【50代の更年期白書】ホルモン補充療法(HRT)とは?上手な取り入れ方を紹介!

産婦人科医 吉野一枝先生はじめ更年期に詳しい婦人科医が治療の第一選択にあげるホルモン補充療法(HRT)。メリットは? リスクは? いつまで続ける? 不安や疑問をクリアに!
産婦人科医 吉野一枝先生

産婦人科医 吉野一枝先生

よしの女性診療所(東京・中野)院長。臨床心理士の資格ももち、ライフスタイルを含めた女性の健康悩みに詳しい。日々の診療に当たる一方、学校などでの講演やメディアを通じて、性教育や女性の健康についての啓蒙も積極的に行う。著書に『40歳からの女性のからだと気持ちの不安をなくす本』(永岡書店)などがある。

更年期症状の対処法としては、最適な選択肢です

ホルモン補充療法は英語で「Hormone Replacement Therapy」といい、頭文字をとってHRTと記される。エストロゲンの急激な低下を、ごく微量のホルモン剤で補う治療法だ。

「更年期の症状は細かくいえば200種類あるといわれていますが、HRTはそのほとんどに効果があります。もっとも顕著に効果が表れるのはのぼせ、ほてり、発汗の三大症状で、HRTを開始して1〜2週間で劇的に改善するという人も多いです。ただ副作用や血栓症のリスクなどから『怖い』というイメージをもつ人も少なくないようですが、それはとても低いリスクですし(下記参照)、メリットのほうがはるかに大きいといえます。なんとなく怖いイメージをもっていた人でも、始めて楽になったことで『もっと早くやればよかった』という声をよく聞きます。エストロゲンを補うという点はピルと同じですが、違いは含まれるエストロゲンの種類と量(ピルのほうが多い)。当院では、40代で始める場合はピルにすることも多く、そうした人は50歳近くになったら閉経しているかどうかを知るために一度ピルをやめてエストロゲン値を計り、閉経していたらHRTに切り替えます。50代で閉経している人の場合は、HRTから始めます。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類がありますが、HRTでエストロゲンを補充する際、子宮がある人の場合は出血コントロールや子宮体がんのリスク低減のためにプロゲステロンを併用する必要があります。薬にはエストロゲン、プロゲステロン各単体のもの、両方が入っているものなど種類があり、薬の形状も錠剤などの内服薬とジェルやパッチなどの外用薬があります。子宮の有無、性格やライフスタイル、病歴などによって選択肢が変わるので、HRTはまさにオーダーメイドの治療法。自分に合った方法を医師と相談して選びます。いずれにしても最小有効量を考えて作られているので、用法用量を守って使えば安全です」

女性ホルモン製剤の種類

【 錠剤 】

【錠剤】
口から飲み、胃腸を通して吸収される。エストロゲンとプロゲステロン両方が一剤になっているタイプもあり、子宮がある人はこちらが便利。胃腸が弱い人は初期の副作用で吐き気がある場合も。

【 ジェル 】

【ジェル】
腕やおなかなどに塗り、皮膚を通して吸収されるため、胃腸や肝臓の弱い人も使用できる。エストロゲンのみのタイプしかないので、子宮がある人はプロゲステロン製剤を併用する必要がある。

【 パッチ、テープ 】

【パッチ、テープ】
下腹部などにはる。ジェルと同様に皮膚を通じて吸収されるため、胃腸や肝臓の弱い人でも使える。はり替えは隔日や週2回など毎日でなくていい半面、はり替えを忘れてしまったり、肌が弱いとかぶれてしまうリスクも。

Q.今のHRTのリスクについて知りたいです(47歳・講師)

ANSWER.副作用は多少あるけれど血栓や乳がんなどのリスクはかなり低いです。
「不正出血の副作用がありますが、“よくないことが起きている”わけではありません。血栓のリスクは0ではありませんが妊娠が13、喫煙が11とするとピルは4。HRTはピルよりもエストロゲン量が少ないのでさらに低いです。また、乳がんリスクも低いことがわかっています。ただし心筋梗塞、脳梗塞、3回以上の流産の経験がある人はリスクが高く、HRTはできません」

Q.ホルモン製剤を飲んでいる間出血がありましたが、大丈夫でしょうか?(55歳・パート)

ANSWER.不正出血は一時的なもの。続くようなら相談を
「HRTでエストロゲンが増えると子宮内膜が厚くなり、それがはがれ落ちるタイミングで出血が起きます。開始2~3カ月は出血がある人が多いよう。そのうち出血は治まっていきますが、薬の種類や使い方を変えることで改善することもあります。ただし、年1回の婦人科検診を受けることは必要。もし、2~3カ月以上続くなら別の病気の可能性もあるので、一度相談を」

Q.HRTをやめると一気に老けるのでは?どこまで継続すべきなのでしょうか?(54歳・会社員)

ANSWER.骨粗しょう症予防などのメリットもあるので更年期以降も続けるのがベター
「HRTには肌の乾燥対策などの効果もありますが、老ける・老けないは本人の意識の問題でもあり、やめて一気に老けるということでもありません。更年期症状の治療としては、更年期が終われば終了しますが、骨粗しょう症予防などのメリットも多いので、細々と続けるのがおすすめです」

Q.HRTと並行してエクオールのサプリメントを飲んでもOK?(54歳・会社員)

ANSWER.併用は避けて! HRTの効果が下がります
「エクオールなど大豆イソフラボン由来のサプリは、エストロゲンのレセプター(受容体)にくっつく力がHRTよりも強く、HRTの効果が出にくいことが。そのため併用はNGです。エストロゲンは量を多くとるほどいいというものではなく、必要最少量でないとかえってデメリットのほうが大きくなってしまいます」

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