大人の健康のカギは腸が握っている。健康習慣として、今や定番になりつつある「腸活」。近年、研究が大きく進み、さらにアップデートされた腸活の方法が明らかになってきた。そのカギとなるのは“最強の腸活”として注目されている、体に有用な代謝産物「ポストバイオティクス」。これまでの常識を一歩進めた「新・腸活」をぜひ習慣にして、病気に負けない体づくりを。
1.まずは、発酵性食物繊維を意識して
代表的なポストバイオティクス「短鎖脂肪酸」を作るために必須
毎日の食事で積極的にとりたいのが、菌のリレーの出発点に欠かせない食物繊維。
「ただし選び方が重要で、特にとってほしいのが、腸内細菌のエサになり、短鎖脂肪酸の産生を助ける『発酵性食物繊維』です。代表的なものが、大麦などに含まれるβ-グルカンや、玄米などの穀物に多いアラビノキシラン、ごぼうや玉ねぎなどに含まれるイヌリン、こんにゃくのグルコマンナン、大豆などの豆類に多いガラクトマンナン、りんごやキウイなどの果物に多いペクチンなどです。
同じ発酵性食物繊維でも、このように食品によって主な成分が異なるので、ひとつの食品に偏らず、複数をバランスよくとることが、多様な腸内細菌を育てることにつながります」(薬学博士 國澤 純先生・以下同)。
白米は「冷や飯」にするのが正解!
食物繊維と同じくおすすめなのが、冷や飯。
「白米は冷えるとレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)という成分が増え、これは食物繊維と同じく腸内細菌のエサになり、短鎖脂肪酸を生み出すのに役立ちます。ですから、おにぎりやお弁当のような冷えたごはんはおすすめ。一度冷ましたごはんをレンジで温め直しても、レジスタントスターチは残っています。しっかり冷ますことが大切です」。
2.難消化性オリゴ糖も強い味方!
消化されずに大腸まで届いて「短鎖脂肪酸」になる
食物繊維と同様に、腸内細菌のエサになるのが難消化性オリゴ糖。
「オリゴ糖とは、糖質のうち最小単位の単糖が2〜10 個結びついたもので少糖類とも呼ばれます。オリゴ糖には、胃や小腸で消化される『消化性』と、消化されず大腸まで届く『難消化性』があり、腸内細菌のエサになるのは難消化性のほうです。主なものに、玉ねぎやごぼう、バナナなどに含まれるフラクトオリゴ糖、大豆や豆腐などに含まれる大豆オリゴ糖、牛乳に含まれるガラクトオリゴ糖などがあります。
不足すると腸内細菌が腸管の内側を覆う粘液を食べてしまい、腸漏れ(下記参照)につながることもあります。難消化性オリゴ糖を含む食品も、日々の食事で意識してとりましょう」。
不調の悪循環を招く、“腸漏れ”に注意!
なんだか疲れやすい、だるさが続く……。こんな不調の背景に、“腸漏れ” が潜んでいる可能性があるとか。
「腸壁の表面では、上皮細胞がぴっちりと結合し、異物の侵入を防いでいます。ところがこの結合がゆるみ、すき間から異物が入りやすくなった状態が腸漏れ(リーキーガット)です。異物が侵入しつづけるため、免疫細胞が活性化し、慢性炎症を起こします。
これが疲れやだるさ、微熱などの不調を招くうえ、糖尿病や高血圧など生活習慣病のリスクとの関連も示唆されています。腸漏れの原因は、老化のほか、有害菌の増殖、短鎖脂肪酸を生み出す有用菌のエサ不足、腸管の粘液の減少などです。腸漏れを防ぐためにも、短鎖脂肪酸を十分に生み出せる腸内環境づくりを」。
3.発酵食品もはやっぱり不可欠
「菌のリレー」も促す、頼れる存在だから
体にとって有用な菌を取り入れるうえで欠かせないのが発酵食品。
「主なものに、ヨーグルト、納豆、味噌、しょうゆ、酢、ぬか漬け、キムチ、チーズ、甘酒などがあります。これらの発酵食品には、ビフィズス菌や乳酸菌、糖化菌、酢酸菌、酪酸菌などが含まれ、菌のリレーを促し、短鎖脂肪酸の生成を後押しします。ただし食品からとる菌は“通過菌”といわれ、腸内に長く定着するわけではありません」。
「基本的には3 日程度、長くても2 週間ほどで排出されるため、継続してとることが大切。また、発酵食品は空腹時にとると胃酸の影響で菌が死滅しやすいので、食後にとるのがおすすめ。朝食でとる場合も、ほかの食品を少しおなかに入れてから食べましょう」。
4.ビタミンB₁も不足なく!
「菌のリレー」をサポートする
菌のリレーを円滑に促すうえで、もうひとつ重要なのがビタミンB₁。
「ビタミンB₁は、細胞や菌の糖代謝を助ける栄養素。糖化菌が食物繊維を糖に分解する際にも欠かせません。腸内細菌の中にはビタミンB₁を作れる菌もいますが、酪酸を産生する菌の中にはそれができないものも。そのため不足すると糖化が十分に進まず、酪酸菌も減少します。豚肉や大豆、玄米、ごま、うなぎなどビタミンB₁が豊富な食品も毎日の食事に取り入れて」。
5.ウォーキングなどの有酸素運動が有効
腸のぜん動運動や血流を促す
腸活には運動も不可欠。
「特におすすめなのが、ウォーキングなどの中等度の有酸素運動。適度な運動は腸のぜん動運動や血流を促し、腸内環境を整える土台になります。歩く際にときどきおなかを軽くねじる動きを加えると、より腸が動きやすくなります。また、排便を促したい場合は、腸もみや腸マッサージも効果が期待できます」。
教えてくれたのは
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所副所長。ヘルス・メディカル微生物研究センターセンター長。大阪大学薬学部卒業。東京大学医科学研究所客員教授、神戸大学医学研究科客員教授などを兼任。主な著書に『9000人を調べて分かった腸のすごい世界 強い体と菌をめぐる知的冒険』(日経BP)などがある。
取材・原文/和田美穂 イラスト/わじまやさほ ※エクラ2026年5月号掲載