【文芸エクラ大賞2026】本でしか味わえない世界がある! 50代女性の必読書を厳選

手にとってページをめくるだけで日常を忘れさせてくれる本。浸る喜び、好奇心の芽生え……あなたに何かをもたらしてくれる夏の読書体験をぜひ。

contents

文芸エクラ大賞とは?

私たちは人生のさまざまなことを本から学び、本を身近な存在に感じてきた世代。エクラでは、そんな読者の皆さんに心からおすすめしたい一冊を届け、改めて読書の喜びと、本がもつ力を感じていただきたいという思いから、’18年に「文芸エクラ大賞」を創設。

第9回となる今回の選考対象は、’25年6月から’26年5月までの一年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者の心に切実に響き、「今こそ読んでほしい」と本音でおすすめできる本。エクラ書評班が厳選した、絶対に読んでほしい「大賞」をはじめ、ほかにも注目作や、書店の目利きによるイチ押しの本もご紹介。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!

第9回 文芸エクラ大賞発表!

この一年間に出版された本で、自身をもっておすすめする“推し本”を、エクラ書評を担当している文芸評論家とライター、担当編集者が熱く討論。第9回文芸エクラ大賞には窪 美澄『給水塔から見た虹は』が選ばれた。

【大賞】『給水塔から見た虹は』

『給水塔から見た虹は』

窪 美澄 集英社 ¥2,090

中2の桐乃が暮らすのは郊外の古い団地。さまざまな国にルーツをもつ住民もいて、彼女の母親はスーパーで働きつつ、外国人を助ける活動に熱心。桐乃はそんな自分の環境がいやで、団地から早く出たいと思っていた。一方、桐乃のクラスメイトのベトナム人・ヒュウはいじめの標的になっているうえ、母親からはネグレクト状態。あるできごとをきっかけに距離を縮めるふたりだったが……。思春期の葛藤を社会問題とともに描いた感動作。

このリアリティは小説じゃないと書けない。外国人との共生を考える”課題図書”に!
文芸評論家 斎藤美奈子

法律が問題? 個人が問題? 悶々と考えることが大事なのかも

―書評ライター 山本圭子

技能実習生の現実など、知っていたはずの問題が痛みを伴って迫ってきた
―書評ライター 細貝さやか

ひと夏で得がたい経験をした思春期のふたり。彼らの成長を信じたい!
―編集 K野

受賞コメントをいただきました! 作家・窪 美澄さん

作家・窪 美澄さん

撮影/大槻志穂

デビュー作から数多く、団地を舞台に小説を書いてきました。今の団地は、日本の方だけでなく、いろんな国の人、いろんな状況にある人たちが暮らしています。その様を小説に書きたいと思いました。年齢を重ねると、人は居心地のいい世界に閉じこもってしまいがちです。それも悪いことだとは思いませんが、まわりの世界に目を向けるという姿勢だけは忘れたくないと思います。同じこの世界に生まれてきたのだから、できることなら手を取り合って生きていきたい。そんな想いを抱えながら生まれた作品です。読んでいただけたらうれしいです。

▼4人の選者(敬称略)
文芸評論家 斎藤美奈子
エクラで「オトナの文藝部」を連載中。本や新聞、雑誌などで活躍。文学や社会への鋭い批評が支持されている。

書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。

書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。

書評担当編集 K野
女性誌で書評&作家インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。

歴史を振り返る本、現代を見つめる本に力作が

K野 昨年は戦後80年。そのせいか、この一年を振り返ると昭和史や戦争
を描いた小説が目立ちましたね。

山本 リアルさ重視のものが多いジャンルですが『デモクラシーのいろは』は女性4人が戦後民主主義のレッスンを受けるという異色のエンタメ。

斎藤 日本の民主主義は戦後タナボタ式に手に入ったものだったから、国民に浸透しにくかった。そこに着目した秀逸な設定でしたね。

細貝 どんでん返しもあり、感動もので終わらないラストが痛快です。

K野 戦争を描いた小説では『DANGER』が出色。日本のバレエ創世期の話も織り込まれて新鮮でした。

細貝 著者の村山由佳さんのお父さまがシベリア抑留経験者で、お父さまの手記を読んで執筆したのだとか。圧倒的なリアリティでした。ミステリー『百年の時効』も昭和以降の事件史がからめられてリアリティ抜群だった本。事件の解決をあきらめない刑事たちに胸が熱くなりました。

山本 現代ものでは『給水塔から見た虹は』が必読。中2のふたりの行き場のなさに心が震えました。

細貝 “外国人を排斥するつもりはないけれど身近で外国人がらみのトラブルがあるとストレスがたまる”という話をよく聞きますが、主人公の桐乃もそう。なのに彼女の母親は、娘のことが二の次になるほど外国人を助けるボランティアに熱心。桐乃が不満を抱え込むのもわかります。

斎藤 彼女と同じ団地に住むヒュウも、家族のことなどで鬱屈を抱えている。その悩みの源には、ボートピープルだった祖父の存在がある。外国人問題には長い歴史があります。「ルーツが違う人たちとの共生を一からみんなで考えようよ」という強いメッセージ性を感じますね。

K野 読み味は違うものの『#台所のあるところ』も現代を映し出した連作短編集。台所は使う人の人生そのものと思えて共感度が高いのでは。

斎藤 原田ひ香さん、うまいですよね。安定感があります。

山本 『劇場という名の星座』も珠玉の短編集。帝国劇場の雰囲気を再現していて独特の世界観に浸れます。

すき間時間でも読めるエッセーにはこんなおもしろさも

細貝 外国文学のおすすめはドイツの現役裁判官によるミステリー『暗黒の瞬間』。正当防衛や復讐など「人が一線を越えること」について鋭く問うてきて、心揺さぶられました。

K野 『国宝』が大ヒットした吉田修一さんの『タイム・アフター・タイム』は久しぶりに読んだ恋愛小説。読後感がとてもよかった。

山本 主人公ふたりの青春時代と20年後が重なるように書かれていて、人生の厚みを感じましたね。

斎藤 新人の作品ながらおもしろいと思ったのが『ギアをあげて、風を鳴らして』。主人公は10歳なのに新興宗教の教祖的存在という設定でインパクト大。一度信じると脱会しにくく、その後の精神的な解放もむずかしいのが宗教ですが、その特異な性質がよくわかりました。

細貝 同級生のもうひとりの主人公も家族の問題で悩んでいて、ふたりに芽生えた友情が個々を強くする。彼女たちなら大丈夫と思えましたね。

K野 エッセーも胸に響く作品が多かった。ジェーン・スーさんの『介護未満の父に起きたこと』は身につまされました。
 
斎藤 親本人と子供がどの段階で“ひとりでは無理”と判断してどう受け入れるか。考えさせられますね。

細貝 愉快だったのが『とんでもないサバイバルの科学』。「恐竜がいる時代にタイムトラベルしたらどう生きのびる?」などの問いに科学的に答えていて家族で読むのによさそう。

山本 ノンフィクションでは資本主義が招いた気候崩壊とその先を予測した『人新世の「黙示録」』が忘れられない。危機を感じるだけでなく「今私たちにできることは」と身近な人と話すようになりました。

K野 さて、今年の大賞作品は……。

細貝 日本は人手不足なのに外国人との共生問題は年々深刻になっている。まさに今の問題をとらえていたのは『給水塔から見た虹は』でしたね。

斎藤 むずかしい問題ですが、個人の物語にしたからこそ複雑な背景が見えてくるし、それでも生きていくことの大切さも伝わってくる。これが大賞にふさわしいのでは。

山本 私も同感です。

K野 それでは満場一致で『給水塔から見た虹は』を大賞にしましょう。今年も充実のラインナップになったと思います!

【短編賞】作家の個性が凝縮!

『#台所のあるところ』『劇場という名の星座』

『#台所のあるところ』

『#台所のあるところ』

あなたが知る人に似ている!? 主人公たち
原田ひ香 文藝春秋 ¥1,980
4人の子供を育てるシングルマザーの台所、タイパ・コスパ重視男と同棲中のOLの台所など、5人の台所の風景と個々の事情をゆるやかにつなげた連作短編集。「ほろ苦い話、心温まる話、ちょっと怖くなる話……最後には驚きの展開も!」(K野)。

『劇場という名の星座』

『劇場という名の星座』

帝国劇場がきらめく場所だからこそのドラマ
小川洋子 集英社 ¥1,925
「本当にあったと信じたくなる、虚実のあわいにあるような話ばかり。著者の想像力に脱帽」(山本)。表舞台に立つ人、案内係、観客など、帝国劇場に特別な思いを抱く人々を描いた、ひそやかな物語8編を収録。休館中の劇場の再開が待ち遠しくなる!

【長編賞】暑さを忘れて没入必至!

長編賞

『DANGER』

『DANGER』

過酷な運命を生きぬく人々に感動!
村山由佳 新潮社 ¥2,530
編集者の果耶と記者の一平は世界的振付師・久我を取材。日本のバレエと彼の半生について聞くつもりだったが、話は久我の壮絶な戦争体験に及び……。「シベリアには従軍看護婦見習いの人もいたなど、知らなかったことも多く驚かされた」(細貝)。

『デモクラシーのいろは』

『デモクラシーのいろは』

"自分なりに考えること"の大切さが伝わる
森 絵都 KADOKAWA ¥2,310
「物語の中心になる女性4人のキャラがおもしろい。暗くなりすぎず戦争を乗り越えていく姿はドラマになりそう」(斎藤)。終戦の翌年、ある女性たちがGHQの意向で民主主義を学び始めるが、裏にはいろいろな思惑が。予想を裏切る展開で一気読み!

【斎藤美奈子賞】デビュー作にして注目作!

『ギアをあげて、風を鳴らして』

『ギアをあげて、風を鳴らして』

悩める親たちもリアルな、少女ふたりの物語
平石さなぎ 集英社 ¥1,870
小4の癒知は宗教団体の「降り子」。幼いころから決められた暮らしをしていたが、転校生のクミと出会い変わっていく。「新興宗教の核心にストレートに迫り、真実味が感じられた。タイトルの意味がわかるラストもすがすがしい」(斎藤)。

【恋愛小説賞】大人の恋を見直す

『タイム・アフター・タイム』

『タイム ・アフター ・タイム』

東京と長崎を舞台にふたりに流れた時間を描く
吉田修一 幻冬舎 ¥2,420
「痛みを伴う過去があったから今がある。人生への肯定感に拍手!」(山本)。建設会社勤務の尾崎と高校の同級生・久遠は偶然同じプロジェクトを手がけることになるが……。初恋同士だったふたりがかつて起こしたできごとと今を重ねた長編小説。

【ミステリー小説賞】なぜ?が止まらない

『百年の時効』

『百年の時効』

スリルも読後の感動も圧倒的な警察小説
伏尾美紀 幻冬舎 ¥2,310
佃島で起きた殺人事件が未解決のまま50年。令和になって容疑者が変死体で発見され、先輩たちが長年記録した資料を託された女性刑事が動き出す。「伏線が効果的で最後まで緊張感がとぎれない。刑事側だけでなく犯人側の心情の深掘りも見事」(細貝)。

【外国文学賞】価値観を揺さぶる

『暗黒の瞬間』

『暗黒の瞬間』

人は誰でも闇落ちする可能性が?
エリーザ・ホーフェン
浅井晶子/訳
東京創元社 ¥2,530
主人公は長いキャリアを誇るベルリンの弁護士。彼女に弁護士返上を決意させた事件を9つの連作短編として描いている。「行間からにじみ出るのは人に潜む底知れぬ闇。それでも人を信じようとする主人公の苦悩が胸に迫ってきた」(細貝)。

【家族エッセー賞】まっすぐな言葉が響く

『介護未満の父に起きたこと』

『介護未満の父に起きたこと』

サポート方針は“あえてビジネスライク”
ジェーン・スー
新潮新書 ¥990
「連れ合いを失くした親との関係や距離感に悩む友人が多い。私ならどうする、どうしたい?と考えさせられた」(K野)。82歳の父が突然ひとり暮らしに。家事ができない父のケアに奔走した、ひとり娘の5年間の記録。

【ノンフィクション賞】他人事じゃない!

『人新世の「黙示録」』

『人新世の「黙示録」』

世界の終わりは絵空事じゃないという警告
斎藤幸平
集英社 ¥1,870
「ガソリン、薬……あたりまえにあった物の供給が楽観視できない今、将来の方向性を早急に考えるべきと痛感」(山本)。気候崩壊の先には選民ファシズムや戦争が待っている!? それらを止める方策が提示された、気鋭の経済思想家の一冊。

【科学エッセー賞】知的好奇心を刺激

『とんでもない サバイバルの科学』

『とんでもないサバイバルの科学』

伝染病も自然災害もありうる今、読んでおくべき!?
コーディー・キャシディー
梶山あゆみ/訳
河出書房新社 ¥1,870
ロンドンに蔓延した黒死病、ポンペイの火山噴火など歴史上有名な“大ピンチ”にタイムスリップした場合の脱出法を紹介。「科学的知見に基づいた楽しいサバイバル術ばかり。うんちくもたまって得した気分に」(細貝)。

この一年間の、本の話題を総ざらい

この一年間に出版された本で、自信をもっておすすめするエクラ世代への“推し本”は? 文芸評論家・斎藤美奈子さんが世の中の動きとともに解説!

文芸評論家 斎藤 美奈子
斎藤 美奈子
文芸評論家
斎藤 美奈子
文芸評論家

さいとう みなこ●’56年生まれ。’94年『妊娠小説』でデビュー。’02年『文章読本さん江』で小林秀雄賞を受賞。著書に『ラスト1行でわかる名作300選』(中央公論新社)、『絶望はしてません ポスト安倍時代を読む』(筑摩書房)など多数。

「この一年を振り返るにあたり“戦争”ははずせませんね。ここでいう戦争には2種類あって、昭和の戦争と今起きている戦争です」と斎藤さん。

「前者に関しては戦後80年を作家たちが意識したのか、長編小説がたくさん出ました。後者に関しては今日の複雑な国際関係に呼応して、戦争をどう考えるかに言及した本が増えました。知識をアップデートする必要性を痛感します」

スマホが普及してSNSなどに時間を使うことが増えた今。AIの急速な発達もあり、私たちの生活はさらなる変化を余儀なくされそうだが、そんな中、本や読書はどうなっていくのだろうか。

「SNSの情報やAIの生成物にも意味はあると思いますが、本当の意味での血肉にはなりにくい気がします。小説のような“よけいな枝葉があるもの”は、コスパやタイパは悪いかもしれませんが、あとあと“効いてくる”ことがある。だからこそ読書は特別なんだと思います」

女同士の共生関係にも多様性が。“シスターフッド小説”が、近年真っ盛り!

シスターフッド小説が近年真っ盛り!

(右から)

『ババヤガの夜』
王谷 晶
河出文庫 ¥748

『カフェーの帰り道』
嶋津 輝 東京創元社 ¥1,870

『謎の香りはパン屋から』
土屋うさぎ
宝島社 ¥1,650

『カフネ』
阿部暁子
講談社 ¥1,870

暴力団会長の娘とボディガードの女性の絆を描いた『ババヤガの夜』が優れた犯罪・ミステリー小説に贈られるイギリスのダガー賞を受賞。大人のシスターフッドがテーマという点でも話題になりました。この一年で売れた本を見てもシスターフッドものが目立ちましたね。昨年の本屋大賞受賞作『カフネ』と『このミステリーがすごい!』大賞受賞作『謎の香りはパン屋から』が’25年のベストセラーランキング上位に。直木賞受賞作『カフェーの帰り道』もそうですが、どれも単なる仲よしではない女性の共生関係が描かれています。背景にあるのは、女性の生き方や境遇が多様になったこと。“恋愛や結婚がむずかしくなった”といわれる今、異性愛には限界が見えてきましたが、同性同士には今までにない関係や展開が生まれ、多彩なドラマが書かれるようになった。この傾向は数年前からありましたが、今年はいちだんと盛り上がりましたね」

昭和100年という節目の年。“戦争小説”の力作が話題に

"戦争小説"の力作が話題に

(右から)

『普天を我が手に』
第一部~第三部
奥田英朗
講談社 第一部〜第三部 各¥2,695

『13月のカレンダー』
宇佐美まこと
集英社  ¥2,200

「いつも世界のどこかで起きている戦争。当事国でなくても影響を受けるので、戦争はずっとある問題だといえます。今年は昭和元年から数えて100周年にあたるせいか、昭和に焦点を当てた大作が多く、それらは必然的に戦争を描くことに。奥田英朗さんの『普天を我が手に』はスピーディな展開でリーダブル。生まれも目ざす道も違う4人を視点に、昭和史のトピックスを入れながら進んでいきます。宇佐美まことさんの『13月のカレンダー』は広島の被爆者それぞれに物語があったことを想像させ、記憶の継承の大切さが伝わってくる。これらからわかるのは、物語でしか表せない戦争の側面や真実があるということ。小説の役割はやはり大きいですね」

今起きていることを知っておくべし! “現代の戦争”を紐解く専門書の新傾向

現代の戦争”を紐解く専門書の新傾向

(右から)

『13歳からの戦争学』
小川和久 アスコム ¥1,870

『14歳からの非戦入門』
伊勢崎賢治
ビジネス社 ¥1,870

『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』
丹羽宇一郎 東洋経済新報社 ¥1,980

「戦後80年がたち、ただ“戦争反対”というだけで大丈夫かなと思う人もいると思う。だからこそ知っておきたいのは“今の戦争”。『13歳からの戦争学』を読むと世界の勢力図が変わり、情報戦やドローン攻撃など戦い方も変わってきたことがわかる。元中国大使の経済人が若者に警鐘を鳴らしたのが『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』。タイトルの理由を広い視野から説明し、タイムアップが迫っていると訴えています。『14歳からの非戦入門』は国連などで紛争処理に携わった著者が説く日本が歩むべき非戦への道。どの本も若い人向けですが大人のニーズも大。“むずかしい問題だからわかりやすく”という書き手の強い思いを感じます」

女性首相誕生の背景にも関係が! 小説から見えてきた"ポピュリズム”

小説から見えてきた"ポピュリズム"

(右から)

『イン・ザ・メガチャーチ』
朝井リョウ
日本経済新聞出版 ¥2,200

『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
李 龍徳
河出文庫 ¥1,155

「今年2月の衆院選は高市首相の“推し活選挙”だったという印象。大衆の人気を得ることが第一というポピュリズムを感じましたね。本屋大賞受賞作『イン・ザ・メガチャーチ』を読むと“推し活も選挙も同じで権力をもつ人が仕組んでいる!?”と思わされる。6年前に出た本で予言書みたいと話題の『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』は日本初の女性首相が超ナショナリストという設定。これらを読むとポピュリズム政治の危うさに気づかされます」

まさに社会現象。映画を見た人は本を買い、聖地巡礼も“映画化”は相乗効果大!

"映画化”は相乗効果大!

(右上から時計まわり)

『国宝』上・下
吉田修一
朝日文庫 上・下各¥880

『新版 遠い山なみの光』
カズオ・イシグロ 小野寺健/訳
ハヤカワepi文庫 ¥1,485

『宝島』上・下
真藤順丈
講談社文庫 上¥924、下¥715

「歌舞伎の世界を描いた大ヒット映画『国宝』は吉田修一の小説が原作。復帰前の沖縄を舞台にした映画『宝島』の原作は真藤順丈の直木賞受賞作です。映画化に際し『国宝』はシンプルな内容にしている一方、『宝島』は原作に忠実。カンヌ国際映画祭に出品された『遠い山なみの光』もそうですが、映画と原作を比べると監督の意図がわかっておもしろい。映画を見た人も、改めて原作を読むと新しい発見があると思います」

ドラマ化も認知度を上げるきっかけに"ディスレクシア"を描く良書に注目が

"ディスレクシア"を描く良書に注目が

(右から)

『うちの子は字が書けない発達性読み書き障害の息子がいます』
千葉リョウコ
ポプラ社 ¥1,540

『宙わたる教室』
伊与原新 
文春文庫 ¥825

『アオハルスタンド~福島県立桜堂高校野球部の誓い~』
持地佑季子 
集英社文庫 ¥847

「ディスレクシアとは字の読み書きに限定した困難がある、学習障がいのひとつ。40人クラスで3人ほどいるといわれ、ドラマ『愛の、がっこう。』や『宙わたる教室』で取り上げられ認知されるように。この障がいが原因で学業不振になる人や知らずに大人になった人が多いとわかったのは最近。ディスレクシアの高校球児の小説や息子が当事者の漫画家の本を読むと、専門家に判断してもらい、支援を受けることがいかに大事かよくわかります」

本の現場のプロが選んだ、この一年の「忘れられない本」

日々、本の情報に触れ、本と読者をつなぐ最前線に立っている書店員のかたがたが、この一年に出版された本の中から、選りすぐりの3冊をセレクト!

紀伊國屋書店グランフロント大阪店 小泉真規子さん
小泉真規子さん
紀伊國屋書店グランフロント大阪店
小泉真規子さん
紀伊國屋書店グランフロント大阪店

『多類婚姻譚』

『多類婚姻譚』

凪良ゆう
講談社 ¥2,090
「結婚したら幸せになれる? してないから幸せじゃない? さまざまな価値観の人々を通して改めて”自分にとっての幸せ”について考えさせられた連作短編集」

『中年に飽きた夜は』

『中年に飽きた夜は』

益田ミリ
ミシマ社 ¥1,760
「鋭い切り口にハッとさせられたり、感動でぐっと胸をつかまれたり、心が奥からじんと温かくなったり。著者と同年代だけに共感度大だったコミックエッセー」

『エピクロスの処方箋』

『エピクロスの処方箋』

夏川草介
水鈴社 ¥1,980
「『医療では、人は救えないんだよ』という主人公。その真意がわかったとき、大切な人が死に直面したら彼のような医師にそばにいてもらいたいと心から思った」
 

有隣堂 アトレ恵比寿店 酒井ふゆきさん
酒井ふゆきさん
有隣堂 アトレ恵比寿店
酒井ふゆきさん
有隣堂 アトレ恵比寿店

『涙の箱』

『涙の箱』

ハン・ガン きむふな/訳
評論社 ¥1,650
「主人公の"影の涙"にハッとしたのは、私も子供のころ泣くのが苦手だったから? "影の涙" を流す人のそばにそれに気づく人がいてくれますようにと願った」

『空、はてしない青』

『空、はてしない青』

メリッサ・ダ・コスタ 山本知子/訳
講談社 上・下 各¥2,310
「若年性アルツハイマーという病気が軸となる物語は読み出すと止まらない! 登場人物や旅の風景が魅力的で、ゴールを決めず"今"を生きる意味を教えられた」

『ハウスメイド』

『ハウスメイド』

フリーダ・マクファデン 高橋知子/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 ¥1,408
「ミリーがメイドとして働き始めた奇妙な家が舞台のミステリー。ハラハラドキドキの展開で気分転換に最適。登場人物が少なく、翻訳本が苦手なかたにもおすすめ」
 

大垣書店書店事業部 中澤めぐみさん
中澤めぐみさん
大垣書店書店事業部
中澤めぐみさん
大垣書店書店事業部

『南洋標本館』

『南洋標本館』

葉山博子
早川書房 ¥2,420
「日本統治下の台湾で植物学者を志した若者ふたりを描いた大作。戦時下で必死に生きる名もなき人たちの姿に胸を打たれた。すばらしい筆力で個人的には直木賞!」

『私たちはたしかに光ってたんだ』

『私たちはたしかに光ってたんだ』

金子玲介
文藝春秋 ¥1,650
「大好きだからこそやめたバンドが10年後、紅白出場と知った瑞葉。彼女が感じた眩(まぶ)しさも苦さもかけがえのないものだと思う。ド直球の青春小説、やっぱりいい」

『風を飼う方法』

『風を飼う方法』

小原 晩
河出書房新社 ¥1,650
「何の変哲もない日常の描写や、何げない会話、風のようにつかみどころのない自然さが積み重なって生まれる唯一無二の物語。いつまでも読み終えたくない一冊」
  

ジュンク堂書店池袋本店 西山有紀さん
西山有紀さん
ジュンク堂書店池袋本店
西山有紀さん
ジュンク堂書店池袋本店

『サチコ』

『サチコ』

群ようこ
幻冬舎 ¥1,870
「大手企業勤めで不自由のない人生だった主人公が、早期退職し町の食堂で働くことに。人は何歳からでも成長できると思え、不器用な彼女を応援したくなった」

『カフェーの帰り道』

『カフェーの帰り道』

嶋津 輝
東京創元社 ¥1,870
「震災や戦争があっても力強く生きる女性たちの物語。日常の喜びや悲しみがていねいに描かれ、温かい気持ちに。大正ロマンやレトロが好きなかたにおすすめ」

『さよならジャバウォック』

『さよならジャバウォック』

伊坂幸太郎
双葉社 ¥1,870
「"暴力夫を殺したのは私?"と途方に暮れる女性。そこから始まるミステリーは疾走感いっぱい。すべての伏線がつながったラストは感動的で思わず泣きそうになった」
 

代官山 蔦屋書店 間室道子さん
間室道子さん
代官山 蔦屋書店
間室道子さん
代官山 蔦屋書店

『傷つきやすいものたち』

『傷つきやすいものたち』

ドナテッラ・ディ・ピエトラントニオ 関口英子/訳
小学館 ¥2,750
「故郷で暮らす主人公と老父、娘、夫との関係は単純な対立構造ではない。生きているかぎり痛みと無縁の世代はないと思わされる。ラストは白日夢のような美しさ」

『ママがロックンロールしてたころ』

『ママがロックンロールしてたころ』

東山彰良
集英社 ¥1,870
「小学生のとき2日間だけ一緒に過ごした母、バイト先の後輩など主人公を成長させた、ただならない女たちが魅力的。実在の名曲もたくさん出てくる青春音楽小説」

『外の世界の話を聞かせて』

『外の世界の話を聞かせて』

江國香織
集英社 ¥1,980
「私設図書館を運営するあやめさんと3歳からそこに入り浸る高校生・陽日を中心に、現代と’70年代の人々を描く。パラダイスのような時と場所を描いた傑作」

撮影/大木慎太郎 スタイリスト/洲脇佑美 取材・原文/山本圭子 ※エクラ2026年9月号掲載

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