更年期からリスクが上がる「いつのまにか高血圧」に要注意!今から始められる”血圧対策”は?

久しぶりに血圧を測ったら思った以上に高くてびっくり……。そんな「いつのまにか高血圧」が増えるのが更年期世代。放置すると重大な病気につながることも。そこで、高血圧専門医が原因から対策までを解説。早めのケアでリスク回避を。

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「いつのまにか高血圧」について教えてくれたのは

市原淳弘先生
東京女子医科大学高血圧・内分泌内科 特任教授・病院長補佐
市原淳弘先生
東京女子医科大学高血圧・内分泌内科 特任教授・病院長補佐

いちはら あつひろ●専門は内分泌疾患および高血圧診療で、特に妊娠高血圧、更年期高血圧など。著書は『薬に頼らず7日で血管を変えて血圧は下げられる』(KADOKAWA)など。

高血圧と診断されるのは?

40代から高リスクになる「いつのまにか高血圧」対策を医師が解説 イメージ

診察室血圧が 140/90㎜Hg
家庭血圧が 135/85㎜Hg
を超えたら「高血圧」

血圧とは心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す圧力。収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)で表され、病院での測定値が140/90㎜Hg以上、家庭では135/85㎜Hg以上が高血圧とされる。上が130㎜Hg台になったら要注意ゾーンの「高値血圧」。

当てはまるものがあったら――「もしかして高血圧かも」チェックリスト

しっかりした味が好き。外食が多い
野菜や果物をあまり食べない
座っている時間が長い。運動の習慣がない
睡眠時間が6時間未満のことが多い
週に4日以上お酒を飲む
お風呂はシャワーですませることが多い
ストレスが多い環境にいる
寝る直前までスマホを見ている
なんとなく疲れる。怒りっぽい

高血圧を放置していると「このしめじ」「 どくきのこ」がやってくる……

こ:
の:
し:心臓
め:
じ:腎臓

ど:動脈硬化
く:くも膜下出血
き:急性心筋梗塞
の:脳梗塞
こ:骨粗しょう症

高血圧のリスクを示す言葉が「このしめじ どくきのこ」。高血圧の影響を受けやすい臓器が「このしめじ」、高血圧を放置すると起きやすい病気が「どくきのこ」(上記参照)。高血圧になると動脈硬化が進行し、やがて命にかかわる病気に発展。目の血管が硬くなれば失明のリスクも高まる。高血圧は全身に影響を及ぼす怖い病気なのだ。「70代、80代になると、男性より女性のほうにこれらの症例が増えます。ストレス過多で外食の機会が多い現代社会では、40代でも高血圧になるリスクが高いといえます」。



70代、80代では、女性のほうがこれらの症例が多い!
現代社会では、40代から高リスク

「高血圧は沈黙の病。ある日突然、症状として出てきます。
症状のないうちから、血圧を測る習慣を」
市原淳弘先生)

久しぶりに血圧を測ったら思った以上に高くてびっくり……。そんな「いつのまにか高血圧」が増えるのが更年期世代。放置すると重大な病気につながることも。そこで、高血圧専門医が原因から対策までを解説。早めのケアでリスク回避を。

エストロゲンの減少によって高血圧リスクの男女差はなくなります

高血圧=男性の病気というイメージがあるかもしれないが、更年期以降は女性も血圧が上がりやすくなるという。

「その大きな理由が女性ホルモン、エストロゲンの減少です。エストロゲンには、血管の内側を覆う“内皮細胞”の働きを保ち、そこで作られるNO(一酸化窒素)の産生を維持する役割があります。NOは血管をしなやかに保つ物質で、血管の壁の筋肉をゆるめて広げ、血液が流れたときの圧を逃がします。

ところがNOの産生量は加齢とともに低下するうえ、更年期以降はエストロゲンも大きく減るため、その産生力がますます低下し、血管が硬くなって血圧が上がりやすくなります。また、NOには余分な塩分を腎臓から尿として排出しやすくする働きもありますが、エストロゲンの減少によってこの働きも弱まります。すると体内に塩分がたまりやすくなり、血液量が増えて血圧を押し上げます。

更年期にはこのダブルの変化から血圧が上がりやすいのです。一般的には、男性より女性のほうが血圧が低めですが、50〜60代以降では男女の高血圧患者はほぼ同程度になります。女性は閉経後75%が高血圧になるというデータもあります」

加えて、運動不足・睡眠不足・外食が多い・ストレスが多い環境にいるなどの生活習慣が重なると、さらに血圧が上がりやすいというから要注意。

「運動不足だと血流が滞ってNO産生量が減りますし、睡眠不足やストレスは交感神経を優位にし、血管が縮みやすくなって血圧を上げやすくします。また、塩分のとりすぎは体内に水分をため込みやすくし、血液量を増やして血圧を押し上げます。長時間同じ姿勢でいる生活も血流を低下させ、血管への刺激が減ってNOの産生を妨げます」

気をつけたいのは、高血圧になっても症状がほとんどないことだ。

「高血圧は自覚症状がほとんどないまま進むため、“サイレントキラー(沈黙の殺人者)”とも呼ばれます。気づかないうちに動脈硬化が進み、重大な病気を引き起こすことも。高血圧は、目に見える不調がないため放置しがちですが、病気を未然に防ぐには早めの対策が肝心。まずは自分の血圧を測ってみて、早めに生活習慣を整えることから始めましょう」

血管をゴム風船のように軟らかくする! 血管拡張ガス「NO」

NOが少ないと血管が土管のようにカチカチに 医師が解説。更年期から、実は女性もリスクがグッと上がります! 「いつのまにか高血圧」に要注意 

NOが少ないと血管が土管のようにカチカチに

医師が解説。更年期から、実は女性もリスクがグッと上がります! 「いつのまにか高血圧」に要注意NOがたくさんあると 血管に弾力が 

NOがたくさんあると血管に弾力が

NOは血管の内側を覆う内皮細胞から産生されるガス。血管壁の筋肉に働きかけて緊張をほぐし、血管をしなやかに広げる役割を担っている。

「NOがたっぷりあると、心臓が大量に血液を押し出しても血管がゴム風船のように膨らんで圧力を逃がすため、血圧を一定に保てます。NOが少ないと血管は土管のように硬くなり、たくさんの血液が流れると圧力の逃げ場がなくなって血圧が上がります。高血圧になると動脈硬化が進み、血栓のリスクも高まります。つまり血管の若さと血圧の安定にはNOが欠かせませんが、加齢などの要因で産生量は低下してしまいます」。



NO産生量は加齢によって低下。

20歳を100として、40代で半分、60代で35に!

一般的な高血圧のリスク要因

・ 塩分過多
・ 睡眠不足
・ ストレス過多
・ 座りっぱなし、運動不足

一般的な高血圧のリスク要因には、上記のようなものがある。過度な塩分は体内の水分量を増やして血圧を押し上げ、運動不足は血流を滞らせてNOの産生を低下させる。また、睡眠不足やストレスは交感神経を優位にして血管を収縮させ、血圧を上げやすくする。更年期以降はただでさえエストロゲンの減少から血圧が上がりやすいため、このような生活習慣に当てはまる人は、今すぐ見直しが必要。

加齢、エストロゲンの減少に負けない!生活習慣と食事で血圧は下げられます

加齢やエストロゲンの減少で血圧が上がってきても、生活習慣や運動、食事の見直しなどで十分に改善は可能。市原淳弘先生おすすめ、今日からできる方法を、生活習慣・運動編と食事編に分けてご紹介。

生活習慣・運動編

血流をどんどん促進! 「ずり応力」でNOを産生

血流をどんどん促進! 「ずり応力」でNOを産生

更年期に血圧が上がりやすくなる大きな原因が、エストロゲンの減少によるNO産生量の低下。つまり血圧を下げるカギはNO産生量を高めることだ。その方法とは?

「NOは血管の内皮細胞が血流によって刺激されることで分泌されます。このとき、血管の内壁を血液が“ずりずり”とこするように刺激する力が高いほど、NOの産生量が高まります。これを“ずり応力”といいます。たくさんの血液がサラサラと速く流れるほどずり応力は高まり、NOもどんどん産生されます。その結果、血管が軟らかく広がり、血圧が下がるのです。つまり血圧を下げるには、血流をよくすることが重要なポイントなのです」

では、血流をよくするには?

「体を動かさない生活が続くと、血流が悪くなってずり応力が下がり、NO産生量も減ってしまいます。大事なのは、やはり運動習慣をつけることです。特に関節をよく動かすと、そのまわりに集まる筋肉が働いて血流が効率よく促進されます。運動のほかには、ゆっくり入浴するのも効果的ですね。血流をよくすれば何歳からでもNO産生量は高められるので、ぜひ習慣にしてください」

以下が市原先生おすすめの方法。早速取り入れてみて。

1日「8000歩」歩く

1日8000歩 歩く 医師が解説。加齢、エストロゲンの減少に負けない! こんな運動習慣で血圧は下げられます

NO産生を高めるのによいのが有酸素運動。

「血圧を下げるには1日30分の有酸素運動が有効とされています。なかでも手軽なのがウォーキング。通勤や買い物の行き帰りを活用し、1日8000〜10000歩を目ざしましょう。早歩きのほうが効果的ですが、速すぎると交感神経が優位になるので、いつもより少し速い程度で十分。10分を3回などと分けて歩いてもいいので、早歩きの合計が1日30分以上を目ざすと血圧降下に役立ちます」。

湯ぶねにトータル30分つかる

効率よく血流を促進できるのが入浴。

「湯ぶねに30分つかるだけで、30分の有酸素運動と同程度の効果が期待できます。まず、10分湯ぶねにつかったら、いったん上がって髪を洗い、再び湯ぶねに10分つかります。次にまた上がって顔を洗い、最後にもう10分つかればトータルで30分に。つかるときはゆっくりと深い呼吸を意識しましょう。また、血液がドロドロになるのを防ぐため、ペットボトルの水を持ち込んで、こまめに水分補給を」。

1時間に1回は立って背伸び。ラジオ体操も効果的

NO産生を下げてしまう習慣が、座りっぱなしや運動不足。

「デスクワーク中心の生活は運動量が減りがちなので、1時間に1回はトイレに立つなどして体を動かしましょう。このとき、背伸びをしたりラジオ体操をするのもおすすめ。関節まわりには多くの筋肉が集まっているので、関節を動かすだけで効率よく血流が促進します。ラジオ体操は全身の関節を動かすので血行促進効果大。第1、第2を行うと全身運動になります」。

スクワットをする

スクワットをする 医師が解説。加齢、エストロゲンの減少に負けない! こんな運動習慣で血圧は下げられます

NO産生を高めるにはスクワットも効果的。

「スクワットは、太ももの大腿四頭筋やハムストリングスといった体の中でも特に大きな筋肉が鍛えられるうえ、股関節や膝関節も動かすので、血液を効率よく全身にめぐらせることができます。最初は5回からでもいいので、徐々に回数を増やし、1年後には自分の年齢分の回数ができることを目ざしましょう。腰や膝に負担をかけないよう正しいフォームで行うことが大切」。

スクワットのポイント

✓ 腕は前にまっすぐ伸ばす
✓ 背中は丸めない
✓ 膝はつま先より前に出ないように
✓ おしりを突き出しながら、太ももが水平になるまで落とす
✓ 足は肩幅程度に開く

ゆっくり片鼻呼吸をする

ストレスで呼吸が浅くなったときなどに行いたいのが片鼻呼吸。

「深い鼻呼吸は副交感神経を優位にし、血圧を安定させる効果があり、片鼻ずつ行うことで呼吸がより深くなります。方法は、目を閉じてリラックスし、鼻から2〜3回深呼吸。次に右の親指で右鼻を押さえ、左鼻からゆっくり息を吸い込んだら両鼻をつまんで息を止めて数秒キープ。今度は左鼻だけふさいで右鼻から細く長く吐き出したら、息を止めて、今度は右鼻から吸い、左鼻から吐き出します。 これを2〜3回繰り返しましょう」。

食事編

血液中のナトリウム濃度を適正に保って血管がパンパンにならないように

食習慣で血圧上昇を招く原因になるのが、塩分のとりすぎ。

「塩分を多くとると血液中のナトリウム濃度が上がり、それを薄めようとして周囲の組織から水分が血管内に取り込まれます。その結果、血液量が増えて血管にかかる圧が高まり、血圧が上がるのです。だからこそ塩分は控えめにすることが大切。

日本高血圧学会の塩分推奨値は男女とも1日6g未満ですが、日本人の平均摂取量は約11gと多いのが現状。和食は味噌やしょうゆなど塩分の多い調味料を使うことが多いうえ、かまぼこなどの加工食品にも塩分が多いので要注意。また、外食が多いと、1日の塩分摂取量が15〜16gにまでなってしまうこともあるので気をつけましょう」

さらに意識したいのが、“塩出しミネラル”をとること。

「塩分控えめを目ざすのと同時に、“塩出しミネラル”をとるのもおすすめ。“塩出しミネラル”とはカリウム、カルシウム、マグネシウムです。これらは腎臓に働きかけ、ナトリウムを尿から排出するのを促します。食事や運動などの生活習慣を改善すれば、血圧は年単位で下がっていきます。正常値に戻るまでは早くて2年弱ほどかかることが多いですが、気づいたときが始め時。高値血圧の段階から取り組むのが理想的です」

一番は減塩。1日6gを目ざしたい

一番は減塩。 1日6gを目ざしたい 医師が解説。加齢、エストロゲンの減少に負けない! こんな運動習慣で血圧は下げられます

塩分摂取量はさまざまな工夫で減らすことが可能。

「塩分が多い食品を控えめにすることはもちろん大事。減塩しょうゆなど減塩調味料を使うのもよいですが、薄味だともの足りなさを感じ、たくさん使ってしまうことがあり、結果的に塩分摂取量が増えることもあるので注意。また、料理にハーブやスパイスを使ったり、お酢やレモンなどの酸味をプラスしたり、だしをきかせたりすることで、塩をたくさん使わなくても満足感を高められます。こうした方法を続けると徐々に薄味に慣れていきます。シンプルに食事量を少し減らすだけでも減塩になりますよ」。

「塩出しミネラル」をしっかりとる

「塩出しミネラル」をしっかりとる 医師が解説。加齢、エストロゲンの減少に負けない! こんな運動習慣で血圧は下げられます

毎日の食事に取り入れたいのが塩出しミネラルを含む食品。

「カリウムは野菜や果物、海藻などに多く含まれます。ただし果物は食べすぎるとカロリーオーバーになりやすいので、野菜を中心にとりましょう。カリウムは水溶性で、ゆでると水に溶け出してしまうので、加熱するなら電子レンジや蒸し器での調理がおすすめ。スープに入れて汁ごととるのも◎。また、カルシウムは牛乳や乳製品に豊富。牛乳と血圧の関係を調べた調査では、牛乳の摂取が多いほど血圧が低いというデータも。そしてマグネシウムは、にがりが多い木綿豆腐が手軽にとれておすすめです」。

体表面積が大きいと、心臓ががんばって血圧が上昇。適正体重をキープすることも大事

実は肥満も高血圧のリスクを高める要因。

「肥満になると体表面積が広くなり、体の隅々に血液を送ろうと心臓ががんばって押し出すため、血圧が上がりやすくなります。また、脂肪細胞から血管に炎症を起こすホルモンが分泌され、血管を硬くする原因にもなります。逆に体重を落とすと血圧は下がりやすくなるので、適正体重をキープすることが大切です」。

病院・薬とのいい付き合い方は?

生活習慣の改善で血圧が下がらなければ、 医師の指示に従って降圧剤でコントロール

生活習慣の改善で血圧が下がらなければ、医師の指示に従って降圧剤でコントロール

高血圧と診断されたら、気になるのが病院や薬との付き合い方。

「高血圧の治療では必要に応じて降圧剤を用います。すぐに処方するのではなく、生活習慣を改善しても下がらない場合に検討します。ただし上が180㎜Hg以上など非常に高い場合は、すぐに治療が必要です。

薬は飲みたくないというかたもいると思いますが、大事なのは薬を飲む飲まないではなく、脳卒中や心筋梗塞など高血圧によってもたらされる深刻な病気を防ぐことです。高血圧を放置して、将来、脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクと比べれば、薬を飲み続けるメリットのほうが大きい。

服用する場合も定期検査を行いながら進めるので、自己判断でやめず、うまく血圧をコントロールしていきましょう。なかなかむずかしいのですが、生活習慣、食事の改善をかなりしっかりやって血圧が下がれば、薬をやめてOKということもありえます」。

取材・原文/和田美穂 イラスト/AZUSA ※エクラ2026年6月号掲載

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