投資家として、毎朝3時45分に起床してトレーニングに励むなどの“習慣化”の人として、各種メディアで大活躍の田中渓さん。金融の第一線にいるプロがおすすめする、誰でもできるインフレに負けない方法とは?
“お金を使わなかった税”に注意。積極的に資産を守る時代に
教えてくれたのは
たなか けい●ゴールドマン・サックスで17年間にわたり投資業務に従事、投資部門の日本共同統括を務め、’24年退職。各種メディアで引っぱりだこの話題の人。著書に『億までの人 億からの人』(徳間書店)。4月からJ-WAVEで新番組がスタート予定。
短期的な予測は意味がない。長期トレンドを見よう
ゴールドマン・サックスに17年勤務、現在は投資責任者などさまざまな顔をもち、金融の最前線で活躍を続ける田中渓さん。数々の荒波を乗り越えてきたからこそ、「短期的な未来予想は誰にもできません」と実感をこめていいます。
「戦争があれば状況は一変しますし、来年の株価がどうなるか、どの資産がのびるかは、プロでも予測はできません。予測しても意味がないのです」。
一方で、長期的に見れば、確実なトレンドはあると指摘します。
「日本で少子高齢化が進んでいること、日本が天然資源が少ない国であることは、今後も変わらないでしょう。そのため労働力減少や医療・介護などの課題があり、多くを輸入に頼らざるをえない状況です。
さらに賃金がのび悩んでいる問題もあります。現在の日本の平均年収は約450万円で、10年前は約580万円でした。非正規雇用の増加などもあり、大きく減少しています。一方、アメリカではこの20年間で物価が約2倍になる中、賃金も同程度にのびています。
米国の水準で考えれば、日本の平均年収は実質的に225万円程度といえるのです。また“デジタル輸入”が増え、円安に傾きやすい構造になっているのもひとつの大きな流れです」
とはいえ、悲観すべきことばかりではありません。「エンターテインメントやロボットなどの分野には日本の成長の可能性があります。こうした長期トレンドを踏まえて、日本だけでなく世界全体に目を向けることが大切。長期的な視点で着実に資産を積み上げていく姿勢が、これからは欠かせないですね」。
そして今、日本は大きな転換点に。
「バブル後の30年間、日本はデフレ時代。ハンバーガーが1個59円のときもありましたが、物価が低い状態が続き、預貯金があれば安心の、いわば“明るい不幸”の時代でした。
しかし現在は、物価も金利も上昇するインフレ局面です。年2%程度のインフレは本来健全な状態なので、この動きは変わらないでしょう。インフレ下では現金を持っているだけでは資産価値が目減りしていき、“お金を使わなかった税”をとられるともいえます。株や不動産などインフレに強い資産を持って、“資産を積極的に守る”ことが必要な時代です」
個別株の大成功者は ごくわずか。投資の基本は分散
変化する時代において、資産を守り増やす必要があるといっても、適していないのが個別株投資だそう。
「投資と聞くと、SNSで話題になるような、株で大成功している人を思い浮かべるかもしれません。でも、それははごく一部。大成功している専業投資家のかたとお話する機会もありますが、彼らは一日中マーケットに向き合う生活を何十年も送り、それを生きがいとしています。そういう人と対峙するのは至難の業ですし、表に出ない失敗した人が無数にいます。
ただ、個別株はむずかしいということを理解したうえで、学びとして少額で試すのはよいでしょう。個別株投資をするとその株の関連ニュースが目に入ってくるようになり、“視力”が上がる効果があります」
普通の人の資産形成にはやはり、インデックス投資がよいと田中さん。
「仕事や家庭があるかたでも、貴重な時間を削らずにできるのがインデックス投資です。私だけでなく、多くの金融のプロが口をそろえていうのが『やっぱり“オルカン”だよね』という言葉。S&P500などに投資をするのもいいですが、より広く、全世界の株式に分散投資できるのはオルカンです。投資をする際には、NISAやiDeCoのお得な税制優遇制度を、ぜひ最大限活用したいですね」
撮影/メグミ 取材・原文/西山美紀 ※エクラ2026年5月号掲載