久しぶりに血圧を測ったら思った以上に高くてびっくり……。そんな「いつのまにか高血圧」が増えるのが更年期世代。放置すると重大な病気につながることも。そこで、高血圧専門医が原因から対策までを解説。早めのケアでリスク回避を。
「いつのまにか高血圧」について教えてくれたのは
いちはら あつひろ●専門は内分泌疾患および高血圧診療で、特に妊娠高血圧、更年期高血圧など。著書は『薬に頼らず7日で血管を変えて血圧は下げられる』(KADOKAWA)など。
エストロゲンの減少によって高血圧リスクの男女差はなくなります
高血圧=男性の病気というイメージがあるかもしれないが、更年期以降は女性も血圧が上がりやすくなるという。
「その大きな理由が女性ホルモン、エストロゲンの減少です。エストロゲンには、血管の内側を覆う“内皮細胞”の働きを保ち、そこで作られるNO(一酸化窒素)の産生を維持する役割があります。NOは血管をしなやかに保つ物質で、血管の壁の筋肉をゆるめて広げ、血液が流れたときの圧を逃がします。
ところがNOの産生量は加齢とともに低下するうえ、更年期以降はエストロゲンも大きく減るため、その産生力がますます低下し、血管が硬くなって血圧が上がりやすくなります。また、NOには余分な塩分を腎臓から尿として排出しやすくする働きもありますが、エストロゲンの減少によってこの働きも弱まります。すると体内に塩分がたまりやすくなり、血液量が増えて血圧を押し上げます。
更年期にはこのダブルの変化から血圧が上がりやすいのです。一般的には、男性より女性のほうが血圧が低めですが、50〜60代以降では男女の高血圧患者はほぼ同程度になります。女性は閉経後75%が高血圧になるというデータもあります」
加えて、運動不足・睡眠不足・外食が多い・ストレスが多い環境にいるなどの生活習慣が重なると、さらに血圧が上がりやすいというから要注意。
「運動不足だと血流が滞ってNO産生量が減りますし、睡眠不足やストレスは交感神経を優位にし、血管が縮みやすくなって血圧を上げやすくします。また、塩分のとりすぎは体内に水分をため込みやすくし、血液量を増やして血圧を押し上げます。長時間同じ姿勢でいる生活も血流を低下させ、血管への刺激が減ってNOの産生を妨げます」
気をつけたいのは、高血圧になっても症状がほとんどないことだ。
「高血圧は自覚症状がほとんどないまま進むため、“サイレントキラー(沈黙の殺人者)”とも呼ばれます。気づかないうちに動脈硬化が進み、重大な病気を引き起こすことも。高血圧は、目に見える不調がないため放置しがちですが、病気を未然に防ぐには早めの対策が肝心。まずは自分の血圧を測ってみて、早めに生活習慣を整えることから始めましょう」
血管をゴム風船のように軟らかくする! 血管拡張ガス「NO」
NOが少ないと血管が土管のようにカチカチに
NOがたくさんあると血管に弾力が
NOは血管の内側を覆う内皮細胞から産生されるガス。血管壁の筋肉に働きかけて緊張をほぐし、血管をしなやかに広げる役割を担っている。
「NOがたっぷりあると、心臓が大量に血液を押し出しても血管がゴム風船のように膨らんで圧力を逃がすため、血圧を一定に保てます。NOが少ないと血管は土管のように硬くなり、たくさんの血液が流れると圧力の逃げ場がなくなって血圧が上がります。高血圧になると動脈硬化が進み、血栓のリスクも高まります。つまり血管の若さと血圧の安定にはNOが欠かせませんが、加齢などの要因で産生量は低下してしまいます」。
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NO産生量は加齢によって低下。
20歳を100として、40代で半分、60代で35に!
一般的な高血圧のリスク要因
・ 塩分過多
・ 睡眠不足
・ ストレス過多
・ 座りっぱなし、運動不足
一般的な高血圧のリスク要因には、上記のようなものがある。過度な塩分は体内の水分量を増やして血圧を押し上げ、運動不足は血流を滞らせてNOの産生を低下させる。また、睡眠不足やストレスは交感神経を優位にして血管を収縮させ、血圧を上げやすくする。更年期以降はただでさえエストロゲンの減少から血圧が上がりやすいため、このような生活習慣に当てはまる人は、今すぐ見直しが必要。
取材・原文/和田美穂 イラスト/AZUSA ※エクラ2026年6月号掲載