物価の上昇を日々感じ、円安のニュースも気になる今、将来の暮らしに不安を感じている人も多いのでは。日本経済新聞社 編集委員の田村正之さんが“これから”を読み解くキーワードをわかりやすく解説します。
経済のプロがわかりやすく解説! 経済のこれからを読み解くkeyword
keyword 04「デジタル赤字」
海外のデジタルサービス利用拡大も円安の要因のひとつに
「デジタル赤字とは、海外のデジタルサービスに支払うお金が、海外から受け取るお金より多い状態をいいます。’25年は−6.7兆円(※)と見込まれています。日本でもAmazon、Apple、Netflixなどアメリカのデジタルサービスを利用する機会が年々増えていますよね。これらのサービスに支払われたお金は、最終的にアメリカに流れます。
こうした海外のデジタルサービスは、今や私たちの生活やビジネスに欠かせない“社会インフラ”ともいえる存在。そのため、利用が減る可能性は低く、むしろ今後さらに拡大することも考えられます。もしサービス料金が引き上げられれば、デジタル赤字はますます加速するでしょう。デジタル赤字も貿易赤字の一種なので、赤字がふくらむと円安の後押しの要因となります」
※三菱総合研究所「日本:デジタル関連収支(2025 年)」より
keyword 05「労働分配率・資本分配率」
企業が稼いだ付加価値は、給料だけでなく株主として受け取るのも必要な時代
「企業が稼いだ付加価値は、従業員に給料として配分されるだけでなく、株主へも配当金などとしてわたります。前者の割合が“労働分配率”で、後者の割合が“資本分配率”です。
下のグラフのように、以前は労働分配率が高く、多くが給料として従業員の手にわたっていましたが、最近は資本分配率が上がっています。企業にとって配当を重視することは、経営の安定や株主の期待に応えるために重要。株主への配当を増やす動きは日本の大企業でも増えています。今後社会保険料や税金の負担が増えることで手取り収入が上がりづらいことも踏まえると、働いて給料を得るだけでなく、投資家となり、企業から株主としての利益配分を受けることも考えたいところです」
●日本企業の「従業員への配分」と「株主への配分」の推移
※法人企業統計調査(’24年、資本金1 億円以上)を基に田村さん作成
keyword 06「金の価格高騰」
流通しているお金の量が増えると金の価格も上がる
「今回の金の価格高騰はいくつか要因があり、地政学リスクの高まりで“安全資産”として買われていること、ロシアのウクライナ侵攻後にロシアの中央銀行が海外に預けていたドルやユーロを自由に使えなくなったことから、新興国を中心に中央銀行が購入する商品が米国債から金へと移ったこと、投機目的の購入も増えていることなどです。
それとは別の、金の価格が上がる要因が、世界に流通するお金の総量の増加です。各国の金融緩和や財政拡大によって流通する通貨が増えると、通貨の価値は相対的に下がります。その結果、供給量が限られる金の価値が注目され、価格が上昇しやすくなります。
下のグラフのように、世界のマネーの総量と金価格は、長期的にみると連動してきたことがわかります。金は埋蔵量に限りがある実物資産で、通貨の価値が目減りするインフレ局面では、その対策として保有しておくことは合理的です」
\ 金の価格は世界のマネーサプライ(流通しているお金の総量)に追従 /
※ブルームバーグ, ICEベンチマーク・アドミニストレーション、オックスフォード・エコノミクス、ワールド ゴールド カウンシル「戦略的資産としての金の重要性2022 年」より
「将来どうなるかはわかりませんが、さらに円安・インフレが進んでも大丈夫なように備えておきましょう」(日本経済新聞社 編集委員 田村正之さん)
教えてくれたのは
たむら まさゆき●証券アナリスト、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの資格ももつ。個人投資家の利益を考える目線で、長年にわ
たってインデックス投資の有用性について発信。著書に『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日本経済新聞出版)など。
撮影/柳 香穂 取材・原文/西山美紀 イラスト/小泉由美 ※エクラ2026年5月号掲載