政治、お金、健康……その情報、信じて大丈夫?「情報リテラシー」を、今こそ高めよう!【古田大輔さん × 小倉弘子さん 対談:前編】

日々、スマートフォンなどを通じて流れ込む情報の洪水の中で自分を見失わないためには? 日本ファクトチェックセンター 編集長・古田大輔さんとフリーアナウンサー・小倉弘子さんによる対談で、大人世代に求められる情報スキルを明らかに。

【対談】古田大輔さん × 小倉弘子さん

日本ファクトチェックセンター 編集長 古田大輔さん

日本ファクトチェックセンター 編集長 古田大輔さん

ふるた だいすけ●’77年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。朝日新聞記者、BuzzFeed Japan創刊編集長、Google勤務を経て’22年より現職。編著に『子どもを育てられるなんて思わなかった LGBTQと「伝統的な家族」のこれから』(山川出版)など。

フリーアナウンサー 小倉弘子さん

フリーアナウンサー 小倉弘子さん

おぐら ひろこ●’74年、東京都生まれ。東洋英和女学院大学社会科学部卒業。TBSでは『筑紫哲也 NEWS23』『ひるおび!』、ラジオ『ジェーン・スーの生活は踊る』などを担当。’24年に退社後は、ビジネス動画メディア「miraiA」MCなど多方面で活躍中
シャツ¥99,000・スカート¥148,500/マディソンブルー  ピアス¥166,100・ネックレス¥127,600/ヒロタカ 表参道ヒルズ(ヒロタカ)リング(太)¥45,100・(細)¥23,100/ビームス 六本木ヒルズ(ヒロタカ) 靴/スタイリスト私物

情報の発信源は一般人が主流に。「本物」の意味が変わった

小倉 私がTBSに入社したのは’97年。当時はオールドメディアなんて言葉もなく、自分たちは情報の最先端だと思っていたし、事実かどうかを確認する「裏取り」は行われていたものの、今のように「これはフェイクでは?」と疑ってかかることはなかったと思います。

古田 まだインターネットの影響力は小さく、テレビの天下だったころですよね。その状況を大きく変えたのはスマートフォンとソーシャルメディアの登場。日本ではだいたい’10年ごろから情報量が爆発的に増え、誰もが、いつでもどこでも情報を得られるようになったんです。

小倉 バスの時刻から世界情勢まで全部、手元で確認するようになりましたよね。

古田 ええ。もうひとつは、誰でも発信できる時代になったこと。僕が大学生のころは、本や新聞、雑誌など、見ている文字情報の9割くらいはプロが書いたもので、動画にいたっては、ほぼ100%そうでした。でも、今の大学生たちは、おそらく9割以上、一般の人たちが書いたり作ったりしたものを見ている。その点では、まったく違う世界に生きているといってもいいと思います。

外国発の偽情報も流れ込み状況はますますカオスに

黒いジャケットを着た男性が腕を組み、壁に寄りかかっている。背景には茶色の服を着た女性が立っており、両手を広げている。

小倉 うーん、私なら、何かの情報を探すときには、やっぱりマスメディアで、どう扱われているかを先に見ますねぇ。

古田 そうですよね。Authenticity、翻訳すると「本物らしさ」という言葉がありますが、以前はプロが大勢集まって知識を積み上げて作るものが本物とされていた。でも、若者たちは、マスメディアは政府やスポンサーの影響を受けているのではと疑い、YouTuberが自分の好きなことを発信しているほうが真実に近いだろうと感じている。「本物」の意味が変わったんです。デマが飛び交う現在の状況は、僕が新聞社からネットメディアに移って世界のメディア会議に出席するようになった10年前くらいから懸念されていましたが、残念ながら日本はまったく対策に動きませんでした。

小倉 イラン情勢ひとつとっても、日本の新聞や放送局と海外メディアでは報じ方のトーンが違いますし、それを見て話すYouTubeの言説もそれぞれ違っていて、何を信じたらいいのかわかりにくい。結局、好き嫌いで選んだり、アルゴリズムですすめられるものを見てしまったり。

古田 むずかしいですよね。実際、生成AIで作られたディープフェイク(偽画像・映像)はたくさん確認されていて、予備知識のない人が見極めるのは非常に困難です。そして最近懸念されるようになったのが、海外からの影響。これまでは言語の壁があったし、そもそも日本は政治的には世界の中で飛び抜けて安定した国なので、偽情報が選挙にまで影響することは少なかったんです。でも、日本語環境以外では実はとんでもないことになっていて。最近だと、中国で「沖縄の人たちは日本からの独立を望んでいる」という言説が大拡散されたりしました。

小倉 えーっ! 

古田 最近、Xに自動翻訳機能が導入されて、日本のことを世界に知ってもらう機会にもなりましたが、同時に外国発信の偽情報が大量に流れ込んでくる危険も生まれました。外国語環境のほうが、偽情報の量はずっと多いですから。

小倉 ある意味、ガラパゴス化の利点だったと……。でも、刺激的な、いわゆる「盛った」情報には注目が集まるし、たくさん再生されていると、これが正しいのかな?と感じてしまったりして。

データで見る「情報リテラシー」

50%以上の人が偽・誤情報にだまされた経験あり

偽・誤情報を1つ以上見聞きした人の割合

年齢層別の割合を示す棒グラフ。10代、20代、30代、40代、50代、60代の各年代の割合は、それぞれ44.4%、37.4%、32.8%、31.6%、36.4%、44.4%。サンプルサイズは20000。

出典/国際大学グローバル・コミュニケーション・センター「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究」(2024年4月)

偽・誤情報に対する真偽判断

年代別の意見割合を示すグラフ。縦軸に10代から60代、横軸に「正しいと思う」「わからない」「調べていると思う」の割合(%)が示されている。10代は「正しいと思う」が50.6%、「わからない」が32.9%、「調べていると思う」が16.4%。

出典/国際大学グローバル・コミュニケーション・センター「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究」(2024年4月)

撮影/大木慎太郎 ヘア&メイク/榛沢麻衣(小倉さん) スタイリスト/村山佳世子(小倉さん) 取材・原文/大谷道子 ※エクラ2026年7・8月合併号掲載

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