体や心が揺らぎやすい更年期世代。夏は低気圧や酷暑などが重なり、さらに不調が続出。その背景にあるのが自律神経の乱れ。実はちょっとしたことで乱れてしまう繊細な自律神経。現代社会には自律神経を乱す原因が多い。どんな原因があるのか、自律神経研究の第一人者、小林弘幸先生に聞いた。
教えてくれたのは
自律神経研究の第一人者としてアスリートなどへのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。著書は『科学的に証明された 自律神経を整える習慣』(アスコム)など。
自律神経はなぜ乱れる?
自律神経が乱れる最大の原因はストレス。更年期には特に注意
小林先生によると、自律神経を乱す特に大きな原因は、3つあるそう。
「まず1つ目がストレス。仕事や人間関係など、さまざまな理由でストレスがかかると交感神経が過剰に優位になり自律神経が乱れます。2つ目が不規則な生活。自律神経は変化が苦手で、起床や就寝、食事などの時間が毎日バラバラだと、自律神経は乱れやすくなります。3つ目は運動不足。体を動かさないと血流が悪くなり自律神経を乱す原因になります」
また、夏は特に自律神経が乱れる季節。
「屋外の猛暑と室内の冷房による寒暖差が自律神経を過剰に働かせ、乱れの原因に。熱帯夜による睡眠不足も影響しますし、梅雨や台風で気圧が下がるときも自律神経が乱れがちです。さらに自律神経の大敵が“脱水”。夏は汗をかいて脱水状態になりやすく、すると血流が悪くなり自律神経がうまく働きにくくなります」
加えて、加齢や更年期の影響も大きい。
「女性は40代以降に副交感神経の働きが急激に衰え、交感神経優位に偏りやすくなります。また、更年期は女性ホルモンの急激な減少から自律神経が乱れやすい時期。50歳前後は介護などさまざまな問題からストレスを抱えやすいことも重なり、バランスをくずしやすくなります」
このように自律神経を乱す要因は多数。
「ただし、気候や年齢などは変えられなくても、生活リズムを整えるなど日々の工夫で自律神経は自分で整えることができます。できることから取り入れて、夏も更年期も上手にのりきりましょう」
当てはまるものがあったら自律神経乱れてるかも? 「自律神経チェックリスト」
☑寝つきが悪い。夜中に起きてしまう
☑寝る直前までスマホを見てしまう
☑食欲があまりない
☑食事の時間が定まっていない
☑腰痛、肩こり、めまいがある
☑おなかがゆるい、便秘を繰り返すことがある
☑最近、空や景色をゆっくり眺めていない
☑仕事に行くのに不安を感じる
☑ついエスカレーターを使ってしまう
梅雨・酷暑による影響は?
気圧変化や寒暖差などで自律神経が疲弊し、夏バテ・だるさを招く
梅雨時から夏は自律神経が乱れやすい時期。
「梅雨時は気圧の変化が続き、低気圧になると交感神経の働きが鈍ってだるさや重さを感じやすくなります。また、耳の内耳が気圧変化を感知して過剰に興奮することで自律神経のバランスがくずれ、頭痛やめまいなども起きがちです。さらに夏は酷暑で、体が熱を逃がそうとすることで副交感神経が過剰に優位になり、夏バテやだるさが生じやすいうえ、室内外の寒暖差も、体温調節のために自律神経がフル稼働して疲弊する原因に。また、熱帯夜による睡眠不足も自律神経を乱します。脱水を起こすと血流が悪化して余計に自律神経が乱れるので、500mLのペットボトルを2本、毎日飲みきることを習慣に」。
加齢・更年期の影響は?
40代以降は交感神経優位に傾き、エストロゲンの減少も自律神経を乱す
加齢や更年期も自律神経を乱す原因。
「女性は40代になるころから副交感神経の働きが衰え、交感神経優位に偏りがちになります。血流が悪くなって不調が起きやすくなるうえ、心身が休息モードになりにくく、不眠やイライラなども招きやすくなります。また、更年期はエストロゲンの減少によって自律神経が乱れ、ほてりや動悸、情緒不安定といった更年期障害が出やすくなります。これらは自律神経失調症の症状と重なります。この場合、婦人科での治療とともに、自律神経を整える習慣を取り入れることでも緩和しやすくなるので、実践してみてください」。
「まずは生活のリズムを守ることがとても大事。ただし調子が悪いときは必ずあります。そんなときに自分でカバーできる方法を知っておくと強いです」(小林弘幸先生)
自律神経の「へー!」となる話
自律神経が整っている地域は四国
小林先生の研究チームによると自律神経のトータルパワーが最も高い地域は四国なのだとか。
「四国は年間を通して温暖な気候です。また、’17年の警視庁の発表では検挙件数が最も少ないのは四国でした。温暖で安心して過ごせることが、自律神経のトータルパワーが高い理由だと思われます。逆に最も低いのは多忙な関東でした」。
木曜日は自律神経が乱れがち
小林先生の研究チームの調査で、自律神経の働きが最も下がるのが木曜だと判明。
「平日の疲れは月曜から徐々に蓄積されていくので、普通に考えるとピークは金曜になるはず。ところが金曜は“明日は休みだ”と思うことで自律神経の状態が回復。そのため自律神経の働きが最も低下するのは木曜。毎週木曜はリセットデーにして休息を」。
自律神経が整う音は川のせせらぎかと思いきや……
音楽も自律神経を整えるのに役立つが、どんな音楽かが重要。
「川のせせらぎのようなヒーリングミュージックがよいかというと、そうでもありません。効果的なのはロックのようなテンポやビートが一定に保たれた曲。交感神経が鎮まり、副交感神経優位に切り替わります。ただし寝る前に聞くなら、ゆっくりしたテンポの曲に」。
取材・原文/和田美穂 イラスト/SAITO KANAE ※エクラ2026年7・8月合併号掲載