。世界株を長期で積み立てることは、資産形成にもインフレや為替の対策にもつながるのです。投資をする際には、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度をぜひ活用したいですね」
\ 世界経済が拡大するにつれ、世界の株価も伸びる! /
※各データより田村さん作成
押さえておきたい資産形成のkeyword
リスク資産・無リスク資産
「リスク=値動きの幅」の有無
「リスク資産」とは、値動きがあり元本割れの可能性があるもので、株式や外国債券、金、REIT(不動産投資信託)など。「無リスク資産」とは、満期まで持てば元本割れの可能性がないもので、預貯金や自国の国債など。投資における「リスク」とは“値動きの幅”のことで、リスクが高いということは、値上がりと値下がりの両方の可能性が高いということ。
NISA(少額投資非課税制度)
投資の利益が、非課税でそのまま受け取れる
投資で得た利益に、通常かかる20.315%の税金がかからない制度。例えば10万円の利益が出た場合、通常の投資なら約2万円の税金が差し引かれるが、NISAの枠内で投資をすれば10万円を受け取れる。’24年から新制度になり、つみたて投資枠(年120万円まで)と成長投資枠(年240万円まで)の併用が可能に。非課税保有期間が無期限で、生涯投資枠が1800万円(成長投資枠は1200万円)までとなり、長期運用がしやすくなった。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛け金に税金がかからず、高所得者ほどお得に
個人がお金を出して、商品を選んで運用する私的年金制度。原則60歳まで引き出すことができないが、大きな税制メリットがあり、掛け金が全額所得控除に。支払う税金が軽くなり、所得税率の高い高所得者ほどお得に。また運用期間中は投資で得た利益に20.315%の税金がかからないメリットも。’27年1月から拠出限度額が自営・フリーランスの人は月7.5万円、企業年金のない会社員は月6.2万円に増えるなどの制度変更が。
投資信託
1本で手軽に分散投資できる
投資家から集めた資金をプロが運用する商品で、1本で分散投資ができる。月100円や1000円といった少額から購入可能。「ファンド」とも呼ばれ、国内外の株式や債券に投資するものや株式型・債券型・株と債券を組み合わせたバランス型など種類も豊富。また、不動産(REIT)や金(ゴールド)に投資できるものも。
インデックスファンド
指数に沿って投資、コストは低め
インデックスとは「指数」の意味で、日本株の日経平均株価やTOPIX、米国株のS&P500などが代表的。インデックスファンドはこうした指数(市場平均)に沿った値動きを目ざす投資信託のこと。日経平均株価の連動型なら225社の株に投資するのと同じ効果が。ファンド保有中にかかるコスト「信託報酬」が低め。
アクティブファンド
成果は運用しだい、コストは高め
指数を上回る成果を目ざして運用される投資信託がアクティブファンド。運用のプロであるファンドマネジャーが市場や企業を分析して銘柄を選んで運用。投資成果はその手腕によって左右されるが、実は下のグラフのように、長期の実績では市場平均に勝つ確率がかなり低い。運用の手間がかかるため、コストも高め。
株式のアクティブファンドが市場平均に負けた比率(’25年6月までの10年間)
※ダウ・ジョーンズのデータより田村さん作成
オルカン
インデックス投資の超定番! 世界中の株式にこれ1本で投資
投資でよく耳にする「オルカン」は、投資信託の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の愛称で、全世界株式に投資できるインデックスファンドの代表格。これ1本でアメリカ、日本、イギリス、カナダ、台湾、フランス、スイス、ドイツなど幅広い国々の株式に手軽に投資でき、長期投資の定番商品として人気。
S&P500
アメリカを代表する大企業500社の指数
アメリカの代表的な大企業500社の株価で構成される指数。現在はApple、Microsoft、Amazon、Alphabet( Google)、Metaといった日本でも有名な企業が含まれる。このS&P500に連動するインデックスファンドは、500社にまとめて投資することになり、世界経済を引っぱるアメリカ企業に手軽に投資できるため、投資家からも人気。
撮影/柳 香穂 取材・原文/西山美紀 イラスト/小泉由美 ※エクラ2026年5月号掲載