年齢とともに「疲れやすい」「太りやすくなった」「姿勢が悪くなった」と感じていない? もしかすると、体幹の衰えが関係しているかも。体幹は、立つ・歩く・座るなど日常の動作を支える大切な部分。衰えると、猫背や疲れやすさ、ぽっこりお腹などにつながることも。40代・50代が知っておきたい体幹の基本から、自分の体幹力をチェックする方法、トレーニング前に行いたいストレッチまでをまとめてご紹介します。
40代50代こそ「体幹」が大切な理由とは?
【教えていただいた方】
SAWAKI GYM代表取締役。1991年よりトレーナー活動をスタート。静岡県の整形外科病院で、リハビリ後の患者からトップアスリートまで医学的根拠に基づき指導。その後、専門学校講師を12年、トレーナー団体理事を14年務め、のべ1万人以上を指導。
「体幹」は、日常生活の基本動作すべてにかかわる重要な部分。衰えるとさまざまなトラブルの原因に
まずは、“体幹”とはどの部分を指すのか、改めて伺いました。
「体幹とは、頭と腕、脚を除いた胴体部分を指します。肩関節や股関節まわりの筋肉、背中の筋肉などまでを含めて体幹になります」(澤木一貴さん)
赤枠の中部分が体幹
「体幹がなぜ大事なのかというと、歩く、座る、立つという日常生活の中での基本的な動作にはすべて体幹がかかわっているからです。例えば、体幹の筋肉のひとつに、お腹の深部にある腹横筋という筋肉があります。この筋肉は“始動筋”という異名があるように、ペンを持つときにも手より先にここに刺激が入ります。この筋肉のおかげで手足を正常に動かせるのです。
この筋肉が衰えると体幹部以外の末端の筋肉に負担がかかり、膝が痛い、腕が痛いといったトラブルが起きやすくなります。体幹に力が入らないと、末端の筋肉を使って無理やり体を動かそうとするため、体を痛めてしまうのです。逆に言えば、体幹さえしっかりしていれば、脚を上げるのも腕を振るのも楽になり、歩く、座る、立つなどといった日常動作のすべてが快適になるのです。
また、体幹は姿勢や呼吸と深くかかわっています。体幹の筋肉が衰えると猫背になりやすくなったりするなど、姿勢がくずれるため、背骨や肋骨、肩甲骨などといった骨が本来の正しい位置からずれてしまいます。すると呼吸が浅くなり、酸素が体の細胞の隅々まで行き渡りにくくなり、老化が進んだり、疲れやすくなったり、代謝が落ちて太りやすくもなってしまうのです。さらに、お腹がぽっこりと出たり、お尻が垂れたりというボディラインのくずれも招きます。
逆に言えば、体幹を鍛えれば姿勢が整い、呼吸が深くなるので、代謝が上がって太りにくくなるうえ、疲れにくくなり、若々しさもキープできます。お腹が引き締まり、垂れたお尻も引き上がりやすくなります。このように、体幹を鍛えることは、“健康長寿”と美ボディキープの基本なのです」
体幹が弱いと…
・太りやすい
・猫背になる
・肩こりや腰痛になりやすい
・疲れやすい
・ぽっこりお腹になる
体幹が強いと…
・太りにくくなる
・姿勢がよくなる
・肩こりや腰痛が改善する
・疲れにくくなる
・歩きやすくなる
・ボディが引き締まる
体幹の6つの筋肉を鍛えることがトレーニングのポイント
では、体幹を鍛えるには、どの筋肉を鍛えればよいのでしょうか。
「体幹を鍛えるうえで重要な筋肉は6つあります。まずひとつめは、お腹の深部にある腹横筋。この筋肉はお腹をベルトのように包んでいて、腹圧を高め、体幹を安定させる役割があります。ふたつめは、お腹を縦に走っている腹直筋。体を前に曲げるときに使う筋肉です。3つめは、体を横に倒すときや、ひねるときに使われる脇腹の腹斜筋。4つめは、背骨を支える役割がある脊柱起立筋。5つめは、股関節の伸展や立ち上がるときに使われるお尻の大臀筋。そして6つめが、体幹部の奥にあり、主に脚を振るときに使われる股関節を支える腸腰筋です。
これらの体幹の筋肉は、しっかりと固まっていればいいと思いがちですが、中高年になると固まって動きが悪くなっている場合もあるので、程よい強さと程よい可動域があることがポイントです」
体幹を簡単に鍛えるなら、まずは「呼吸」から
筋肉は加齢とともに減っていってしまうため、運動の習慣がない人は、体幹の筋肉も衰えている可能性大。そこで澤木さんに、そんな人でもやりやすい体幹トレーニングを教えていただきました。
「体幹を簡単に鍛えられる方法が、呼吸です。深い呼吸をすると、腹横筋や横隔膜や肋間筋などが大きく動き、体幹の筋肉を鍛えることができます。呼吸は1日に約2万回もするといわれていますが、普段から深い呼吸を意識すれば、それだけで体幹トレーニングになるのです。
注意すべきなのは、深い呼吸を意識すると腰が反ってしまいがちなことです。腰が反ると、脊柱管狭窄症など腰のトラブルの原因になるのでNG。腰を反らずに、胴体を大きく膨らますように深く呼吸をするのがポイントです。赤ちゃんは、息を吸うと体全体がボールのように膨らむのですが、そのイメージで行ってみてください。日常生活の中で、気づいたときに深い呼吸を意識しましょう」
<体幹を鍛える呼吸法>
1.足を腰幅程度に開いて立ちます。両手を肋骨の下部に当て、鼻から3秒かけて息を吸います。このとき、胴体全体が大きく膨らむのを意識しましょう。
これはNG
息を吸うとき腰を反らしてしまいがちですが、腰を痛めるのでNG。
2.口から6秒かけてゆっくりと息を吐き切ります。このとき肋骨がしぼむのを意識しましょう。これを3回繰り返します。この呼吸を普段、気づいたときにこまめに取り入れましょう。体幹が鍛えられていきます。
初出:OurAge 2025/5/13
体幹ってどこ?7つの筋肉を解説
【教えていただいた方】
「体幹力」をつけるにはアウター&インナーのバランスが大事
体幹力を強くするには、具体的にどのような筋肉を鍛えるとよいのでしょうか? 木場克己さんに聞きました。
「私たちの体の筋肉は、体の表層のアウターマッスルと、深層のインナーマッスルで構成されています(下の図参照)。体幹にも、いちばん表層に外腹斜筋があり、その下に腹直筋と内腹斜筋、さらに深層部には腹横筋や多裂筋、横隔膜、骨盤底筋があります。体幹を強くするには、これらのアウターマッスルとインナーマッスルをバランスよく鍛えることが大事。
なかでも特に重要なのが、お腹の深部で内臓を包み込む腹横筋、背骨に沿って走っていて脊椎を安定させたり動かすときに使われる多裂筋、呼吸のときに働く横隔膜、骨盤内の臓器を下から支える骨盤底筋という4つのインナーマッスルです。この4つは呼吸をすると連携して動きます。
これらが十分に鍛えられていると、体幹に『自前のコルセット』ができ、体をしっかり支えられるようになって腰への負担が減り、腹圧が高まってお腹も引き締まります。体幹力を鍛えるときは、これらの筋肉を意識して行うのがポイントです」
以下の図が体幹の筋肉。これらを鍛えることを意識しましょう。
体幹にかかわるアウター&インナーマッスル
① 外腹斜筋(がいふくしゃきん)
脇腹の筋肉のうち、表層にあるのが外腹斜筋。体をひねるときや、体幹を安定させるときに働きます
② 腹直筋
お腹の表層部を縦に走る筋肉。脊椎を前屈させるときに働き、内臓を保護したり内臓下垂を防ぐ働きも
③ 内腹斜筋
外腹斜筋の内側にあるのが内腹斜筋。外腹斜筋と同じく体をひねる動きや体幹を安定させるときに働きます
④ 腹横筋
お腹の深部に位置し、内臓を包み込むようについている筋肉。背骨の安定にもかかわり、姿勢を維持します
⑤ 多裂筋・横隔膜・骨盤底筋
背骨に沿って走る多裂筋、腹式呼吸で息を吸うときにメインで働く横隔膜、骨盤内臓器を支える骨盤底筋
初出:OurAge 2024/2/27
あなたの体幹力をセルフチェック
ふたつの姿勢で、自分の体幹力をチェックしてみて。
片足立ちで体幹力をチェック
自分の体幹力を簡単にチェックできる方法が片足立ち。このポーズができない人は体幹力が低下しています。
正しい立ち方
両手を腰に当て、片膝を引き上げて片足立ちになります。体がぐらつかないように保って30秒キープ
体が傾いたり、揺れたりするのはNG。体幹が衰えているということ
横から見ると
横から見たときは、背すじが真っすぐで、膝が曲がっていないのがよい状態。膝は背すじを真っすぐに保てる範囲でなるべく高く引き上げて
膝を引き上げたとき、上半身が後ろに倒れてしまうのも体幹が衰えているサイン
立ったときの姿勢をチェック
普段の立ったときの姿勢でも、体幹力がしっかりしているか、低下しているかがわかります。反り腰、猫背&ストレートネック、どちらかの姿勢になる人は体幹力がない状態。
正しい姿勢
立ったとき耳・肩・股関節・くるぶしを結ぶ線が真っすぐで、手が自然に太ももの真横に来るのが正しい姿勢
反り腰
反り腰でお腹がぽっこり出ている人は、体幹力がないせいで骨盤が前に傾いてしまっている状態
猫背&ストレートネック
猫背で首が前に出ているタイプ。体幹力がないため骨盤が後ろに傾き、バランスをとろうと首が前に
初出:OurAge 2024/3/12
体幹を鍛える前のストレッチ
ストレッチで柔軟性を高める
反り腰改善ストレッチ<5回>
反り腰の人はこのストレッチを。お腹と背中が柔軟になり、反り腰が改善。
1 肩甲骨を突き出し、背中を丸める
よつばいになり、手は肩の下に置きます。息を吐きながら肩甲骨を突き出すイメージで背中を丸めて5秒キープ。このとき首を下げてお腹を見ましょう
2 背中をできるだけ反らして5秒キープ
次に、息を吐きながら頭を起こし、背中をできるだけ反らせて5秒キープ。1〜2を5回行いましょう
脇腹と背中を伸ばすストレッチ<左右各3回>
姿勢のタイプにかかわらず行うストレッチ。体幹を鍛えやすい状態に。
1 座って右膝の外側に左足を置く
床に座って右脚は真っすぐ伸ばし、左膝は曲げて右膝の外側に左足を置きます。右腕は真っすぐに伸ばして左膝の外側に当て、左手は後ろにつきましょう
2 左膝を押さえ、上半身をひねる
右ひじで左膝を押さえ、息を吐きながら上半身を後ろにひねり目線を後ろに向け10秒キープ。息を吸いながら1に戻ります。反対側も同様に。左右各3回
●前から見ると
押さえた左の膝下は倒れないよう一直線に
猫背&ストレートネック改善ストレッチ<5回>
猫背&ストレートネックの人は、このストレッチで正しい姿勢に。
1 真っすぐに立ち手を腰に当てる
真っすぐに立って両手を腰に当てます。ストレートネックの人は首が前に出ていると思いますが、ここではそのままでOK
2 あごを引き、肩甲骨を寄せる
次に、息を吐きながらあごを引いて、左右の肩甲骨をグッと寄せるようにして3秒キープ。息を吸いながら3秒で元に戻します。これを5回行って
●背中側は
左右の肩甲骨を中央にギュッと寄せましょう
股関節のストレッチ<左右各3回>
体幹を鍛えやすい状態に整えます。姿勢のタイプにかかわらず行って。
1 脚を前後に開き、右膝は90度に
右脚を前に脚を前後に大きく開き、右膝は90度に曲げ、左膝はなるべく後ろにつくのがポイント。上半身は真っすぐ立てます
2 体重を前に移動させ股関節を伸ばす
息を吐きながら体重を前に移動させ、股関節のあたりが伸びるのを意識して10秒キープ。これを左右各3回
体重を前に移動させたとき、上半身が倒れてしまったら股関節が伸びにくいのでNG。上半身は真っすぐ立てたまま行って
初出:OurAge 2024/4/10