【子宮疾患の手術体験手記 後編】念願のロボット支援下による腹腔鏡手術。子宮摘出後4日で社会復帰!

女性特有の病気の中でも、特に40代・50代に多い子宮疾患。忙しさにかまけて症状を我慢し続け、52歳でついにダウンしてしまったA子さん。「ロボット支援下手術」と出会い、完治に至るまでの道のりをリアルに綴る体験手記。

「ロボット支援下手術」で術後4日で復帰!

【体験手記を寄せてくれたかた】

A子さん
A子さん
A子さん

1970年生まれ。現在56歳。大手音楽関連会社に約30年勤務したのち、53歳でフリーランスの音楽プロデューサーとして独立。音楽を中心にさまざまなコンサートやイベントを企画している。

【前回までの話】
52歳の生理中のある日、立ち上がれないほどの貧血に見舞われ、仕事中にタクシーを呼んで病院に行くと、子宮腺筋症と多発子宮筋腫で子宮全体が14cmほどの大きさになっていた。すぐに仕事復帰したいという思いから、大学病院を紹介してもらい、開腹ではなく腹腔鏡での手術を希望したが聞き入れてもらえない。開腹手術になることに納得がいかず、セカンドオピニオンを求めた病院で「ロボット支援下」による腹腔鏡手術が受けられることを知る……
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念願の腹腔鏡手術。「ロボット支援下」なら、傷もほとんどなく日常生活にもすぐ戻れる

腹腔鏡手術で入院中のA子さん

手術翌日、療養中のA子さん

 ロボット支援下での腹腔鏡手術ができると聞いたとき、大学病院でいわれるがままに開腹手術を受けなくてよかった、と心から思いました。

 今井一章先生による手術は、診察を受けた翌月に決行されることになりました。ダビンチ(※)による腹腔鏡手術で、巨大子宮腺筋症・多発子宮筋腫に対して子宮を摘出しました。手術は2時間程度で終了し、痛みや違和感はほとんどありませんでした。術後は驚くほどスム ーズで回復が早く、手術から 3 日目には自宅に帰り、4 日目からは仕事が普通にこなせて買い物にもいける状態にまで体調は戻りました(※個人差はあると思います)。
 
 傷口は、腹部に 4 つの穴とおへその下に 1 センチの切り傷のみ(現在、手術から 2 年半経ち、ほとんど傷あと(穴のあと)は目立たなくなりました)。ダビンチによる手術後の傷は、開腹手術 に比べてかなり小さい傷ですみます。 仕事を持つ女性にとって、仕事を長期休み、職務に穴をあけるのはそれこそ命とりになります。私のような筋腫の大きさでも病院の都合で諦めず、セカンドオピニオンを求めることで、術後の心配も少ない腹腔鏡ロボット手術で開腹をせずに手術を受けることができます。そして、仕事への早期復帰と通常の生活を早急に取り戻す ことができます(ロボット支援下手術は、もちろん保険適用です)。

ダビンチで実際に手術をする今井一章先生

横須賀共済病院で行われている、今井一章先生によるロボット支援下手術の様子

※ダビンチ手術とは
手術支援ロボット「ダビンチ」を使って行う、体への負担が少ない腹腔鏡下手術方法のひとつ。ロボット手術といっても、ロボットが自動で手術をするのではなく、手術を行うのはあくまでも医師。医師がサージョンコンソールという操作席に座り、3D拡大画像を見ながらロボットアームを動かして、細かい操作を行う。お腹に小さな穴を数か所開けて手術を行うため、開腹手術に比べて傷が小さい、術後の痛みが少ない、回復が早いといったメリットが期待できる。婦人科良性腫瘍(子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、異形成など)のほか、婦人科がん(子宮体がん、子宮頸がん)に対してもロボット支援下の腹腔鏡手術が可能な場合がある。

更年期症状、性生活など、子宮摘出後の“変化”は?

 私の場合は筋腫が直径 14cm と大きくなったため、筋腫とともに子宮も摘出するという手術になりました。 子宮摘出などといわれれば、女性であれば、誰でもショックを受ける一大事ですし、若い人であれば出産できなくなるというダメージも受けますが、女性の機能としては出産以外は何の支障もなく通常に戻れます。 子宮をとったらヒゲが生えてきた⁉ 男っぽくなってきた⁉ などということは、まったくの都市伝説であり、 実際には何も変わりません。

 また、子宮がないわけですから、子宮がんのリスクはなくなります。肌や髪の毛、そのほか女性ホルモンの異常などは(私には)まったく見受けられず、しいていえば、若干の更年期症状に似たホットフラッシュがあるくらいです。子宮をとることによる世間の噂やネットの誤情報で、過剰に不安になる必要はまったくないと思います。

 なお、子宮摘出に際し、卵巣も一緒に摘出することを提案する先生もいらっしゃいますが、これにはメリット デメリットの両方の考え方があります。私の場合は、卵巣は残しました。 

●卵巣摘出のメリット:今後の卵巣がんのリスクをなくせる。

●卵巣摘出のデメリット:卵巣は女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンを産生するため、ホルモンバランスが崩れる。

 さらに、子宮摘出の場合、膣が短くなってしまうことがあるそうです。これは、術前に主治医の先生に膣を長く残してほしい旨を伝えることで回避することができますし、性生活や術後の腟の違和感などが心配な場合は、術前に主治医へ率直に相談しておくことが大切です。私の場合は、手術をしてもらった病院と並行して通っていたレディースクリニックから、このようなアドバイスを受けました。前出の主治医であり手術執刀医の今井一章先生は「子宮・卵巣疾患で悩んでいるかた、子宮摘出に不安と誤解を抱いているかたに、ロボット支援下手術の優位性を是非知っていただきたい」とおっしゃっていました。私自身も、手術後の早い回復(治癒)力と通常生活への復帰の速さを身をもって体験しました。

【主治医のお話】 
横須賀共済病院 産婦人科部長 今井一章先生
(A子さんの手術当時は、横浜市立市民病院 婦人科内視鏡手術センター長)

横須賀共済病院 産婦人科部長 今井一章先生
今井一章先生
横須賀共済病院 産婦人科部長
今井一章先生
横須賀共済病院 産婦人科部長

日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医、ロボット手術認定医、婦人科ロボット支援手術プロクター。'07年、聖マリアンナ医科大学医学科卒業。'20年、横浜市立市民病院 副医長、'25年、同婦人科担当部長・婦人科内視鏡手術センター長を経て、'26年より横須賀共済病院 産婦人科部長。

 

低侵襲手術による子宮摘出は、早期の社会復帰にもつながる

 A子さんは、「できれば開腹手術ではなく、体への負担が少ない腹腔鏡下で手術を受けたい」と希望されて受診されました。これまでの検査結果やMRI検査を確認すると、たしかに巨大腺筋症、多発筋腫が合併していましたが、「ダビンチを使用したロボット支援下手術による子宮全摘術は可能ですよ」と判断してお伝えしました。また、A子さんから「長い入院は極力したくない、できるだけ早く仕事に復帰したい」との希望があったため、「ロボット支援下手術であれば、術後翌日より歩いてもらって、3日目で退院できます。経過良好であれば、術後1週間目以降で、ハードでない仕事であれば可能です(個人差はありますが)」ともお伝えしました。A子さんの場合は、術後の経過も良好で、早期退院・早期社会復帰に繋がりました。仕事や家庭の事情でできるだけ早く日常生活に戻りたいかたにとって、低侵襲手術は大きな選択肢のひとつになります。

  大きな子宮筋腫や子宮腺筋症などでは、「開腹手術が必要です」と説明されることがあります。もちろん、開腹手術が最も安全な選択となる場合もあります。一方で、ロボット支援下手術への深い理解と十分な経験、そしてチームとしての対応力があれば、これまで低侵襲手術は難しいと考えられていた疾患でも、開腹せずに安全に子宮全摘術を行える場合があります。

 また、低侵襲手術は良性疾患だけのものではありません。子宮体がんなどの一部の婦人科がんに対しても、病状や進行度を慎重に判断したうえで、ロボット支援下手術や腹腔鏡手術など、体への負担を抑えた手術が選択できる場合があります。

 「vNOTES」という新しい低侵襲手術も。さらなる早期回復の可能性が 

 さらに近年は、「vNOTES」という新しい低侵襲手術も広がりつつあります。vNOTESとは、腟から腹腔鏡やロボット支援内視鏡機器を入れて行う手術方法で、お腹に傷をつけずに子宮や卵巣の手術を行うことができます。適応は慎重に判断する必要がありますが、適切な患者さんに行うことで、傷あとがなく、術後の痛みを最小限とし、より早期回復につながる可能性があります。

開腹手術の傷

開腹手術の傷

ロボット支援下手術の傷

ロボット支援下手術の傷

vNOTESでは傷なし

vNOTESでは腹部に傷はつかない

 私が大切にしているのは、単に新しい手術を行うことではありません。患者さんの病気を安全に治療すること、そして術後の痛みや傷、入院期間、仕事や家庭への影響をできるだけ少なくすることです。

 「開腹しかない」といわれた場合でも、それが唯一の選択肢とは限りません。病状によっては、ロボット支援下手術やvNOTESなど、体への負担を抑えた方法が選べることもあります。「自分にはどのような選択肢があるのか」を知っていただきたいと思います。不安を抱えたまま手術を決めるのではなく、低侵襲手術の経験がある医師に相談してみることも大切です。

注1 本記事はA子さんが手術を受けた当時の体験に基づくものです。手術の適応や診療体制は、医療機関、患者さんの病状、術者および医療チームの経験などによって異なります。

 

注2 今井一章先生は、現在、横須賀共済病院 産婦人科部長を務めています。横須賀共済病院では、巨大子宮筋腫や子宮腺筋症、強い癒着を伴う子宮内膜症など、一般には開腹手術が検討されることの多い症例に対しても、患者さんの病状を慎重に評価したうえで、ロボット支援下手術を含む低侵襲手術に取り組んでいます。  

監修、資料写真提供/今井一章先生(横須賀共済病院) 

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