「夫婦の関係は育てていくもの」と話す、引田かおりさん・ターセンさん夫妻。ときには喧嘩も辞さず、意見を交わし合って。暮らしを共にするパートナーとして、どんなルールを築いていたか。ひき続き、引田夫妻が実践している「夫婦のルール」を伺った。
いつも仲のいい引田夫妻のルール
5.日中は別行動でも、お互いのスケジュールは把握
ギャラリーやパン屋を一緒に営むと言っても、夫婦同時に行う仕事はほとんどなく、日中はほとんど別行動。さらには仕事の合間に美容院やトレーニング、会食、孫たちの習い事の送り迎えなど、さまざまな予定が入ってくるので、お互いの予定を手帳に書き合い、情報をこまめに共有している。
「よく驚かれるのですが、メールアドレスも夫婦でひとつ。それらを見ていれば、お互いの仕事の状況やプライベートの様子もほぼ頭に入ります。そうやってスケジュールをこまめに確認し合うことで、スムーズに助け合えます」(かおりさん)
6.新聞や本を読み、意見を交換し合う
引田夫妻はふたりとも、かなりの読書家。しかし共通の趣味と言えども、かおりさんは内田洋子、木皿泉、梨木果歩、彬子女王など女性作家の小説やエッセイ、ターセンさんは歴史もの(特に戦国時代もの)や経済に関する本と、好みのジャンルはバラバラ。
「私は彼のテリトリーにはあまり興味がないけれど、彼はお構いなしに『面白かったよ!』と内容を話してくる。『ふーん、そうなんだ』と流しながらも(笑)、そこから会話が生まれたりします」(かおりさん)
「僕は彼女が買ってきた本もたいてい読んでいるし、とくに『いいよ』と薦められたものは必ず読む。彼女の感性は素晴らしいし、僕は男の沽券とかないから、新しいカルチャーがどんどん入ってきて、面白いんだよね」(ターセンさん)
また引田家は今も紙の新聞を取り続け、ふたりとも毎朝必ず目を通すのが日課だ。かおりさんは社会面や家庭面、ターセンさんは国際面や経済面と、注目するページは違うものの、同じものを読み続けることで、自然と会話や意見の交換が生まれてくるそう。
7.家の整理整頓、模様替えはふたりで
「模様替えは趣味のひとつ」というかおりさん。ソファや椅子の位置を変えたり、インテリアファブリックを取り換えたりは、日常のこと。人を家に招く日は、普段は柱につけているテーブルを回遊できる位置に移動を。
「カーリン(かおりさんの愛称)は結構せっかちで(笑)、『こうすればいいかも』と思いついたら、すぐ行動。家という生活の場では彼女がリーダーなので、いつでも協力しています」(ターセンさん)
「ソファのカバーの架け替えも、ふたりで何度かやるうちに上手になりました。夫婦一緒に体を動かすいい機会ですね。食器棚や引き出しの中、クローゼット内の整理なども、声を掛け合いながら定期的に行っています」(かおりさん)
ターセンさんは機能性重視の分類が得意で、かおりさんは見た目よく収めるのが上手。整然と美しい収納たちも、夫婦共同作業のなせる技なのだ。
8.夫には弱音も吐く、愚痴も言う。 ケンカしてもいいから、気持ちを伝えることは大事。
そして夫婦円満の最大のルールは、「本音を伝え合うこと」。お互いに感じていること、考えていることを口にして言葉で伝える。
「モヤモヤと不満を抱え続けて、友人と集まって夫のグチ大会をしても、何の解決にもなりませんよね。それならば、時には衝突も恐れずに、言いたいことを言い合って、喧嘩もいっぱいしたほうがいいと思います」とかおりさん。
「ギャラリーを始めたころ、何だかモヤモヤする時期があって、それは人気者のカーリンに嫉妬していたんだと気づけた。そういう自分の感情から逃げないで、向き合うことも夫婦には大事なんだよね」とターセンさん。
時には弱音や愚痴も言い合うことがあるが、弱さを吐き出せるのも夫婦だからこそ。
「男と女は違う生き物だから、分かり合えるなんてことはないのかもしれません。でも、分からないなりに相手の言い分を受け取ったり、分かってもらえないと思っても言葉で言ってみたり。その積み重ねが、夫婦の歴史になるように思います」
ほどよい距離感を保ちながら、でも歩み寄りも
一朝一夕でおしゃれな人や、センスのある人になれないように、いきなり仲良し夫婦になんて、なれないもの。大切なのはあきらめず、歩み寄ろうとする姿勢の積み重ね。
「いきなり大袈裟なことをしなくてもいいと思いますよ。とにかく小さいことからコツコツと」。そう笑うかおりさん。「いいこと言うなあ」と、それを楽しそうに見守るターセンさん。
ふたりの風通しのよさは、ほどよい距離感と思いやり、コミュニケーションの賜物なのだと感じられた。
撮影/大森忠明 取材・文/田中のり子